落果

shijima

文字の大きさ
1 / 1

本編

しおりを挟む
 いつまで続くかわからない関係だけど、それでもこのままでいいと思うのはそれなりに情があるからだろう。あの人の性癖なんて興味なかったけれども、今となっては知って、巻き込まれて、絆されて、結果として一緒にいるのはやはり「情」ということにしておきたい。
 まぁ、正直なところ互いの関係性なんて言語化する必要もないからと、深く考えたこともなかった。
 それでいい。それが楽な関係。
 元ヤンと言われてもおかしくない、そんな人物で高校の同級生だった津田といかがわしい関係が始まったのはいつのことだろう。いかがわしいと言っても、二人とも成人していたし、それなりの生活ができる社会人だ。だから別にいかがわしかろうが、純情だろうが関係ないのだけれども。
 そんな関係はいつかと記憶を辿ってみると、なんだか曖昧で遠い昔のような、つい最近だったようななんともあやふやな記憶だ。
 記念日がどうのこうのという関係でもないから、いつから始まったかなんて、何も覚えちゃいない。ただ、始まりは津田つだの性癖というか嗜好を知ってしまったところからだ。
 正直なところ、私は津田じゃなくていい。そして津田は私がいいーー正確には私”みたい”のがいい。
 これが彼の性癖であり嗜好でもある。そしてそれに自分が該当しているだけのこと。

 テロン♪
 ちょっと気の抜けたような音が、スマホから流れる。自分に連絡をしてくる相手なんて、それほど多くないからすぐに津田だとわかる。
 最近、お互い仕事で忙しくて会っていなかったから、そろそろかと思っていたが、当たりのようだ。メッセージには「今日か明日、時間とれる?」というお伺いで、つまるところ「うちきてやろうぜ(意訳)」ということ。
 津田の連絡を受けて、スケジュールを確認する。仕事柄スケジュールの調整はできなくもないが、恋人でもない相手のためにわざわざ予定を変更してやる必要もない。納期が詰まっていなければOK、微妙なら断るのが常である。確認したところ、案件には余裕があったので津田の誘いに乗ることにした。

 ーー明日、20時に行く。
 日時だけの簡潔な本文。それだけでいい。
 というか、そろそろ恋人を作ってもいいんじゃないかと思う。津田のことは嫌いではないが、お互い遊びの範囲内だ。甘い関係になる気がしない。私はそんなことをぼんやり考えてみたが、考えたところで何かが変わるような気もしなかったので、すぐに思考を放棄した。明日は津田にあって一日潰れるんだろうから、今のうちに少しでも仕事を進めておかなくてはならない。無意味な考えで時間を取られるのは無駄だと意識を切り替えて、仕事に集中するようにパソコンにかじりついた。

 津田の部屋は、駅から徒歩15分くらい離れた場所にある2LDKのマンションだ。
 普段通り、インターフォンで呼び出しオートロックのドアをくぐる。6階までエレベータで昇りながら地震の時、大変そうだろうなぁなんてどうでもいいことを考える。
 ポンと軽い音がして、6階に到着したことを知らせる。次の住人が待っているのであろう、扉が閉まるとすぐに下へと向かっていった。
 部屋はすでに鍵が開いていると伝えられていたので、部屋の前についた時点で呼び鈴を押さず、ドアを開ける。奥の部屋からいらっしゃい、と軽い声が聞こえた。
「お疲れ」
 互いに仕事が終わり、週末を過ごすための挨拶はフランクだ。
 津田が食事は? と聞いてくるので軽くとったと伝える。
 その言葉に、じゃあ……と冷蔵庫からビールを差し出してきた。軽く一杯飲みたい気分だったらしい。断る理由もないので、冷えた缶を受け取り、プルタブを引いた。小気味好い音とともに、跳ねた泡を見てから喉の奥に流し込んだ。

 いつも通りの日常。
 津田と自分はこうやってたまには一緒に飲んで、他愛もない話をする日もあれば、すぐさま寝室へ行き互いの体を満足させるための行為をする。何も考えなくていい、駆け引きなんていらない楽な関係。でも、いつまで続くかわからない、曖昧な関係でもある。
葉那はな、どうした?」
 部屋に迎え入れたときよりかなり甘い口調で、津田が聞いてくる。「別に」とそっけない言葉で返せば、その手は自分の頭を捉える。
 そうして、津田は自分の頭をそっと撫でてそのまま下へと手を伸ばす。津田は、自分の体が好きなのだ。ずっと触っていたいと言うくらい。
 津田の反応を合図に、声をかけた。シャワー、と。
 珍しく、津田は一緒に入ると言い出した。別に恥ずかしがる年齢でもないし、と承諾したのが間違いだった。
「ーー待って!」
 一緒に入ったシャワーで津田は、隅々まで洗ってくれた。それはよかった。甲斐甲斐しく世話をされるのは吝かでもないし、丁寧に洗ってくれたことに好感は持てる。だが、そのあとがいけない。ご褒美はもらわないと……、と言う目でこちらを見ながら自分の欲を満たそうとしたのだ。
「ここで?」と問えば、最後まではしないと言ってくる。
 確かに、津田は最後までしなくとも満足できるだろう。しかし、葉那は執拗に攻められぐったりとすること間違いない。
 だが、了承する以外はないのだ。ため息まじりに諾を伝えると嬉々として触ってきた。

 初めは、上から。
 唇、肩、胸と順番に口づけてくる。
 バスタブに座らせ、津田は膝を割り間に入る。そして、葉那の秘部へ口を寄せた。

「ん、あ……」
 吐息と濡れた舌が秘部を刺激する。
 津田は葉那の秘部を執拗に愛撫する。津田は葉那の性器が好きなのだ。何度も何度も愛おしいものに触れるかのように、丁寧に舌でなぞる。水温に混じり、葉那の声が上がる。
「あ……っ、は、ん……」
 舌を捻じ込まれ、中をこれでもかというくらい舐められる。快楽とともに身体の奥から押し寄せる波。津田の舌技に恍惚をもたらされる。津田もまた、葉那の性器を愛撫することで興奮を覚えていた。すでに張り詰めた怒張は先走りでテラテラとしている。最後までしないと言った手前、風呂場では挿れない。葉那を逝かせて、すぐにベッドへと雪崩れ込もうと考えている。
 葉那は津田によって身体の力を抜かされた。ぐったりとした肢体をそっと支えながらベッドまで寄り添う。まるで恋人のようだが、2人の関係はそれではない。身体を慰め合うだけだ。
 ベッドに横たわらせた津田は、先刻十分にほぐした葉那の秘部に再度舌をあてがい、蜜を行き渡るようにした。一度達したからか感度が良く、ぼんやりとした意識の中、口からは吐息が漏れる。そんな葉那を見つつ、自身の欲望を秘部へ埋め込んだ。

「ーーっあ……」拒絶ではない反応が覆いかぶさった下から聞こえる。その声に満足しながら、最奥へと分身を進める。熱く蠕くそこは、誂えたかのように津田を受け入れる。
 まだ意識が朦朧としている葉那を横目に律動を始めた。自分が言い出したこととはいえ、焦らされたため我慢がきかない。ぱちゅんぱちゅんという水気を孕んだ音がさらに自身を興奮させる。
 腰を動かしながら、はっはっという声をあげる津田はまるで獣のようだ。欲望を隠せない獰猛なそれ。やがて意識を取り戻した葉那は、自分の上で必死に腰を振っている津田を恍惚の表情で見上げた。
 津田は葉那の身体が好きで、葉那はセックスの最中に見せる津田の表情が好きなのだ。理性を取り払い、本能のままに行為にふける、その顔を下から見つめ興奮する。津田は津田で、葉那の毛のない性器に溺れている。
 2人が互いを慰め合うのは、性癖がありそれを満たしてくれる相手だからだ。そして何より相性がいい。葉那の敏感な身体は、津田を悦ばせ、津田の強い怒張は葉那を昂らせた。
 口づけや愛撫を幾度となく繰り返しながら、行為は続いた。その間、何度も葉那は絶頂間際まで連れてかれは、なだらかに波を引かれ焦らされた。気持ち良さがずっと続く、いじらしさが限界になろうかというとき、津田は今まで以上に激しく腰を打ちつける。
「んぁっ、あぁ!」
 突然激しくなった抽挿に思わず声を漏らす。さらに獰猛な顔になった津田は自身の欲望を解き放つために、葉那の中を出し入れする。
 津田は射精するときに、これでもかというくらい奥を狙って打ちつける。
 奥にガンガン攻めてきたら、津田の限界も近いのだ。ようやく葉那は自分も逝けると思い、津田に身を任せた。
 パンパンと激しい音が寝室に響き渡る。無意識ながら葉那のいいところを知り尽くしている津田は自身だけではなく、葉那も高みに連れて行く。
「あっ!あぁ……、あ、っ、あっ、あっ」
 津田の背をぎゅっと掴み、葉那は絶頂を迎える。それと少し遅れて、津田もまた葉那の奥へ欲望を放った。
「ーーっ、く」
 葉那の中でドクドクと津田は脈打ち、ジワッと中を濡らした。ふーーっと息を吐き、そのまま葉那の上に倒れ込む。
「気持ちかった……」少し掠れた声で津田が呟いた。事後は色気が増す。
 津田の声色と表情にときめくと、きゅんと中も収縮した。
「あっ……」
 2人ともそれに気がつく。中にはまだ津田がいて、硬度を取り戻しつつある。芯を持ったそれは、葉那の中から出ずに待機していた。
 怪しい気配を感じ取った葉那はこのまま続けられては身体が持たないと思い、体制を変えることで津田を中から追い出した。
 ふぅっ、と葉那は息を吐き津田の隣にうつ伏せで脱力する。風呂場と合わせて2回もいかされ、かなり焦らされたため疲れが溜まった。
 一方の津田は、ベッドから降りキッチンへ向かった。バタンという音が聞こえたので冷蔵庫から水を取り出してきたのだろう。それから少しして、葉那の分と2本水をベッドサイドに置いた。
「飲む?」
「今はまだいい」
「そ」
 また葉那の横にごろんと寝転がる。葉那からは見えないが、津田は臨戦態勢だ。挿れっぱなしで二回戦にならず気を抜いたところで、今度は後ろから挿入した。
「っえ?! えっ??」
 ずずっという音とともに難なく葉那の中に津田が入る。
「足りない」
 そう言って、後ろから葉那の腰を掴みドギースタイルにさせる。葉那の耳に口を寄せ、もう一回、と囁けば葉那は許してしまう。それを知っている津田は、その言葉とともにさらに2回葉那を抱いた。
 空が白み始めた頃、ふっと目が覚める。隣に眠っているはずの津田を見やると、どうやら起きていたようだ。津田も葉那に気が付いたようで、目線だけを向ける。少しの静寂が過ぎ「だるい」と発した。
 理由は明確である。一回で終わると思っていた行為が数回にもおよび、体がだるくなっているのである。明らかに津田のせいだ、と非難がましい声をあげた。一方の津田は余裕とばかりいえる表情で寝転がったままの葉那を見下ろしている。

「もう一回するか?」
 揶揄った口調で挑発をしてくる。流石にもう無理なので、乗ることはしない。が、癪に触る。こうやって毎度津田にいいようにされている。何が嫌かって、自分だけへたっているのが気にくわない。相手に悪意がないから余計。
「え、もう無理。なんなのその体力……アラサーでしょ」
「まぁ、それなりに鍛えてるから」
「そんな鍛えなきゃいけない仕事でもないでしょーに……」
「葉那とたくさんするためにだな」途中まで言ったところで、手近にあった枕を投げる。こともなさげに笑いながらキャッチする。だいたいいつもこんな感じだ。食事したり、やることやったりしてそのまま眠る。場合によっては次の日の朝も一戦交えることもある。恋人関係と違うのは、デートをしないのと、お互いがそういった目で見ていないところだろう。
 どうでもいいことを考えていると、その様子に津田が気づく。どうした? と顔を覗き込んできたので「なんでもない」と返事をした。
 本当は「なんでもない」なんてことはない。津田とのこの関係を解消しようと考えているのだ。元々、特定の相手ができるまでという前提だった。でもいざ関係を始めてみると、特定の相手を作る時間がないことに気が付いた。葉那はフリーで仕事をしているデザイナーだ。社内恋愛ができるわけでもない、それ関連で誰かを紹介してもらえるわけでもない。それに加えて、時間があるときは大抵津田の相手をしている。この状態で、特定の相手ができると考える方がおかしいのだ。
 津田は会社員だ。葉那に比べて、相手ができる可能性が高いだろう。そんなことを考えていると、ただただ津田の事情で自分が振り回されるようになってしまう気がしてならなかった。
 だから、この関係を解消しようと一言発せばいいのにそれができない。それほどまでに情が育ってしまったのだ。
 それに津田がいいと思う相手が現れるとも限らない。津田は相手の身体に求めるものがある。
「……津田はさ、やっぱりパイパンじゃないとダメなの?」
 津田が葉那にこだわる理由。それは津田がパイパン以外ダメだからだ。初めて津田とセックスするときに本人から聞かされた。毛がある女性がダメだと。
「んー、最近は試そうともしてないけど、多分無理だね」
「ふーん、そっか」
「なに? なんかあった?」
「いや、ただの興味。聞いてみたくなっただけ」
 本人曰く、まだ成長しきっていない頃年上の女性に跨られたのだとか。そのときのグロテスクな印象が払拭されずダメになったらしい。
 正直なところ、グロテスクなのは性器そのものじゃないか? と思わなくもないが若き津田は苦手意識を持ってしまったのだろう。
 その後複数の女性と付き合うがセックスのたびに具合が悪くなり、たまたま出会ったパイパンの女性は平気だったため、気分が悪くならないのはパイパン相手だと悟ったようだ。
 見た目が上等な部類に入る津田は誘いも少なくない。それでもその誘いに乗らない理由はトラウマだ。それさえなければ、自分とこんな関係にならなかったはず。
 つまり津田好みでさらにパイパンの女性が現れたら津田との関係は解消することになるのだ。そんなことをぼんやり考えていると、自分がとても都合のいい女になっているような気がしてならない。
「ねぇ……」
「あーー?」
 切り出そうとしたところで、なんて言えばいいのだろう。津田は普段通りの応答だ。だが、ここで怯んでは今までと何も変わらない。そう考えて葉那は続けた。
「私、彼氏作ろうと思う」
 それまでスマホを眺めていた津田が、葉那へと目線を向ける。
「ーーは?」
 それはまるで青天の霹靂、といった表情だった。

 津田への宣告から一週間、葉那は津田と会うのを避けていた。ーーというよりも、彼氏を作ろうとしていたのだ。
 アラサーで、彼氏なし。セフレはいるけどって、どんなダメ人間よ!
 心の中で自分をそっと評価する。こんなんじゃいけない、自分がなくなってしまうと感じて、友人に頼み紹介してもらうための算段をつける。津田にとっての葉那は程の良い性欲解消できる相手だ。葉那にとってもそうだが、お互いが互いじゃないとダメな理由はない。津田はパイパンの女性が現れればそれでいいし、葉那だって自分に合った相手が見つかれば津田は用無しだ。
 ならば、それは早いに越したことはない。
 自分ばかりが相手に情を持ってもダメなのだ。変な情を持ってしまい、相手から離れられなくなる。葉那の悪い癖だ。
 今までの相手だって、辛そう・可哀想といった情が始まりだ。そんな歪な感情から始まって、気がつけば恋人になっていた。でもそれは、良い関係とは言えなかった。相手は葉那に慰めてもらい、依存し、自分が立ち直ればそれで終わっていた。短くて数ヶ月、長くても一年程度。
 それほどの関係しか築いていけなかった。
 葉那も相手を可哀想と思うことで、自分よりも下に見てしまっていたのだろう。そんな関係でずっと一緒に居られる方が狂っている。
 だからこそ、津田との関係を断たなければならない。
 津田は同級生で、友人だ。性的な関係を持ったとしても、これ以上変な関係を持ち込み歪んだ恋愛関係になってしまうのは避けたい。
 純粋に誰かを好きになって、相手からも愛情を得て、ちゃんとした恋人関係を結びたい。そのためには津田との関係を解消しなくてはならない。
 中途半端に情が湧く前でよかった。これ以上長い時間一緒にいたら、どうなっていたかわからない。
「葉那」
 カフェで仕事をしていると、意外な相手から声がかかった。
宇津木うつぎ?」
 津田と同じく高校の同級生である。
 宇津木は、葉那と職場が一緒だった。大学卒業後、入った会社に宇津木がいた。当初気がつかなかったが、宇津木が葉那の名前を見て気が付いたらしい。
「あれ、どうしたの? こんな時間に」
 葉那は基本的に在宅勤務だ。以前は同じ会社で働いていたが、退職して独立。宇津木は変わらず会社に勤務している。
 そんな宇津木と平日の昼過ぎにカフェで会うと思ってもいなかった。
「あーー、ちょっと用事で」
「ふーん 」
「葉那は仕事か?」
「そうだよ。家でやってたけど、ちょっと気分転換にね」
 高校時代はそれほど親しくなかったが、同じ高校・同期入社とあってそれなりに仲良くなっている。時間が合えば食事をしたり飲みに行ったりする仲だが、最近は時間が合わない。ーーというか津田からの連絡があってなかなか時間を作れなかった。
「そっか。じゃあ、夜時間ある? たまには飲みに行かない?」
「いいね~。仕事終わる時間まで私も用事済ませるから、終わったら連絡して」
 こうして、久しぶりに宇津木と飲むことになった。

「久しぶりだな」
 二人でよく行く店で合流を果たしたあと、おもむろに宇津木が言う。
「確かに。最近はなかなか都合つかなくてね」
 会社を辞めたあとでも、宇津木と葉那はたびたび飲みに出かける仲だった。しかし最近は、津田との約束の方が先に決まっており、宇津木と飲みに行く機会が減ってしまったのだ。
「変わりない?」
「おかげさまで、順調ではあるかな。ありがたいことに」
 宇津木はいつも葉那のことを気にかけてくれる。そこには恋愛感情がないからこそ、こうやって気兼ねせずに飲みに出かけられる。同級生で、元同僚ということもあるのだろう。独立しても気にかけてくれる存在がいるのは本当にありがたいことだと葉那は常々思う。
「宇津木の方は? 変わりない?」
「んーー、そうだね。特には」
 普段の宇津木からは感じられない歯切れの悪さを察する。
 聞こうかどうしようかと悩んだ末に、聞くことにした。
「なんかあった?」
 聞けば少しだけバツが悪そうな顔をして、話し出す。なんでも付き合っていた恋人と別れることになったそうだ。
 なぜバツの悪そうな顔になったのだろうと、逡巡していれば、宇津木がそれに気が付いたのか自分から話してくれた。
美穂みほと付き合うってなったとき、迷惑かけたから」
 そう言われて、葉那は美穂とのやりとりを思い出した。美穂と宇津木が付き合い始めた頃、葉那はまだ会社に所属しており、それもあってか宇津木と話す機会も、一緒に出かける回数も多かったのだ。それに不安や嫉妬を感じた彼女がちょっとした暴走をしてしまった。そんなこともあってか別れたという話を葉那にするのはためらわれたのだろう。
「そっか。でも私は気にしてないよ。二人の話だもん」
「そういってくれるとありがたい」
「まぁ、でもあの彼女と別れたってのは驚いた」
「あーー、それは俺も。多分勢いでってのもあったんだろうけど」
 宇津木の恋人であった美穂は独占欲が強めの人だった。葉那に対して迷惑をかけたというのも、その独占欲からだ。
 二人の間には何もなく、どちらかと言えば宇津木に恋人ができたことで、二人で飲みに行くのを控えるようにした。それでも、仕事で必要な連絡だったとしても、葉那とやりとりがあるのを嫌った。
 その結果として、仕事に影響も出てしまい迷惑ーー。というのが大まかな流れだ。
 それほど宇津木を独占したいと思っている相手が、別れたというのに驚く。
「勢い……」
 呟いた言葉を拾う。
「まぁ、勢いでもその言葉が出るってことは、前から別れた方がいいって考えてたんだろうし、俺としては相手がそう考える以上引き止めるのも……って思ってたから」
「勢いが大切なのかな……」
 宇津木の話を聞いているようでどこかに心を置いているような葉那に気づいて問いかける。
「なんかあった?」
「んんん~~~~」
 どこから声を出しているのだ、という唸り声を上げる。
 津田との関係を詳しく話していない。だからこそ、どうやってどこまで伝えたらいいのか、この話を宇津木に相談してもいいのか思案する。

 津田と宇津木、二人は学生時代それほど仲良くなかった。
 言ってしまえばそれは葉那と津田、宇津木も同じだ。一方は会社でもう一方は同窓会で仲良くなっている。
 葉那は津田との関係を誰かに言うつもりもない。だが、この不毛な関係を解消したいと望んでいる場合、誰かに相談したほうがいいのではないか? とも考える。しかし、それを共通の知り合いである宇津木に話すべきではないだろう。これは津田と関係を結んだ自分でなんとかしなくてはならない問題だ。まったく関係ない人であれば、相談できるが、知り合いに話すべきではない。
 津田のナイーブな一面を、自分の裁量で話していいわけがないのだ。
「自分で解決しなきゃいけないことだから、大丈夫」
「そっか。わかった」
 こう言うしかできない。宇津木は信頼できるし、相談事をするなら適している人物だ。でも、それは自身のことか、赤の他人の話であるべきだ。
 結局、宇津木には相談ができなかったが、楽しい時間を過ごすことができた。気軽に飲める友達は貴重である。
 帰る途中、ふとカバンのなかに入れたまま放置していたスマホの存在を思い出した。
 メッセージと不在着信がいくつか。
 ーー津田だ。
 特に約束していない場合、葉那の返信は遅い。時間も深夜に差し掛かっていることだし、とそのままカバンのなかにスマホを戻そうと考えたとき、再度着信を告げる。
 さすがに何件かメッセージが入っている状態で、気がついているのにスルーするのは気がひけた。正直このまま家に帰ってゆっくりと休みたい。そう思いながら応答する。
「ーーはい」
『葉那?』
「うん、いまさっき気がついたけど、なんかあったの?」
『ーーいや、なにかって言うわけじゃないけど……』
「そう。今日、ちょっと飲みに出てて、それでいま……」
『じゃあ、このままうちに来……』
 津田がすべてを言い終わる前に、葉那は切り出した。
「津田……あのさ、私もうそっちには行かない。」
 宇津木と飲んで、話せない内容は健康的ではない。友達にしっかりと説明できる仲でなければ、このままズルズルするのはだめだ。
 葉那の発言を聞いた津田は、息を飲んだ。まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったのだろう。そんな津田から何か言われる前に、この電話を終わらせてしまおうと考える。
「ーーごめん、津田。じゃあね」
 ピロンーー。
 スマホの通話を切る。一方的だし、勢いかもしれない。でも、この津田との関係は葉那にとって悩みの種でもあった。
 前に彼氏を作ろうと津田に告げたときの顔が脳裏に蘇る。呆然としていた表情だ。ずっと同じ関係ではいられない。ならば、ゼロから新しい相手を作り恋人として支え合う存在を得たい。
 だって、津田と葉那はそんな関係にはなれないのだから。

 一方津田は、葉那から告げられた「そっちには行かない」と言われ、呆然としていた。
「……え?」
 すでに電話は切られている。数日前に「彼氏を作る」と発言していたが、単なる冗談だと思っていた。しかし、葉那は本気だったのだ。
 津田は今日も葉那を呼んで、一緒に過ごす予定だった。お互いに気を使わなくていい、自分が楽でいられる存在だと思っていたし、葉那にとっての自分もそうであると信じて疑わなかった。しかし、葉那にとっては違ったのだ。確かに、恋人と呼べるような間柄ではない。そんな甘ったるい存在ではなく、セックスフレンドと呼ぶのが妥当であろう。けれども、その間には情があったし、それなりに大事な存在であることは間違いない。
 そう思っていたのは自分だけだったのかーー。
 津田は足元が崩れるような錯覚に陥った。
 どうして、なんで、葉那は自分から離れ行かないと、何故思っていたのだろうか。それは、紛れもない甘えだ。「彼氏を作る」と言っても冗談だろうと思った根拠はなんだったのだろう。
 ぐにゃり、そう音を立てて何かが歪んだ。

 津田への決別を表してすでに数週間が経った。
 葉那の日常は、津田から連絡が来ない限り特段変わらなかったーー、というわけでもなく、津田からの呼び出しがない分、今度は宇津木からの連絡が増えた。
 それもそのはず、宇津木の嫉妬深い恋人が、元恋人になったからだ。
 おかげで宇津木は同僚や友達と遊びことが増え、それに漏れず葉那も誘われた。今まで宇津木とは少しばかり疎遠になっていたので、仕方ないかと思い付き合っているが、正直なところ、彼氏を作ると断言した手前、そっちに労力を割きたいところだ。
 まぁ、人生なんて自分の計画通りに進むことがないのを知っているから、津田のような男に引っかかっても、宇津木に足止めされても、それはそれでいい時間を過ごせたと思うようにしている。
 ただ、それら全てを無駄にしようとは思っていない。
 だからこそ、津田を切ったのであれば早く彼氏を作りたいのだ。
 彼氏を作ると言ったところで、じゃあどんな人がいいの? と言われると正直困る。タイプを聞かれても、真っ当に答えられない。顔はイケメンの方がいいし、性格はいい方が誰だっていいだろう。もちろん、家事や料理ができないよりできる方が嬉しい……そんなことを考えていると、タイプってなんだろう? と考え込んでしまうのだ。
 誰だって、より良い方がいいに決まっている。
 だけど、全てを兼ね備えている人なんて、そうそういないことも知っている。だから、タイプを聞かれても困るのだ。理想と現実が違うのを知っているからこそ、余計に。
 そんな思いを誰かに告げると、考えすぎだと言われ笑われてしまう。だから、タイプを聞かれても、「好きになった人」くらいにしか答えられないし、自分でもわからないでいる。
 でも、津田を切らない限り、新しい出会いや彼氏を作ることなんてままならないのはわかり切っていた。津田に合わせていると、まるでプライベートの時間がない。それくらい頻繁に津田と会っていたのだ。

 津田と会わなくなって1ヶ月ほど経ったある日、宇津木が葉那を呼び出した。
『今日18時に上がれるんだけど、前によく行ってた店に行かない?』とのことだった。時間に余裕があったので、了承して店で待ち合わせていると、そこには津田もいた。
 ギョッとしたが、宇津木も津田も同級生だ。なんらおかしいことではない。葉那は冷静になるように自分に言い聞かせた。
「じゃ、おつかれー」
 そう言って津田への気まずさもろとも、お酒と一緒に流し込む。
 それにしても、三人で会うなんてかなり稀だ。むしろほぼないと言っても過言ではない。
 ……よりにもよって、なんでこのメンツ……。
 葉那は頭を抱えたくなっていた。しかし、津田と宇津木はそれほど仲が良いわけではなかったはずだ。それなのに、なぜこうして三人で会っているのか不思議でならない。
 そんな疑問を、直で投げかけてみた。
「宇津木、今日はなんだってこのメンバーで飲むことになったの?」
「あーー、葉那は津田と面識あったよなぁ、って思ってさ。なんか最近色々上手くいってないらしくて」
「ん? 二人ってそんなに仲良く話す間柄だっけ?」
 宇津木と話している最中、津田は口を挟むことはなかった。機嫌が悪い……? いや、調子が悪いみたいな感じだ。
「特別親しかったわけじゃないんだけど、この前偶然会ってさ。で、ちょっと話してみたら意外とそりが合わないわけじゃなかったってのがわかったんだよね」
「ふ~ん」
 確かに、津田も宇津木も、グダグダと物事を捉える性質じゃない。だからこそ、高校時代はお互いを認識していても話さなかったのだろうし、偶然会って普通に話すこともできるのだ。
「で、津田がどうしたって?」
 触れない方がいいかとも思ったが、どうせ聞かされるのであれば自分から聞いた方が心構えができるというものだ。そう考えた葉那は敢えて話を振ってみた。
「いやぁ、なんでも付き合ってた彼女に突然冷たくされた、とか」
 彼女。
 その言葉を聞いて驚く。
「え! 津田って彼女いたんだ?」
 自分とあんなことをしておきながら、彼女がいたとは何事か。というか、彼女がいるくせによく何度も何度もやりまくったな。と思ってしまう。
 まじかーー、浮気相手だったのかーーー。と呆然としつつ、表面には出さないようにして、そっと津田を窺い見たら、ジロリと睨まれた。
「え?」
 津田は葉那が宇津木に余計なことを話すのではないか、と危惧しているのだろうか。そんな睨まなくても……と思いつつ、自身も宇津木に変に気遣われたくなくて、黙ることにした。
「なんか、突然相手の子からもう会わない的なことを言われたんだって」
「で、津田は落ち込んでるわけ?」
「……いや、まぁ……」
 なんとも歯切れの悪い答えだ。よっぽどショックだったのだろうか。首を傾げていると、またしても津田に睨まれる。顔が怖い。
「で、同性として、なんで急にそうなるのかってのを聞いてみるのもありだなぁと思って、葉那を呼んでみたってわけ」
 なるほど、宇津木は宇津木なりに津田にことを心配していたらしい。多分自分の悩みがなくなったからこそ、人の悩みに寄り添えるようになったのだろう。
「え~~、でもさ、津田にとっては急だったかもしれないけど、相手にとっては急じゃなかったんじゃないの?」
「というと?」
「ほら、宇津木のときと一緒の考え方でさ、勢いで言ったとしても、前から思っていたことが表にでただけって話」
「あ、なるほど」
 宇津木と葉那が話している間も、津田は無言を貫いていた。よっぽどショックだったのだろうか……。宇津木にはあぁ言ったが、葉那としては、浮気しているのを知って別れを告げたのではないかと考えている。
「ちょっとトイレ行ってくる」
 しばらく色々な話に飛んでから、宇津木がトイレへと立った。その隙を狙って、津田に話しかける。
「津田さぁ、彼女いたんならなんで教えてくれないの? 急に会わないって言われたのも、浮気してるのを知ったからなんじゃない?」
 葉那の言葉に、津田は目を開き言葉が出ない、と言った顔をした。
 変な顔してるな、と思っているとおもむろに津田が告げた。
「ーーは? あれは、お前のことだよ」
「え?」
 一体何を言っているのだろうか。
「急にもう行かないとか、彼氏作る、とか言って連絡しなくなったくせにーー」
「いやいやいや、私たち別に恋人でもなんでもなかったでしょう」
「そうだけど、そうじゃなくて……」
「え? ちょっと意味がわかんない」
「だから、俺は、」
 ーーガラッ 
 まるでタイミングを見計らったかのように、宇津木が戻ってくる。
 話を聞かれていただろうか? 聞いていたなら、すぐに突っ込むはず。だがすぐに話には触れず、席に座る。
「ーーで、今の話どういうこと?」
 やっぱり聞かれていたらしい。

 宇津木がトイレから帰ってきたのはなんとも間の悪い、津田とよろしくない会話の真っ只中だった。
 葉那としては、余計なことを宇津木に知られたくなかったし、こんな変な会話に関わらせたくもなかった。別に宇津木が好きとか嫌いとか、そういった感情があるわけじゃなくて、変に気を使われたり、妙な空気が流れたりしたくないというのが一番の理由だ。
 だからこそ、津田とは極力会話を避けていたのに……。
 どことなく微妙な空気が流れる。葉那は積極的にこの話をする気はなかった。津田とは、あれ以来連絡を取っていないし、相手からのアクションがあったわけではない。だからこそ、今日この場で、あんなことを言い出すとは思ってもみなかったのだ。
 それなのに、あんなタイミングで言い出して、あまつさえ宇津木に聞かれてしまうとは予想だにしなかった。
 葉那同様、津田も沈黙している。
 聞かれたことに対する同様ではない。何をどう話したらいいのかという点で、自分なりの答えが出ていないからこそ、発言できないのだ。迂闊に沈黙を破って、葉那の気分を害してはいけない、嫌われたくないという気持ちが大きい。
 一向に何も話し出さない二人に、宇津木が大きなため息をつく。
「はぁ、これじゃ俺が居ると話せないか……とりあえず、詳細は聞かない。でも、せっかくの友達なんだし、変な空気になりたくない。俺はもう帰るけど、二人はしっかり話し合って」
 そう言い残し、宇津木はその場を離れた。

「葉那、あのさ」
 宇津木がいなくなってからしばらく経ったころ、おもむろに津田が口を開く。
「会わない、って言われてからずっと考えてた。葉那との関係は、正直楽で彼女とかそういった関係じゃないけど、一緒にいたいって。でも、葉那にとってはよくないんだろうなってのも、本当は前からわかってた」
 津田が、ゆっくりと気持ちを口にする。
「でも、自分には……、葉那しかいないし、葉那がいいって思って、それで彼女って名前がつく関係じゃなくても一緒にいてくれるならそれに乗ってしまえば楽だって知ってたから……」
「知ってたから? だから、私を利用してたってこと?」
「っ、そうじゃない、けど」
「でも、実際はそうだよね。別に付き合ってたわけでもないし、どちらかにいい相手ができたら終わり。それって、津田はいいかもしれないよ? 自分の嗜好に合った相手と遊べるんだもの。じゃあ、私は?」
「葉那のこと、考えてないわけじゃなかった……はず。それでも、自分の気持ちを優先してた……」
「だよね。だから、今度は私の気持ちを優先させて」
 葉那は津田とこれからどうこうしようという気持ちはない。
 さっさとこれからも一緒に居られる恋人を作りたいのだ。だからこそ、津田との関係はもう終わりにしたい。
「ごめん、それは、嫌だ」
「は?」
「自分の気持ち優先してるし、俺の要望ばっかりって思うかもしれない。でも、葉那と離れるのは、嫌だ」
「それって、自己中じゃないの? 私はどうなるの……私だって、フラフラ津田と遊ぶんじゃなくて、恋人作って遊んだ方がいいって思う、私の気持ちは?」
 葉那の言葉に、津田がグッと詰まる。葉那の言いたいことはわかるし、もっともだ。
「じゃ、じゃあ、俺が葉那の彼氏になる、そしたら」
 津田の考えに、葉那は口を開けたまま呆然とする。
「それでも、気持ちは無視じゃない。津田も私も、別に恋人同士になりたいほど、お互いを思ってない。いいとこちょっと仲のいい友達程度じゃない」
「でも、それなら俺は葉那と居られる」
 いやいやいや、どれだけなんだ、と葉那は頭を抱えそうになる。それと同時に、あのヤンキーのようだった津田がここまで言うことに、ほんの少しだけ優越感を持ってしまう。
 絆されるということだろうか。
 津田は、葉那と一緒に居たいと言う。でもそれは、好きだからではないだろう。それは、依存に近い感情だ。でも、依存するほど、自分と居たいなんて思ってくれる人もそうそうあらわれないのを葉那は知っている。
 津田に依存のように思われること、恋人が欲しいと思う心、葉那はぐらりと揺れそうになってしまう。
 この感情がなんなのかわからない、でもこれほど必死になっている津田を一度も見たことがない。そんな不思議な感情に、グッときてしまう。

「あれ、葉那どうしたの? こんなところで」
 あれから二週間ほど。いつもなら会わないところで宇津木と遭遇した。
 会うのは津田との一件以来だ。
「んーー、ちょっとね」
 はぐらかしたところで、もうすぐ理由がわかってしまう。そう考えているところに、理由がやってきた。
「は? なんで宇津木がいんの?」
「津田じゃん。なに、葉那と待ち合わせでもしてたんだ?」
 宇津木は二人を見比べてなにやらニヤニヤしている。
「ふーん、収まったてわけ」
「まぁ、そこらへんは今度話すわ」
 葉那は若干巻き込んでしまった手前、宇津木にだけは話しておこうと思っている。
「別に話さなくていいだろ」
 宇津木と二人で話されるのが不快なのか、それ自体を阻止しようとする。最近は、恋人(仮)のような関係になったので、独占しようとする気持ちを隠そうともしない。
「じゃ、俺らこっちだから」
 そういって、宇津木からさっさと離れようとする。葉那とゴタゴタしたときは宇津木に相談を持ちかけたくせに、手のひら返しとはまさにこのことだ。
「はいはい、またね」
 宇津木は特段気にした風もなく、二人の前から去っていった。


 私は、津田のことを愛しているわけじゃない。
 好きかどうかもまだわからない。
 でも津田に情はある。
 だから、流されてしまったのだろう……。
 いつか本当に愛が芽生えるかもしれないし、ずっとこのままかもしれない。
 津田という存在が私を落としてしまった。
 
 ぼんやりと津田のことを考える。一応恋人のことなので、考えるのは当たり前かもしれない。人として好意を持つ相手だが、彼氏としては考えなかった相手。そんな風に考えていると、ふと頭をよぎった。
「……落果」
 まるで果実が地面に落ちるように、葉那も津田に落とされた。
 その言葉が自身を納得させた。
 ーーなるほど、と思える。私は、いわば果物だったのか。ならば仕方ない。津田という存在に引っ張られ落とされた。
「葉那?」
 考えに耽っていた葉那を、津田が覗き込む。そんな津田を見返しーー
「仕方ないってわかっただけ」
 ポツリと呟く。そうしてまたいつも通り、寝室へ向かう。
 実をつけては、成熟する前に落とされる果実のように。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

正妻の座を奪い取った公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹のソフィアは姉から婚約者を奪うことに成功した。もう一つのサイドストーリー。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

処理中です...