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第二章 開戦
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「こんばんは、キース様。今夜は夜空がとても綺麗ですね」
「っ!」
いつの間に後ろに立っていた?全く気配がなかった。木のかなり高いところまで上っていたのだが、流石だな。
「マリナもここに座れ。こちらの方が綺麗に見えるぞ」
「では、お言葉に甘えて。……キース様はここで何をなさっていたのです?」
「ただ、一人になりたかっただけで何かしていた訳ではない」
少し、昔のことを思い出していただけだ。
「あら、そうなのですね」
少しの間、沈黙が降りる。先に沈黙を破ったのは俺だった。
「マリナは何故ここに?殿下からは例の件で既に動き始めていると聞いたが」
「あら、ご存知だったのですね。一度必要な者を取りに戻っただけですよ。そうしたら、偶然キース様がここに来るのを見付けたもので」
「…そうか」
偶然、か。絶対俺がここに来るのを知っていただろう。それにしても必要なものってなんだ?嫌な予感が…
「メルリーエン滞在に必要な物を取りに来ていたのです」
「そうか…」
「絶対に誰にも言わないで下さいね。私達はメルリーエン公国を…潰すことになったのです」
メルリーエンを潰す!?何故急にそんなことを…
「今回の件はベルト侯爵家に一任されました。どのようなやり方でも許すと陛下が。悩んだのですが、このままでは負の連鎖が続く可能性を考えて潰す…と言っても国を無くすのではなく、傘下に入れることに決まったのです」
「このことは公表しないと聞いたが、そんな大掛かりなことでは直ぐにバレるのではないか?」
「大丈夫です。すでに根回し済みです」
最後に一つだけ聞いておかなければならないことがある。
「メルリーエン公国戦、勝率は?」
「100%です。決意などではなく確定事項です。まともに戦うなら一ヶ月後くらいに開戦の筈でしたが、そうではないので、きっとロムマリエ戦の事後処理が終わる頃にはこちらも片付いていると思います」
「そうか。分かった、俺はお前を信じる。だが、絶対に無理はするな、本当に無理はするな」
「分かりました。無理のない範囲で見事勝利して見せますわ」
「ああ」
勝率100%…何故確定事項だと言えるのだろうか。何か考えでもあるのか?少し前の俺なら絶対に信じていないな。
「では私は仕事に戻りますわ。キース様、私がいなくてもお元気で」
「あ、ああ」
気のせいか…?何故かマリナが凄く遠くに行ってしまう感じがする。何故かもう二度と会えなくなるような。お元気で、と少し寂しげな笑顔で言ったマリナの顔が頭から離れない…
「っ!」
いつの間に後ろに立っていた?全く気配がなかった。木のかなり高いところまで上っていたのだが、流石だな。
「マリナもここに座れ。こちらの方が綺麗に見えるぞ」
「では、お言葉に甘えて。……キース様はここで何をなさっていたのです?」
「ただ、一人になりたかっただけで何かしていた訳ではない」
少し、昔のことを思い出していただけだ。
「あら、そうなのですね」
少しの間、沈黙が降りる。先に沈黙を破ったのは俺だった。
「マリナは何故ここに?殿下からは例の件で既に動き始めていると聞いたが」
「あら、ご存知だったのですね。一度必要な者を取りに戻っただけですよ。そうしたら、偶然キース様がここに来るのを見付けたもので」
「…そうか」
偶然、か。絶対俺がここに来るのを知っていただろう。それにしても必要なものってなんだ?嫌な予感が…
「メルリーエン滞在に必要な物を取りに来ていたのです」
「そうか…」
「絶対に誰にも言わないで下さいね。私達はメルリーエン公国を…潰すことになったのです」
メルリーエンを潰す!?何故急にそんなことを…
「今回の件はベルト侯爵家に一任されました。どのようなやり方でも許すと陛下が。悩んだのですが、このままでは負の連鎖が続く可能性を考えて潰す…と言っても国を無くすのではなく、傘下に入れることに決まったのです」
「このことは公表しないと聞いたが、そんな大掛かりなことでは直ぐにバレるのではないか?」
「大丈夫です。すでに根回し済みです」
最後に一つだけ聞いておかなければならないことがある。
「メルリーエン公国戦、勝率は?」
「100%です。決意などではなく確定事項です。まともに戦うなら一ヶ月後くらいに開戦の筈でしたが、そうではないので、きっとロムマリエ戦の事後処理が終わる頃にはこちらも片付いていると思います」
「そうか。分かった、俺はお前を信じる。だが、絶対に無理はするな、本当に無理はするな」
「分かりました。無理のない範囲で見事勝利して見せますわ」
「ああ」
勝率100%…何故確定事項だと言えるのだろうか。何か考えでもあるのか?少し前の俺なら絶対に信じていないな。
「では私は仕事に戻りますわ。キース様、私がいなくてもお元気で」
「あ、ああ」
気のせいか…?何故かマリナが凄く遠くに行ってしまう感じがする。何故かもう二度と会えなくなるような。お元気で、と少し寂しげな笑顔で言ったマリナの顔が頭から離れない…
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