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ウィステリア騎士団 最強は誰だ
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用もないのにハリーは相変わらずウィステリアにやってくる。ついでに騎士団で体も動かしていく。
レイとは違う強さに、騎士団員たちは大歓迎。
「ヴィン? 強いんじゃない。ちゃんとやり合ってないけど、見ればわかるでしょ」
休憩時間に1番強いのは誰かという話になった。
「姐さんはよくわからないな。剣を持たせればピカいちは間違いない。あの速さは誰にも真似できないね」
騎士たちはそうだろうと我が国の英雄を誇らしく思う。
「腕相撲ならみんな簡単に勝てると思うよ。非力だもの」
そんなはずはない、握りこまなければ剣を落としてしまう。
「そこが不思議だよね。1度スイッチが入ると馬鹿力出せるんじゃない?」
そういえば剣を鞘に納めたとたんに手が痛い、疲れたと言ってはエリオット様を毎回困らせていた。
「最近じゃヴィンが全身マッサージして、木桶で足湯作ったりしてさ、甲斐甲斐しく世話してる。姐さんも嬉しそうだよね」
癒されて天上の微笑み浮かべるレイモンドを見たいなと騎士たちは思う。憧れの美神なのだ。
「姐さんは警戒心も独占欲も強いからね。食事の支度から身の回りのことまでヴィンをこき使っているよ。でも羨ましいな、俺も姐さんにマッサージしてあげたい」
ハリーが想像しながら、あそこのツボ押してとかつぶやいている。
えっ、側近ってそんなこともさせられるの? まるで侍女か従者の仕事ではないか。ヴィンを貶めようとしたカーターは、あれから心を入れ替え日々精進している。いつかレイに認めてもらいたいがために。でも自分には側近なんてとても無理そうだ。ヴィンに大いに同情する。今度酒奢ろう。
***
「そんなに非力ではないと証明したい。腕相撲大会をしよう」
騎士としての矜持か、見栄をはりたいのか、レイが言いだした。レイも皆が言うほど非力ではない。毎日ガチ鍛えしている騎士と比較されたら淑女扱いなだけ。
「僕だってオリビアをお姫様抱っこできたし」
「オリビアは羽のように軽いからな」
エリオットが突っ込む。
「双子だって両腕で抱えられます」
「目に入れても痛くないってやつか」
ヴィンも突っ込む。
「姐さん手が荒れるとかって言って普段重たいもの持たないし、剣おいて戦ってるの見たことないよ」
1度くらいは拳で…とは思えない。
「やればできます」
「やめとけ」
「ヴィンには1度勝ったでしょう」
「ずるしてな」
「さすが姐さん、知略でいくか」
「ハリー、お前どんだけこいつに夢みてんだ? 中身腹黒だぞ」
「失礼な。使えるものはすべて使う。これ基本でしょ。とにかく開催します!!」
第1回ウィステリア騎士団腕相撲大会開催が決まった。
雲ひとつない晴れ渡った日、会場は屋外でなくレイの指示により屋内練習場になった。テーブルが運び込まれ、力自慢の騎士から若手騎士まで参加しようと大勢詰めかける。優勝した者にはレイが側近にしか渡さない<夜明けの空>が特別に出されると聞いて、ダメ元でも出ないとういう選択肢はない。
「もちろんトーナメントには1回戦から出るよ」
レイが問題ないと言わんばかりに言う。
初戦。レイの前には若手騎士が座る。
「よろしくね」
レイにニコッとされて思わず見惚れて、力が入らない。美人に免疫がなさ過ぎた。
2戦目。見たらだめだと目をつぶった騎士が負けた。そもそも目をつぶったらダメだろうとヴィンは思ったが、そうきたかと納得。屋内にした理由もわかった。レイはいつもより濃いめに香水をつけ、甘い匂いが漂う。鼻は隠していなかった。
3戦目。もう真向勝負と顔をむけたら、レイが小首をかしげている。かわいい! 負けた。
4戦目、5戦目……とレイは勝ち進む。
「手強そうで負けるかも」
シュンと顔を下に向けて弱気を見せる。
「勝ちたいです」
頬をぷくっと膨らませてみせる。
あざとい。さすが天下のモテ男。女性のアピール顔は全部頭に入っている。
「主の百面相、めちゃうける」
「あれには勝てないだろ」
セオとトーマスは大笑いしていた。
準々決勝で最近結婚したばかりの騎士が座った。色仕掛けには負けないはず。
「あれ、汗で蒸れた。手袋とっていいかな」
レイの白い歯がみえ、手袋を咥えてとると、おうーーーーと会場がざわめく。仕草もカッコいいが、指先のきれいなこと。皆が拝んだ。その後、騎士団でしばらくそれが流行った。
「その手には乗りません」
「君みたいな妻一筋の男は出世するよ」
だが手を握った瞬間に負けた。新妻よりも華奢な手を握りつぶしそうで怖かった。剣だこはないのか?
「次は君だね。ハリー王子」
「ほんとに、ずるっ」
「使えるものは使うよ」
「では胸をかりて」
「ハリー、最近アレス国の第1王女モリーナに会いに行ったよね」
小声でレイがハリーに話しかける。
「…なぜそれを…」
「清楚系が好みか。口きいてあげようか」
「……」
ハリー敗退。
いよいよ決勝戦。相手はヴィン。
今さら顔を見ようが、白い手を握ろうが動じない。レイの甘い匂いにも耐性がある。
「今日は本気だせよ」
「言われなくても本気の本気出すよ」
レイがヴィンの手をじっーと見ている。
「うん、大丈夫。リアンお願い」
リアンは男の手なんて握りたくないと審判を買って出ていた。
握りあう両者の手からリアンが手を放した瞬間、ダン!! とものすごい音がした。ヴィンの手がレイの手の下で机についている。
「早すぎて見えなかった」
「何が起きた?」
1番驚いているのはヴィン。しびれる手をこすりながら負けを認めた。
第1回ウィステリア騎士団腕相撲大会優勝はレイ。決勝戦を見た全員にレイが強者と認めさせた。
***
「あれどんな手を使った?」
「本当に失礼すぎないか? 実力です」
べしっとレイがヴィンの後頭部を叩くが、まったく痛くない。なのにどうして。
剣を握れば最速で振れる。ならヴィンの手を剣の束だとイメージし、リアンが手を離した瞬間に仕掛けた。
何度も使えないが最後の1回だけ本気を出した…というわけだった。
レイとは違う強さに、騎士団員たちは大歓迎。
「ヴィン? 強いんじゃない。ちゃんとやり合ってないけど、見ればわかるでしょ」
休憩時間に1番強いのは誰かという話になった。
「姐さんはよくわからないな。剣を持たせればピカいちは間違いない。あの速さは誰にも真似できないね」
騎士たちはそうだろうと我が国の英雄を誇らしく思う。
「腕相撲ならみんな簡単に勝てると思うよ。非力だもの」
そんなはずはない、握りこまなければ剣を落としてしまう。
「そこが不思議だよね。1度スイッチが入ると馬鹿力出せるんじゃない?」
そういえば剣を鞘に納めたとたんに手が痛い、疲れたと言ってはエリオット様を毎回困らせていた。
「最近じゃヴィンが全身マッサージして、木桶で足湯作ったりしてさ、甲斐甲斐しく世話してる。姐さんも嬉しそうだよね」
癒されて天上の微笑み浮かべるレイモンドを見たいなと騎士たちは思う。憧れの美神なのだ。
「姐さんは警戒心も独占欲も強いからね。食事の支度から身の回りのことまでヴィンをこき使っているよ。でも羨ましいな、俺も姐さんにマッサージしてあげたい」
ハリーが想像しながら、あそこのツボ押してとかつぶやいている。
えっ、側近ってそんなこともさせられるの? まるで侍女か従者の仕事ではないか。ヴィンを貶めようとしたカーターは、あれから心を入れ替え日々精進している。いつかレイに認めてもらいたいがために。でも自分には側近なんてとても無理そうだ。ヴィンに大いに同情する。今度酒奢ろう。
***
「そんなに非力ではないと証明したい。腕相撲大会をしよう」
騎士としての矜持か、見栄をはりたいのか、レイが言いだした。レイも皆が言うほど非力ではない。毎日ガチ鍛えしている騎士と比較されたら淑女扱いなだけ。
「僕だってオリビアをお姫様抱っこできたし」
「オリビアは羽のように軽いからな」
エリオットが突っ込む。
「双子だって両腕で抱えられます」
「目に入れても痛くないってやつか」
ヴィンも突っ込む。
「姐さん手が荒れるとかって言って普段重たいもの持たないし、剣おいて戦ってるの見たことないよ」
1度くらいは拳で…とは思えない。
「やればできます」
「やめとけ」
「ヴィンには1度勝ったでしょう」
「ずるしてな」
「さすが姐さん、知略でいくか」
「ハリー、お前どんだけこいつに夢みてんだ? 中身腹黒だぞ」
「失礼な。使えるものはすべて使う。これ基本でしょ。とにかく開催します!!」
第1回ウィステリア騎士団腕相撲大会開催が決まった。
雲ひとつない晴れ渡った日、会場は屋外でなくレイの指示により屋内練習場になった。テーブルが運び込まれ、力自慢の騎士から若手騎士まで参加しようと大勢詰めかける。優勝した者にはレイが側近にしか渡さない<夜明けの空>が特別に出されると聞いて、ダメ元でも出ないとういう選択肢はない。
「もちろんトーナメントには1回戦から出るよ」
レイが問題ないと言わんばかりに言う。
初戦。レイの前には若手騎士が座る。
「よろしくね」
レイにニコッとされて思わず見惚れて、力が入らない。美人に免疫がなさ過ぎた。
2戦目。見たらだめだと目をつぶった騎士が負けた。そもそも目をつぶったらダメだろうとヴィンは思ったが、そうきたかと納得。屋内にした理由もわかった。レイはいつもより濃いめに香水をつけ、甘い匂いが漂う。鼻は隠していなかった。
3戦目。もう真向勝負と顔をむけたら、レイが小首をかしげている。かわいい! 負けた。
4戦目、5戦目……とレイは勝ち進む。
「手強そうで負けるかも」
シュンと顔を下に向けて弱気を見せる。
「勝ちたいです」
頬をぷくっと膨らませてみせる。
あざとい。さすが天下のモテ男。女性のアピール顔は全部頭に入っている。
「主の百面相、めちゃうける」
「あれには勝てないだろ」
セオとトーマスは大笑いしていた。
準々決勝で最近結婚したばかりの騎士が座った。色仕掛けには負けないはず。
「あれ、汗で蒸れた。手袋とっていいかな」
レイの白い歯がみえ、手袋を咥えてとると、おうーーーーと会場がざわめく。仕草もカッコいいが、指先のきれいなこと。皆が拝んだ。その後、騎士団でしばらくそれが流行った。
「その手には乗りません」
「君みたいな妻一筋の男は出世するよ」
だが手を握った瞬間に負けた。新妻よりも華奢な手を握りつぶしそうで怖かった。剣だこはないのか?
「次は君だね。ハリー王子」
「ほんとに、ずるっ」
「使えるものは使うよ」
「では胸をかりて」
「ハリー、最近アレス国の第1王女モリーナに会いに行ったよね」
小声でレイがハリーに話しかける。
「…なぜそれを…」
「清楚系が好みか。口きいてあげようか」
「……」
ハリー敗退。
いよいよ決勝戦。相手はヴィン。
今さら顔を見ようが、白い手を握ろうが動じない。レイの甘い匂いにも耐性がある。
「今日は本気だせよ」
「言われなくても本気の本気出すよ」
レイがヴィンの手をじっーと見ている。
「うん、大丈夫。リアンお願い」
リアンは男の手なんて握りたくないと審判を買って出ていた。
握りあう両者の手からリアンが手を放した瞬間、ダン!! とものすごい音がした。ヴィンの手がレイの手の下で机についている。
「早すぎて見えなかった」
「何が起きた?」
1番驚いているのはヴィン。しびれる手をこすりながら負けを認めた。
第1回ウィステリア騎士団腕相撲大会優勝はレイ。決勝戦を見た全員にレイが強者と認めさせた。
***
「あれどんな手を使った?」
「本当に失礼すぎないか? 実力です」
べしっとレイがヴィンの後頭部を叩くが、まったく痛くない。なのにどうして。
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