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sorako

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出会い

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一学年12クラス。総勢1,400人が体育館に集まっている。壇上にならべられた24脚の椅子に何人かが座り始めた。

隣のクラスから立候補する山田は明らかに緊張している様子で、額に汗をかき、膝が震えているのが分かった。

「山田。お前も立候補したのか?」
僕は自分の緊張を抑える意味もあって山田に話しかけた。

「みんなにハメられてな。それより、うちの学校ってこんなに人がいるんだ。ヤバい……もう一回トイレ」
そう言って走り去って行った。

壇上の脇から体育館を見ると、まただんだんと席が埋まっていくのが分かる。山田の言う通り、こうして見るとうちの学校にこれだけ人がいることに驚かさる。

並べられた椅子に既に座っている谷原はいつも学年で1位か2位の成績で、去年も生徒会役員だっただけに落ち着いて見えた。

三列目の椅子に2年生が座り始めた。
下級生となると、小学校や部活が同じ出ない限り接点はなく知ってる人はいなかった。しかし、たった一人だけ一際輝いていだ女の子に目が止まった。

背が高く、ショートヘアで、身だしなみとが整った女の子。

(あの子は2年生か……)

その女の子は先生に確認し自分の椅子に姿勢良く座ると、しっかり前を向いている。

「おい、ダイさん! いつまでもそこに立ってないで、ここ!」
しばらくその女の子に見惚れていた僕は山下先生の声で我に返り、意を決して着席する。

正面を向くとそこには1,400人の全校生徒が体育座りをしてこっちを向いている。

トイレから戻ってきた山田が泣きそうな顔をして谷原の隣りに座った。落ち着かないのか膝がブルブルと震えていて可笑しかった。

程なくして教頭先生の合図で体育館の扉が閉められた。

「え,それでは只今から、生徒会役員立候補者の演説会を始めます。生徒の皆さんは、これから壇上にいる立候補の演説を聞き、手元に配られた生徒会役員投票用紙にーー」

僕は間も無く始まる演説のことよりも、さっき見た2年生の女の子のことばかり考えていた。
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