そうして、俺は走って。

プロローグ

「高校生が日本選手権の100mの決勝を走った。これだけでも素晴らしいことなのに、悔し涙を流しています。」

テレビに写っている女子高校生の3人は泣いていた。
俺はおかしいとおもった。高校生が大人に負けるなんて当たり前だ、と。しかし、当の本人たちは目を腫らして、手を顔の前で忙しなく動かしていた。
俺自身は中学校3年間、陸上をしてきたが、そんなにも泣けるほどに打ち込める競技なのかとおもった。陸上は中学でやめる気でいたが高校でも続けてみよう。俺はこのときそう考えた。

そうして県内屈指の高校から推薦がきたから、そこへ行くことにした。