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一
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銀行員は不倫をする者が多い。不貞行為のほとんどは業務時間内、かつ銀行内で行われる。今回の男、間藤陸のように。
「なぁミミ、そろそろ良いだろ」
隣を歩く間藤から、耳元で囁かれた。時は昼前、居るのは八菱CBD銀行目黒支店。契約書を格納する部屋、通称『金庫』の中だ。六月だというのに、真冬のような寒気が私を襲う。彼は歩を止めず、私の肩を抱き寄せた。
「この部屋、空調が効きすぎだよな」
おめでたい脳みそだ。男はある程度の学歴と職歴を得ると、ハッピー野郎に進化する。「課長が冷房を下げまくる。女子トイレが避難場所になっている」と以前吐いた愚痴を覚えていたのかもしれないが。
私は彼の顔を見上げた。目鼻立ちがはっきりした西洋風の甘い顔、すらりと伸びた手足。くたびれたスーツとシワのあるシャツは、せっかくの素材を台無しにしていた。彼は結婚する相手を間違えたのかもしれない。夫のシャツにアイロンをかける『余裕がある生活』が送れる、フリーランスのライターの方が良かったのかもしれない。彼は行内結婚をしていた。銀行員の55%はそのような道を辿る。ここは八菱CBD銀行で、最近、副業をこそ解禁したことで話題になった。
「今、ここで?」
艶のある女性の声を出すことに成功した。偽りの微笑みを返すことも忘れなかった。昼間は銀行で働いているが、役者志望だ。先日も事務所で「二十五歳ねぇ、爆発的に売れるには難しい年齢だな。地下アイドルでもやらない? その客を舞台に引っ張ってこれるしさ」と言われたばかりだった。東京は街だ。何歳でも夢が叶う錯覚を抱かせる。サクセスストーリーなんて、おとぎ話でしかないのに。
「ここでだよ。ばかに広いだろ、うちの店の金庫」
「誰かが入ってくるかもないじゃない」
「大丈夫だよ。棚が無造作に並んでるから、一直線に歩けないだろ。入口から一番奥まで、ウサイン・ボルトでも三分はかかる」
彼はその冗談が気に入ったらしく、満足気に鼻を鳴らした。 ボルトでもヤギやキリンより足が遅いことを、彼は知っているのだろうか。
私は辺りを見渡した。二十畳ほどの書庫のような部屋に、灰色で無機質な棚が並んでいる。棚には契約書が入る段ボール、融資関連書類を束ねたクレジット・ファイル、取引先からの贈答品が乱雑に置かれていた。彼のような法人営業の担当者が「自分のデスクに置きたくないけど、捨てたら後々問題になりそう」と思うものたちだ。それは主が巣立ってしまった子供部屋を思わせた。まだ自分は何にでもなれると思っていた子供の、夢の国にいた頃を。片付けコンサルタントが見たら目を輝かせるだろう。しかし事情を知れば、こう言うに違いない。「まず捨てるべきは、この男ね」。
迷いなく棚の合間を縫って進む彼に、私は言った。
「慣れてるのね」
「おいおい。女の嫉妬は醜いぞ」
「もっと良い場所、あったんじゃない」
「『#夜景のきれいなホテル』『#東京タワーが見える部屋』か? 無理だよ。ローンの返済もあるし、金は嫁に管理されてる」
奥さんは賢明だ。彼に一家の財務大臣をさせたら、すぐに女相手に溶かしてしまうだろう。
「娘さんもまだ小さいしね」
「そう、金がかかる。 娘は小五と二歳、 中学受験と保育料。 うちはかみさんも働いてるだろ? だから税金で持ってかれる割に、保育料が高いんだ。だから俺はたくさん働いて、稼がなきゃならない」
一定の職域、課長クラスまでの銀行員は、残業代で給料を稼いでいる。経営職階、つまり次長より上は、残業代が出ない。支店長代理、課長よりひとつ下の彼も、残業代の荒稼ぎをお家芸としていた。
「だから、ここを使うんだ」
部屋の再奥には白い壁が立ちはだかっている。下には黒い箱が置かれていた。ダイヤル式の錠前がついており、セーフティボックスなのだろう。高さは彼の膝下ほど、横幅は腰幅くらい。小さな冷蔵庫ほどのサイズだ。年季が入っていて、今は使われていないように見える。
「手品でもしてくれるのかしら」
「もっと良いものを出してやるよ」
彼はセーフティボックスを、愛おしそうにポンポンと叩いた。
「シルクハット、似合いそうよね」
「だから、マジックはやらないって」
「暗証番号、知ってるの?」
「あぁ。絶対に忘れない番号だよ。たまたま俺の誕生日だった」
彼は暗証番号を入力した。扉が開いたが、中には何も見当たらない。しかし本来あるべきはずのものがなかった。箱の背面はなく、代わりに穴が開いていた。暗く、大きな穴だ。コォォォォ、と不気味な音が響いている。不思議の国のアリスでも飛びこまないだろう。
「これはただの箱じゃない。この穴を隠すためにあったんだ。ほら、行こうぜ」
スマホのライトで穴を照らすと、階段が見えた。暗くて見えにくいが、どうやら下の階へと続いているらしい。隠し方は素人のマジシャン並にお粗末だが、この男にはうってうけだ。
「先に行ってくれない? 初めてだから」
「あぁ、そうだな。初めてだもんな」
私の「初めて」という言葉は、彼の何かをくすぐったようだ。満足げに頷き、彼はかがんで箱の中に入った。こんな男が支店長代理を務めるなんて、世も末だ。慶應を出れば、だいたいの短所は隠される。人生をイージーモードにするフリーパスのようなものだ。それは他の大学を出たものには、決して与えられない。私のようなFランでは。しかし私はもう、その社会で戦うことはやめたのだ。頭取以外は全て敗者となる、銀行のラットレースには。代わりに役者として、夢をつかむ。
「おーい、大丈夫か?」
少し先へ進んだらしい彼の声が、下から聞こえてきた。今すぐ退散しろ、と脳が警報を鳴らす。あの性的嫌がらせを受けた日と、天気も状況もそっくりだった。
「今、行くわね」
私は返事をして、箱の中に入った。警報は無視した。もしそんなものを気にしていたら、行内結婚をし、梶ヶ谷に2LDKマンションを購入し、PTA役員として小学校前に自転車を停めないようパトロールをする人生を送っていただろう。そんな一生はごめんだった。
扉を後ろ手に閉め、間にボールペンを挟む。もしもの時、すぐ開けられるようにと思ったからだ。しかしペンは扉に押しつぶされた。性急で乱暴な閉まり方だ。心にわだかまりを抱えた人間が、力の限り叩きつけたような感覚を覚えた。金庫には私たち以外、誰もいないはずなのだが。スマホのライトをつけると、足元に壊れたペンの部品が落ちていた。
「……空調の関係で、たまたま閉まっただけよね」
自分に言い聞かせ、未来を暗示するかのような不吉な予感を振り払う。手探りで階段を下りる。狼の巣へ向かうきっかけを、思い出しながら。
「なぁミミ、そろそろ良いだろ」
隣を歩く間藤から、耳元で囁かれた。時は昼前、居るのは八菱CBD銀行目黒支店。契約書を格納する部屋、通称『金庫』の中だ。六月だというのに、真冬のような寒気が私を襲う。彼は歩を止めず、私の肩を抱き寄せた。
「この部屋、空調が効きすぎだよな」
おめでたい脳みそだ。男はある程度の学歴と職歴を得ると、ハッピー野郎に進化する。「課長が冷房を下げまくる。女子トイレが避難場所になっている」と以前吐いた愚痴を覚えていたのかもしれないが。
私は彼の顔を見上げた。目鼻立ちがはっきりした西洋風の甘い顔、すらりと伸びた手足。くたびれたスーツとシワのあるシャツは、せっかくの素材を台無しにしていた。彼は結婚する相手を間違えたのかもしれない。夫のシャツにアイロンをかける『余裕がある生活』が送れる、フリーランスのライターの方が良かったのかもしれない。彼は行内結婚をしていた。銀行員の55%はそのような道を辿る。ここは八菱CBD銀行で、最近、副業をこそ解禁したことで話題になった。
「今、ここで?」
艶のある女性の声を出すことに成功した。偽りの微笑みを返すことも忘れなかった。昼間は銀行で働いているが、役者志望だ。先日も事務所で「二十五歳ねぇ、爆発的に売れるには難しい年齢だな。地下アイドルでもやらない? その客を舞台に引っ張ってこれるしさ」と言われたばかりだった。東京は街だ。何歳でも夢が叶う錯覚を抱かせる。サクセスストーリーなんて、おとぎ話でしかないのに。
「ここでだよ。ばかに広いだろ、うちの店の金庫」
「誰かが入ってくるかもないじゃない」
「大丈夫だよ。棚が無造作に並んでるから、一直線に歩けないだろ。入口から一番奥まで、ウサイン・ボルトでも三分はかかる」
彼はその冗談が気に入ったらしく、満足気に鼻を鳴らした。 ボルトでもヤギやキリンより足が遅いことを、彼は知っているのだろうか。
私は辺りを見渡した。二十畳ほどの書庫のような部屋に、灰色で無機質な棚が並んでいる。棚には契約書が入る段ボール、融資関連書類を束ねたクレジット・ファイル、取引先からの贈答品が乱雑に置かれていた。彼のような法人営業の担当者が「自分のデスクに置きたくないけど、捨てたら後々問題になりそう」と思うものたちだ。それは主が巣立ってしまった子供部屋を思わせた。まだ自分は何にでもなれると思っていた子供の、夢の国にいた頃を。片付けコンサルタントが見たら目を輝かせるだろう。しかし事情を知れば、こう言うに違いない。「まず捨てるべきは、この男ね」。
迷いなく棚の合間を縫って進む彼に、私は言った。
「慣れてるのね」
「おいおい。女の嫉妬は醜いぞ」
「もっと良い場所、あったんじゃない」
「『#夜景のきれいなホテル』『#東京タワーが見える部屋』か? 無理だよ。ローンの返済もあるし、金は嫁に管理されてる」
奥さんは賢明だ。彼に一家の財務大臣をさせたら、すぐに女相手に溶かしてしまうだろう。
「娘さんもまだ小さいしね」
「そう、金がかかる。 娘は小五と二歳、 中学受験と保育料。 うちはかみさんも働いてるだろ? だから税金で持ってかれる割に、保育料が高いんだ。だから俺はたくさん働いて、稼がなきゃならない」
一定の職域、課長クラスまでの銀行員は、残業代で給料を稼いでいる。経営職階、つまり次長より上は、残業代が出ない。支店長代理、課長よりひとつ下の彼も、残業代の荒稼ぎをお家芸としていた。
「だから、ここを使うんだ」
部屋の再奥には白い壁が立ちはだかっている。下には黒い箱が置かれていた。ダイヤル式の錠前がついており、セーフティボックスなのだろう。高さは彼の膝下ほど、横幅は腰幅くらい。小さな冷蔵庫ほどのサイズだ。年季が入っていて、今は使われていないように見える。
「手品でもしてくれるのかしら」
「もっと良いものを出してやるよ」
彼はセーフティボックスを、愛おしそうにポンポンと叩いた。
「シルクハット、似合いそうよね」
「だから、マジックはやらないって」
「暗証番号、知ってるの?」
「あぁ。絶対に忘れない番号だよ。たまたま俺の誕生日だった」
彼は暗証番号を入力した。扉が開いたが、中には何も見当たらない。しかし本来あるべきはずのものがなかった。箱の背面はなく、代わりに穴が開いていた。暗く、大きな穴だ。コォォォォ、と不気味な音が響いている。不思議の国のアリスでも飛びこまないだろう。
「これはただの箱じゃない。この穴を隠すためにあったんだ。ほら、行こうぜ」
スマホのライトで穴を照らすと、階段が見えた。暗くて見えにくいが、どうやら下の階へと続いているらしい。隠し方は素人のマジシャン並にお粗末だが、この男にはうってうけだ。
「先に行ってくれない? 初めてだから」
「あぁ、そうだな。初めてだもんな」
私の「初めて」という言葉は、彼の何かをくすぐったようだ。満足げに頷き、彼はかがんで箱の中に入った。こんな男が支店長代理を務めるなんて、世も末だ。慶應を出れば、だいたいの短所は隠される。人生をイージーモードにするフリーパスのようなものだ。それは他の大学を出たものには、決して与えられない。私のようなFランでは。しかし私はもう、その社会で戦うことはやめたのだ。頭取以外は全て敗者となる、銀行のラットレースには。代わりに役者として、夢をつかむ。
「おーい、大丈夫か?」
少し先へ進んだらしい彼の声が、下から聞こえてきた。今すぐ退散しろ、と脳が警報を鳴らす。あの性的嫌がらせを受けた日と、天気も状況もそっくりだった。
「今、行くわね」
私は返事をして、箱の中に入った。警報は無視した。もしそんなものを気にしていたら、行内結婚をし、梶ヶ谷に2LDKマンションを購入し、PTA役員として小学校前に自転車を停めないようパトロールをする人生を送っていただろう。そんな一生はごめんだった。
扉を後ろ手に閉め、間にボールペンを挟む。もしもの時、すぐ開けられるようにと思ったからだ。しかしペンは扉に押しつぶされた。性急で乱暴な閉まり方だ。心にわだかまりを抱えた人間が、力の限り叩きつけたような感覚を覚えた。金庫には私たち以外、誰もいないはずなのだが。スマホのライトをつけると、足元に壊れたペンの部品が落ちていた。
「……空調の関係で、たまたま閉まっただけよね」
自分に言い聞かせ、未来を暗示するかのような不吉な予感を振り払う。手探りで階段を下りる。狼の巣へ向かうきっかけを、思い出しながら。
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