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一缶「一ノ瀬愛良は友達が欲しい」
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土曜日の午後、公園で待ち合わせをしていた一ノ瀬さんと合流した。待ち合わせ五分前に着くと、既に一ノ瀬さんが待っていた。
一ノ瀬さんは白いシャツに膝丈の黒いプリーツスカートを履いていて、どこかのお嬢様のように見えなくもない。いつもの着ている制服とは違う一ノ瀬さんの姿に、ついドキッとしてしまう。
「ごめん待った?」
「ううん。今来たところだよ」
緊張して恋人が待ち合わせに使う定型文を言ってしまう。一ノ瀬さんは俺に合わせてくれたのか、笑いながら返事を返してくれた。
「さ、早く行こっか♪」
一ノ瀬さんが俺の手を引くと歩き出した。でも俺の家は逆方向だ。
「えっと、そっちじゃないんだけど」
「…えへへ。私、友達の家に行くのが初めてでちょっと緊張しているみたい」
学校では成績優秀で完璧に見える一ノ瀬さんも、俺と同じで緊張していたようだ。照れ隠しで髪の毛を耳にかける姿を見て少しだけ身近に感じた。
「えっと、どうぞ」
「おじゃまします…」
最近は友達なんてカズくらいしか家に来ないからつい緊張してしまう。
「親は出かけていないから気楽にして」
「そ、そう…なんだ…」
顔を真っ赤にしている一ノ瀬さんを見て気がついた。自分の顔が急激熱くなるのがわかる。家の親がいないって言うとなんだか嫌らしいことを考えているように聞こえるだろ。
「あっ、いや! だからって何もしないから安心して!」
あたふたと誤解を訂正していると一ノ瀬さんが笑った。
「ゲームを入れてくれるんだよね?」
「あ、ああ…」
玄関から入ってすぐの階段を上がり、二階にある自分の部屋に案内する。部屋に入ると一ノ瀬さんが興味津々に部屋を観察した。整理整頓は昨日のうちに済ませておいた。いつも積まれている漫画や雑誌は棚に仕舞った。特にパソコン周りは徹底的に綺麗にした。
「へえ、男の子の部屋ってこんな感じなんだね。それに、友達の部屋に来たのが初めてで、なんだか不思議」
「初めてなんてことはないんじゃない?」
今は教室でぼっちの俺だって、子供の頃には友達の家によく遊びに行っていた。
「ううん、初めて。仲良くなるとなぜかみんな遠慮しちゃってね…友達と遊んだこともそんなになくて。だから友達とカラオケとかボーリングとか、お買い物にも行ったことがないんだ」
「そ、そうなんだ…」
一ノ瀬さんの寂しそうな顔が冗談ではなく本当のことだと告げている。気まずい空気が流れる中、それを打ち破るように一ノ瀬さんが「えいっ!」と俺の腕に抱きついてきた。二の腕に柔らかいものが当たり、ついドキッとしてしまう。
「…夜空くんは違うといいな」
「ええっと…」
「ごめんね。なんだか話が暗くなっちゃったね」
「の、飲み物取ってくる!」
腕が開放されるのと同時に俺はキッチンへ向かった。蛇口からコップに注いだ水を一気に飲むと少しだけ冷静になれた。
別のコップに氷と飲み物を注ぐと部屋へ戻った。ドアを開けると思考が停止した。一ノ瀬さんがベッドの上でゴロゴロしていたのだ。何を言っているのかわからないが、自分でも今の状況を理解できない。
自分のベッドに学内アイドルがゴロゴロしているのも十分すごいことだが、スカートの中からチラッと緑色の何かが顔を出している。固まっていると一ノ瀬さんが振り向き、目が合うと顔を赤く染めた。
「…えっと? 一ノ瀬…さん?」
「えっとその! 夜空くんこれはねっ!」
●
夜空昴が飲み物を取りに行った後、一ノ瀬愛良は部屋の中をうろうろとした。
昴の帰りが遅いため徐々に緊張がほぐれ、パソコン机の椅子に座ってみたり、ベッドの上に座りポンポンと跳ねてみたりした。つい勢い余ってベッドに横になりボフンと枕に顔を埋めてみたりも。
「男の子の匂いがする…って、なんだか私が変態みたいに聞こえる!」
テンションが上がり足をばたつかせ、ベッドの上をゴロゴロと転がり回る。そんな時に、運悪く昴が部屋に戻ってきたのだった。
「…えっと? 一ノ瀬…さん?」
「えっとその! 夜空くんこれはねっ!」
一ノ瀬さんは白いシャツに膝丈の黒いプリーツスカートを履いていて、どこかのお嬢様のように見えなくもない。いつもの着ている制服とは違う一ノ瀬さんの姿に、ついドキッとしてしまう。
「ごめん待った?」
「ううん。今来たところだよ」
緊張して恋人が待ち合わせに使う定型文を言ってしまう。一ノ瀬さんは俺に合わせてくれたのか、笑いながら返事を返してくれた。
「さ、早く行こっか♪」
一ノ瀬さんが俺の手を引くと歩き出した。でも俺の家は逆方向だ。
「えっと、そっちじゃないんだけど」
「…えへへ。私、友達の家に行くのが初めてでちょっと緊張しているみたい」
学校では成績優秀で完璧に見える一ノ瀬さんも、俺と同じで緊張していたようだ。照れ隠しで髪の毛を耳にかける姿を見て少しだけ身近に感じた。
「えっと、どうぞ」
「おじゃまします…」
最近は友達なんてカズくらいしか家に来ないからつい緊張してしまう。
「親は出かけていないから気楽にして」
「そ、そう…なんだ…」
顔を真っ赤にしている一ノ瀬さんを見て気がついた。自分の顔が急激熱くなるのがわかる。家の親がいないって言うとなんだか嫌らしいことを考えているように聞こえるだろ。
「あっ、いや! だからって何もしないから安心して!」
あたふたと誤解を訂正していると一ノ瀬さんが笑った。
「ゲームを入れてくれるんだよね?」
「あ、ああ…」
玄関から入ってすぐの階段を上がり、二階にある自分の部屋に案内する。部屋に入ると一ノ瀬さんが興味津々に部屋を観察した。整理整頓は昨日のうちに済ませておいた。いつも積まれている漫画や雑誌は棚に仕舞った。特にパソコン周りは徹底的に綺麗にした。
「へえ、男の子の部屋ってこんな感じなんだね。それに、友達の部屋に来たのが初めてで、なんだか不思議」
「初めてなんてことはないんじゃない?」
今は教室でぼっちの俺だって、子供の頃には友達の家によく遊びに行っていた。
「ううん、初めて。仲良くなるとなぜかみんな遠慮しちゃってね…友達と遊んだこともそんなになくて。だから友達とカラオケとかボーリングとか、お買い物にも行ったことがないんだ」
「そ、そうなんだ…」
一ノ瀬さんの寂しそうな顔が冗談ではなく本当のことだと告げている。気まずい空気が流れる中、それを打ち破るように一ノ瀬さんが「えいっ!」と俺の腕に抱きついてきた。二の腕に柔らかいものが当たり、ついドキッとしてしまう。
「…夜空くんは違うといいな」
「ええっと…」
「ごめんね。なんだか話が暗くなっちゃったね」
「の、飲み物取ってくる!」
腕が開放されるのと同時に俺はキッチンへ向かった。蛇口からコップに注いだ水を一気に飲むと少しだけ冷静になれた。
別のコップに氷と飲み物を注ぐと部屋へ戻った。ドアを開けると思考が停止した。一ノ瀬さんがベッドの上でゴロゴロしていたのだ。何を言っているのかわからないが、自分でも今の状況を理解できない。
自分のベッドに学内アイドルがゴロゴロしているのも十分すごいことだが、スカートの中からチラッと緑色の何かが顔を出している。固まっていると一ノ瀬さんが振り向き、目が合うと顔を赤く染めた。
「…えっと? 一ノ瀬…さん?」
「えっとその! 夜空くんこれはねっ!」
●
夜空昴が飲み物を取りに行った後、一ノ瀬愛良は部屋の中をうろうろとした。
昴の帰りが遅いため徐々に緊張がほぐれ、パソコン机の椅子に座ってみたり、ベッドの上に座りポンポンと跳ねてみたりした。つい勢い余ってベッドに横になりボフンと枕に顔を埋めてみたりも。
「男の子の匂いがする…って、なんだか私が変態みたいに聞こえる!」
テンションが上がり足をばたつかせ、ベッドの上をゴロゴロと転がり回る。そんな時に、運悪く昴が部屋に戻ってきたのだった。
「…えっと? 一ノ瀬…さん?」
「えっとその! 夜空くんこれはねっ!」
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