千賀くんと刈田くん(BLオムニバス)

雑多のべる子

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芝くんと城さん~元ヤン部長×ヤンデレ新人~

だって俺が決めたから、これはきっと二人の運命

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 それはインプリンティング、というのだそうだ。
 和訳すれば刷り込み現象。
 雛が生まれて初めて見た相手を親だと思ってしまうように、その瞬間、俺の中に雷が落ちた。目が醒めたようだった……と言い換えても良いかもしれない。
 とにかくそれくらいの衝撃だったんだ。

「ねぇ、あの人、誰かな」

 隣にいた幼馴染の江藤枢の袖を引いて、俺は問う。枢は面倒臭そうに眼を細めて窓の外を見、それから「ああ」と言った。

「総務部の部長じゃない? 確か、珍しい名前の……そうそう、キヅキさんっていうんだよ」
「キヅキさん?」
「お城の”城”、って書くんだよ。珍しいだろ」

 城、さん。
 その名前を反芻して、俺は歩き去る彼の背中を眼で追った。
 すらりと細い、でも撥条のあるしなやかな身体。日に焼けた健康そうな肌。男らしい精悍な顔立ち。そして口元に浮かぶ不敵な笑み。

「……かっこいい」

 ポツリと呟く。
 枢はなんだか嫌そうな顔をして、俺を見た。

「また始まった。芝の病気が」
「びょ、病気ってなんだよ。俺は純粋に……」
「一目惚れ、だろ? やめとけよ。学生時代ならまだしも、アレは部長だよ。おまえの手に入るような相手じゃない」
「そ、んなの……解んないじゃないか」

 ぷっと頬を膨らませる。愛に立場も年齢差も、ついでに性別も関係ない、というのが俺の信条だ。
 欲しいったら欲しい。こればっかりは仕方ない。

「別に、好きになるだけなら良いさ。誰だって年上の頼れる男に憧れるってのはあると思うし。俺だって気になる上司くらいいるよ? でも芝の場合は別。おまえ陰湿なんだもん」
「陰湿……って、酷いな、かっちゃん! 俺はいつだって全力でぶつかってるだけじゃないかっ」
「そのやり方が陰湿なの。前の恋人はどうだった? その前は?」

 ……うん、前の恋人には毎日のように手紙を書き、遠くからそっと見守って、最後はノイローゼで転勤届けを出させました。その前の時は、毎日手作りのお弁当を持っていってそっとロッカーにお届けし、梅雨に食中毒で入院させました。

「でもでもっ、ほら、あの人は丈夫そうだしっ……俺のすべてを受け止めてくれるよ、きっと!」
「……おまえのそのポジティブシンキングだけは、俺、素直に羨ましいと思うよ」

 呆れ顔の枢。
 えへへと照れ笑いなどして見せて、俺は席を立った。

「ちょ……どこ行くんだ、芝」
「え。そりゃ、総務部のフロア」
「おいおい、行動早過ぎるだろう!」
「あ、でもあの方向だと資料室かな……うん、やっぱり資料室」
「待てよ芝っ、おまえ性急過ぎだって……部長に恋人がいたりしたらどうするんだっ」

 問われて、俺は軽く瞬く。

「そうだね……」
「そうだよ。だからまず、落ち着いて……」
「そうしたら、 身 を 引 い て も ら う から、平気☆」
「……゛~っ! 芝!! おまえちょっといい加減にッ」
「いってきまーす!」

 制止の声も振り切って、駆け出す。出会うなら早い方が良い。一分、一秒でも早く、彼が俺を知るように。
 これからの一生の中で、ほんの少しでも彼が俺を見る時間が増えますように。
 そして見えてくる、あなたの背中に。

「城さんっ」

 満面の笑顔で。
 最高の笑顔で。
 俺は彩るんだ。
 ―― これが二人にとってのファーストコンタクト。
 ほら今、俺の糸があなたに届いた。
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