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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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隼人は深い溜め息を吐いた。鈴を振り返る。
「先輩のお腹の子の父親は私ではないよ、鈴」
「…え?」
ーーーどういう事?
言葉の出ない鈴に隼人は解らせるように、ゆっくりと掻い摘まんで話し始めた。
「私の身体は元々子供を作り出す精子が機能しないんだ」
「え、でも! あずささんのお腹は」
「それは私が訊きたい方だ。大学で男子生徒の精子を凍結保存する話しが出たんだが、その日は私は熱を出して休んでいた。誰かが私の名を語ってラベルに貼り付けたらしい」
鈴は驚愕して双眸を見開いた。
ーーーそんなっ
あずさの顔が浮かぶ。
「君が昨日アメリカへ行くと云い出して、パズルが填まるように記憶が戻ってきた。何故、アメリカへ行こうとした? 私との約束は?」
「約束……」
「そうだ、将来医療ボランティアで海外へ行くという私の願いを、君は聞き入れてくれていたと、私は思っていた。違うのか?」
鈴は混乱していた。鈴は隼人がもう遠い所に居るのだと思っていた。だから、ジンの思いを考え愛おしくなって……。それから好きになって。
「ごめ……なさい、隼人さん今、僕は」
鈴は隼人の後方を見た。
今二人は階段の側に居た。保護者や生徒の喧噪で気付かなかったのだ。
「隼人、そんな子にあなたを奪われたくないわっ」
「!?」
あずさの声に隼人が振り返る。両手には刃物が握られていた。鈴を背に庇う形で立っていた隼人の脇を擦り抜けた鈴が、隼人の前に躍り出た。
傍に居た生徒が悲鳴をあげる。
「鈴っ!!」
あずさが手にしていた刃物は、鈴の腹を深々と突き刺していた。が、鈴が後方へ倒れ、隼人が抱き留めた時には、刃物は抜かれた形になったのだ。そのせいで大量の血が溢れ出す。
隼人の叫び声が、他の生徒達を振り向かせ、悲鳴と教師を呼べという声が怒号となって拡がっていった。辺りは騒然となった。
あずさは茫然として手にしていた刃物を床に落とした。
「鈴っ!! しっかりしろ!」
隼人が溢れる血を止めようと手で押さえる。
鈴は隼人を見上げ、隼人に何処も怪我が無いと知るとホッと吐息を零した。
「ごめんね、はや……とさ、……僕」
「鈴、鈴っ」
涙を溢れさせた隼人は、血で濡れた震える右手で携帯をスラックスのポケットから取り出すと、晴臣に電話を掛けた。四コールで出る。
「父さん、助けてくれ、鈴が!」
隼人の声は泣き声になっていた。
『どうした!?』
「鈴が、刺されたっ早く来てくれ!!」
『っ!?』
電話の向こうで、薫を呼ぶ声がする。隼人は携帯を床に置いて鈴を抱き締めた。
あずさは駆け付けた警備員に取り押さえられ、男性教師が携帯から救急車の手配をしている。
「鈴っ」
「はや、とさ、ん……あのね? 僕あの人をひとりに、また、しちゃうかも…知れないんだ」
「……誰のことだ?」
ーーージン……。
浅い息を繰り返していた鈴が涙を零す。
「鈴っ!」
「鈴!?」
里桜が生徒会室に居た時、ひとりの生徒が駆け込んで来て、鈴の事を聞かされると慌てて駆け付けて来たのだ。鈴の眼が里桜を捉え、手を伸ばす。里桜は震えながらその手を掴んだ。
「鈴、鈴っ、しっかりしろ! なんでこんな事に!?」
涙で鈴の顔がぼやける。鈴はすまなそうに笑った。
「にいちゃ」
「鈴、大丈夫直ぐに救急車が来るからな? お母さんも直ぐ来るから!」
「にいちゃ、ん……ありが、と。大好き、だよ?」
「っ!」
里桜は息を呑んだ。鈴の手が里桜の手から滑り落ちる。
「鈴っ!?」
「いやよ、鈴っ!!」
薫るが晴臣に支えられながら駆け付けた。疾風も一緒だ。疾風は鈴を抱き締める隼人を鈴から引き離すと、薫が鈴を抱き留めて泣き叫んだ。
「先輩のお腹の子の父親は私ではないよ、鈴」
「…え?」
ーーーどういう事?
言葉の出ない鈴に隼人は解らせるように、ゆっくりと掻い摘まんで話し始めた。
「私の身体は元々子供を作り出す精子が機能しないんだ」
「え、でも! あずささんのお腹は」
「それは私が訊きたい方だ。大学で男子生徒の精子を凍結保存する話しが出たんだが、その日は私は熱を出して休んでいた。誰かが私の名を語ってラベルに貼り付けたらしい」
鈴は驚愕して双眸を見開いた。
ーーーそんなっ
あずさの顔が浮かぶ。
「君が昨日アメリカへ行くと云い出して、パズルが填まるように記憶が戻ってきた。何故、アメリカへ行こうとした? 私との約束は?」
「約束……」
「そうだ、将来医療ボランティアで海外へ行くという私の願いを、君は聞き入れてくれていたと、私は思っていた。違うのか?」
鈴は混乱していた。鈴は隼人がもう遠い所に居るのだと思っていた。だから、ジンの思いを考え愛おしくなって……。それから好きになって。
「ごめ……なさい、隼人さん今、僕は」
鈴は隼人の後方を見た。
今二人は階段の側に居た。保護者や生徒の喧噪で気付かなかったのだ。
「隼人、そんな子にあなたを奪われたくないわっ」
「!?」
あずさの声に隼人が振り返る。両手には刃物が握られていた。鈴を背に庇う形で立っていた隼人の脇を擦り抜けた鈴が、隼人の前に躍り出た。
傍に居た生徒が悲鳴をあげる。
「鈴っ!!」
あずさが手にしていた刃物は、鈴の腹を深々と突き刺していた。が、鈴が後方へ倒れ、隼人が抱き留めた時には、刃物は抜かれた形になったのだ。そのせいで大量の血が溢れ出す。
隼人の叫び声が、他の生徒達を振り向かせ、悲鳴と教師を呼べという声が怒号となって拡がっていった。辺りは騒然となった。
あずさは茫然として手にしていた刃物を床に落とした。
「鈴っ!! しっかりしろ!」
隼人が溢れる血を止めようと手で押さえる。
鈴は隼人を見上げ、隼人に何処も怪我が無いと知るとホッと吐息を零した。
「ごめんね、はや……とさ、……僕」
「鈴、鈴っ」
涙を溢れさせた隼人は、血で濡れた震える右手で携帯をスラックスのポケットから取り出すと、晴臣に電話を掛けた。四コールで出る。
「父さん、助けてくれ、鈴が!」
隼人の声は泣き声になっていた。
『どうした!?』
「鈴が、刺されたっ早く来てくれ!!」
『っ!?』
電話の向こうで、薫を呼ぶ声がする。隼人は携帯を床に置いて鈴を抱き締めた。
あずさは駆け付けた警備員に取り押さえられ、男性教師が携帯から救急車の手配をしている。
「鈴っ」
「はや、とさ、ん……あのね? 僕あの人をひとりに、また、しちゃうかも…知れないんだ」
「……誰のことだ?」
ーーージン……。
浅い息を繰り返していた鈴が涙を零す。
「鈴っ!」
「鈴!?」
里桜が生徒会室に居た時、ひとりの生徒が駆け込んで来て、鈴の事を聞かされると慌てて駆け付けて来たのだ。鈴の眼が里桜を捉え、手を伸ばす。里桜は震えながらその手を掴んだ。
「鈴、鈴っ、しっかりしろ! なんでこんな事に!?」
涙で鈴の顔がぼやける。鈴はすまなそうに笑った。
「にいちゃ」
「鈴、大丈夫直ぐに救急車が来るからな? お母さんも直ぐ来るから!」
「にいちゃ、ん……ありが、と。大好き、だよ?」
「っ!」
里桜は息を呑んだ。鈴の手が里桜の手から滑り落ちる。
「鈴っ!?」
「いやよ、鈴っ!!」
薫るが晴臣に支えられながら駆け付けた。疾風も一緒だ。疾風は鈴を抱き締める隼人を鈴から引き離すと、薫が鈴を抱き留めて泣き叫んだ。
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