【R18】【本編完結済】ロールキャベツ系彼女とツンデレ(後々)彼氏

米粉パン

文字の大きさ
13 / 43
本編

13

しおりを挟む
少し長いです、すみませんm(_ _)m
ーーーーーーーーー


パソコン室に戻ると、美術部の方々が(多分自前の)ペンタブを使ってガリガリ作画をしていらっしやった。


教壇には荷物がまとめて置いてあり、真上にあたるホワイトボードの部分に

『写真部の荷物!↓↓↓』

と書かれていた。



何とか自分の荷物を探し出してカメラを引っ張り出し、再び外へ出た。







とりあえず探険するか、と芸術科棟の裏へ回った。

部活動体験の時美術部の部室から見えた景色はここだったようだ。


小さな池のほとりに綿になったタンポポを見つけたので、しゃがんでカメラを構えてみた。

ふわふわと揺れる様子を1枚。

風が吹いて種がいくつか飛んだ瞬間に1枚。



デジタル一眼レフなので、撮った写真を確認する。なかなか良い画ではないだろうか。






「おい」




初カメラにワクワクしていると、後ろからと共に声がかかった。


振り向くと、美術部の部室の窓から神崎先輩がちょいちょい、と手招きをしていた。


話しかけてくれた事が嬉しくて駆け寄ると、ヒヤッと冷たいものを頬に当てられた。


「ひゃっ!な、何するんですか!?」

「あまり陽射しに当たり過ぎるな。飲んどけ。」


ありがとうございます、と受け取ったものは冷えたスポーツドリンクだった。


一口頂いて、「おいくらでしたか?」と聞いたが、先輩は「知らない。落ちてた」とそっぽを向いた。


溢れ出るツンデレ猫感……


「おい、ニヤニヤするな。…………それで、その…………この前は、悪かったな」

はて、と考えたが、カフェの帰りに「触るな」と言われたことだろうか。


「ふふっ…これでチャラ、ですよ」

スポーツドリンクを差して、微笑んだ。


先輩はなぜか険しい顔になったが、続けた。

「あとパソコン室の件、ありがとな。この部室は触られると不味いものもあるから」


「いえ……」




気にしないで、と言うのを止めた。

「何か、お礼はないんですか?」

「はぁ!?」


ニヤニヤしているのは自覚済みだ。


「身内とはいえ、理事長を相手に話をつけてきたのですよ?私の大好きな悠くんから労いがあっても良くないですか?」

「おいやめろ。悠くんとか特に。休憩中じゃなかったら何て言われてたか……」


きゅるるん、と上目遣いで首を傾げてみる。


「くっ……」と苦々しい顔をしながらも頬を染める先輩を見て、心の中でガッツポーズを取った。



「…………海」

「海、とは?」

「毎年海開きの前に海に行って、絵の材料にしてる。人少なくて景色がいいから……連れてってやる……くらいしか思いつかない……」


尻すぼみに提案されたが、「行きます!!」と即答した。

「休憩、あとどれくらいですか?」

「30分くらい息抜きするって出ていったから……あと20分くらいか?」

「じゃ、そっち行きますね!物には触りませんので!」

「は、はぁ!?ちょ、おい」

止められる前に全力疾走でその場を離れ、玄関から中に入った。






美術部の部室に入ると、先輩が呆れた顔をして、「ほら」と椅子を出してくださった。



「ありがとうございます。…………先輩、なんだかんだ私に甘いですよね」

「………………そんなことない」



心当たりがあるようだ。


「先輩、ID交換しましょう!」

「はぁ?何で「海連れてってくださらないのですか?」


被せて畳み掛けると、先輩はしぶしぶスマホを取り出した。


「先輩、意外とロマンチスト……?」

「うるさい」


天の川がプリントされているスマホカバーだ。

「星、いいですよね。私牡牛座です」

「…………」

「5月7日です」

「…………」

「血液型はA型です」

「…………これ、答えないとどんどん質問が増えていくやつか?」

「よく分かりましたね!スリーサイズは上から「答えるから!!」




残念、と笑う私をみて、先輩はため息をついた。

「お前、かわいい顔してるんだからもう少し危機感持てよ……スリーサイズとか絶対言うな」


「せ、先輩~~~っ!私のことかわいいって!!」


「はいはい顔がな。12月25日生まれ山羊座、O型だ」


「クリスマスなんですね!予定空けておきます」


「ぼっちクリスマスか?めでたい頭だな。ほらQRコード」


「もう!先輩を美味しくいただくんです!友達追加しました!」


「ばか、変態」


「…………先輩になら変態って言われるのも良いかも」


「あーーーもう!折角の休憩時間がくだらないことに潰れるだろ!」






その瞬間、何か黒いものがじわじわと心を蝕んだ。

【追加しました】と共に『神崎悠』と初期アイコン(先輩らしい)がスマホの画面に表示されたのを確認して、思い切り先輩に抱きついた。


「なっ!!」

「つがいとの時間をくだらないなんて言わせません」




どうしてこんなに怒っているのか、自分が分からない。



「ご、ごめん……分かったから……」

「分かってません!!」


さらにぎゅーーっと抱き締める力を強めた。


「どうして……私ばっかり先輩が好き……先輩も私を好きになって…………」


じわりと涙が浮かんで、鼻をすすった。

ーーーーーー何だか、がどんどん強くなっている。





そう思った途端、思いっ切り体を剥がされた。


「海行く時に話すから……もう少し待ってくれ」


そう行って先輩は筆を手に取った。


「もうそろそろ他のヤツらも戻ってくる。お前も写真、行ってこい」


こちらに背を向けた先輩は、多分もう何を言っても返事をしない。


椅子を端に寄せ、部室から出た。






扉の前で振り返り、シャッターを切った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...