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アウローラ・ロレーヌの華麗なる復讐計画 ~皆様、仲良く地獄へ落ちましょう!~
2 それは不用品処理相手
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ロレーヌ伯爵家に帰ると、帰宅早々家族と遭遇してしまい罵詈雑言を浴びせられた。大人しいアウローラはこれで心を痛めるとでも思っているのだろう。実際には鼻で笑いながら全力で罵倒し、盛大に煽っているのだが。
これくらい、今までされてきたことに比べたら何ともない。自分でやっておいてそんなことも分からないから、見下しているはずのアウローラに馬鹿にされるのだ。
ドレスの下に隠れるこの体に、散々傷を付けたのは誰だと思っている。痛い、やめて、と訴えるアウローラを無視して拘束し、意識が朦朧とするまで血を流させたのを忘れたとでも言うのか。見える部分に傷を付けることはない。痕になるほどのものも同じく。彼らはあくまでも『仲の良い家族』を演じたいみたいだから。
「まあ、思い通りになんてさせないけれど。クズはクズらしく地獄に落ちればいいのよ。どうせ他人を下に見るしか能がないゴミなのだから誰も困りはしないわ」
湯浴みを終え、ナイトドレスに着替えながらそんなことを呟く。アウローラ付きの侍女などいるはずもないので自分のことはすべて自分でやらなければならない。アウローラは自分のプライベートに他人を入れたくない派なので、侍女に世話をしてもらえないことで嘆いたことはないが。
ロレーヌ伯爵家の内情を知らない者から見れば『愛されて育った令嬢』であるよう、最低限の日用品は揃えられている。食事も少量だが与えられる。雨風しのげて暖かい寝床もある。世の中には何も持たず、その日生きるだけで精一杯の人もいるのだ。たとえどんなに嫌われていようと、これだけで充分に幸せと思える知識がアウローラにはあった。
香油の入った新品の瓶を空ければ、ふわりと薔薇の香りが漂う。だがこれはあの人の好むものではない、とすぐにその瓶の蓋を閉めた。前に使っていたものが無くなったので新しく買い足してもらったのだが、この香りは正直アウローラも好きではない。買ってもらえるだけありがたいだろうと言われればその通りでしかないが。
「お姉様、夕食の時間ですって。わざわざ私が伝えに来てあげたのだから感謝してください……って、あら? その香油はどうされましたの?」
「先日お父様が買ってくださったの。まだ使っていないけれど……」
「ふぅん……ではそれ、私にくださる? 素敵なものは私のようにかわいい女性に使われた方が作った方も嬉しいと思いません?」
「まだ使っていないのだけど」
「だから欲しいと言っているんですよ? お姉様の使いかけなんて不要ですし」
人は他人が持っているものを魅力的に思うことが多い。妹であるマリーは特にその傾向が強く、甘やかされているのだから新品を買ってもらうことだってできるのに、いつもアウローラが使おうとしていたものを欲しがった。断られるとは露ほども思っていないのが伝わるこの笑みだから、きっと嫌がらせも含まれているのだろう。最低限の日用品は買い足してもらえると言ったが、当然マリーほどの頻度で買ってもらえるわけではない。
「……どうぞ」
「やった! ありがとうお姉様!」
「どういたしまして」
「お姉様から奪ってしまったようで申し訳ないわ」
「気にしなくていいのよ」
だってそれ、私の好みじゃないもの。わざとらしく『いい子』を演じるマリーに笑顔を返し、心の中ではそんなことを呟く。アウローラだって馬鹿ではない。本当に大切なものはすべて自分しか知らない場所に隠している。こうして堂々と置いているということは、わがままで奪われても構わないということだ。最初は大切なものを取られることもあったが、今では逆に不用品処理相手として利用している。ただでは負けないのがアウローラ・ロレーヌという女。アウローラのことを見下している彼らは、アウローラがそんなことを考えているだなんて知る由もないだろう。哀れなことだ。
これくらい、今までされてきたことに比べたら何ともない。自分でやっておいてそんなことも分からないから、見下しているはずのアウローラに馬鹿にされるのだ。
ドレスの下に隠れるこの体に、散々傷を付けたのは誰だと思っている。痛い、やめて、と訴えるアウローラを無視して拘束し、意識が朦朧とするまで血を流させたのを忘れたとでも言うのか。見える部分に傷を付けることはない。痕になるほどのものも同じく。彼らはあくまでも『仲の良い家族』を演じたいみたいだから。
「まあ、思い通りになんてさせないけれど。クズはクズらしく地獄に落ちればいいのよ。どうせ他人を下に見るしか能がないゴミなのだから誰も困りはしないわ」
湯浴みを終え、ナイトドレスに着替えながらそんなことを呟く。アウローラ付きの侍女などいるはずもないので自分のことはすべて自分でやらなければならない。アウローラは自分のプライベートに他人を入れたくない派なので、侍女に世話をしてもらえないことで嘆いたことはないが。
ロレーヌ伯爵家の内情を知らない者から見れば『愛されて育った令嬢』であるよう、最低限の日用品は揃えられている。食事も少量だが与えられる。雨風しのげて暖かい寝床もある。世の中には何も持たず、その日生きるだけで精一杯の人もいるのだ。たとえどんなに嫌われていようと、これだけで充分に幸せと思える知識がアウローラにはあった。
香油の入った新品の瓶を空ければ、ふわりと薔薇の香りが漂う。だがこれはあの人の好むものではない、とすぐにその瓶の蓋を閉めた。前に使っていたものが無くなったので新しく買い足してもらったのだが、この香りは正直アウローラも好きではない。買ってもらえるだけありがたいだろうと言われればその通りでしかないが。
「お姉様、夕食の時間ですって。わざわざ私が伝えに来てあげたのだから感謝してください……って、あら? その香油はどうされましたの?」
「先日お父様が買ってくださったの。まだ使っていないけれど……」
「ふぅん……ではそれ、私にくださる? 素敵なものは私のようにかわいい女性に使われた方が作った方も嬉しいと思いません?」
「まだ使っていないのだけど」
「だから欲しいと言っているんですよ? お姉様の使いかけなんて不要ですし」
人は他人が持っているものを魅力的に思うことが多い。妹であるマリーは特にその傾向が強く、甘やかされているのだから新品を買ってもらうことだってできるのに、いつもアウローラが使おうとしていたものを欲しがった。断られるとは露ほども思っていないのが伝わるこの笑みだから、きっと嫌がらせも含まれているのだろう。最低限の日用品は買い足してもらえると言ったが、当然マリーほどの頻度で買ってもらえるわけではない。
「……どうぞ」
「やった! ありがとうお姉様!」
「どういたしまして」
「お姉様から奪ってしまったようで申し訳ないわ」
「気にしなくていいのよ」
だってそれ、私の好みじゃないもの。わざとらしく『いい子』を演じるマリーに笑顔を返し、心の中ではそんなことを呟く。アウローラだって馬鹿ではない。本当に大切なものはすべて自分しか知らない場所に隠している。こうして堂々と置いているということは、わがままで奪われても構わないということだ。最初は大切なものを取られることもあったが、今では逆に不用品処理相手として利用している。ただでは負けないのがアウローラ・ロレーヌという女。アウローラのことを見下している彼らは、アウローラがそんなことを考えているだなんて知る由もないだろう。哀れなことだ。
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