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本編
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ーーーーーーーーー
時間飛ばします(ご都合)
そしてまた長いです(話を切るのがへたくそ)
by作者
ーーーーーーーーー
5月7日金曜日
今日は待ちに待った誕生日だ!
あの日先輩に「待ってて」と言われ、どう接して良いのか分からなかったが、学園内で偶然会ったときは手を振ってくださるし、金曜日の放課後は普通に離館に来て図書委員の仕事をしていらした。
今日も放課後になると離館へ向かった。
扉を開けようと取手に手をかけて引くが、鍵が開いていないようだ。
いつも神崎先輩の方が早いのに珍しいな、と思いながら中央図書館へ向かった。
離館の鍵を入手して解錠し、しばらくカウンターでボーッとしていたが、一向に先輩は来る気配はないし、今日は離館を利用する人はいないようだ。
「はぁーーーー」
気分は某国民的アニメーションの店番をするシーンだ。
「悠くーーん」
カウンターに突っ伏してふざけて呼んでみると、扉の開く音がすると同時に、あの香りが伝わってきた。
「ごめん、遅くなった」
「こんにちは、大丈夫ですよ。誰も来てませんから」
先程のふざけた呼名が聞こえていないか内心ヒヤヒヤしたが、どうやら聞こえていなかったようだ。
先輩はカウンターの内側に来て椅子に座ると、ハガキより少し大きな箱を取り出した。
「はい、誕生日おめでとう」
一瞬思考が停止した。
覚えていてくださったのですね、とか
プレゼントなんてわざわざ良いのに、とか
言うべきことは色々あったのだろうけど、「ありがとうございます」としか言えなかった。
先輩が、私にプレゼントを贈ってくださった。
それだけで包みの中の物は、世界中のどんな高価なものよりも貴重なものになった。
「開けても良いですか?」
「あぁ」
包みを開くと、中から額縁入りの絵が顔を出した。
「うわ、綺麗…………」
描かれていたのは、白いモクレンだった。記憶が正しければ、花言葉は「自然への愛」「崇高」「忍耐」とか……?
凛と咲く大きな花弁は、よく見ると色が細かく塗り分けられていて、まるで本物のようだ。
「その……市販の物を何か買おうかと思ったけど、お前は何でも持ってそうだから、絶対持ってないやつを選んだ。…………それ、俺のオリジナルだから」
複製もしない、と付け足して微笑んだ。
「誕生日、おめでとう」
先輩の目の奥には静かに熱がある。そのことを気付かない程疎くはない。
「うぅっ……先輩、ありがとうございます……大好きです!!」
嬉し過ぎて涙が溢れたのは不可抗力だから許してほしい。
先輩の指が目尻に触れ、涙を掬った。
「とても急で申し訳ないんだが、その……土日空いてるか?」
「一生空いてます」
「いや、それもどうなんだ……」
先輩は呆れた顔をしているが、どこか許容の色がみえる。
「空いてるなら行こうか、海。ちょっと遠いから1泊する事になるけど」
「行きます!!ホテル代とかは……」
「…………もう予約して、支払いも済んでる」
頬を染めて視線を逸らした先輩を見て、愛しさが込み上げてきた。
「断られたらどうするつもりだったんですか?」
「断られても大丈夫だったが……精神的には大丈夫じゃなかったかもな」
ははっ、と眉を下げて笑った。
「今日、ご両親に挨拶に行っても良いか?大事な娘さんを連れ出すからな」
「は、はい!連絡してみます」
わたわたとスマホを取り出し、お母様とのトーク画面を開いた。
『今日、つがいの相手が挨拶に来たいと仰っているのですが』
数秒後に既読がつき、返事がきた。
『何!?急展開!!』
『彼が毎年絵の材料にしている海に、私も連れて行ってもらうという口約束をしていたのです』
『へー、それで親に挨拶?律儀だね』
OK!とかわいいクマが親指を立てているスタンプが送られてきたので、了承ということだろう。
「大丈夫そうです」
「そうか、ありがとう」
先輩はホッとした表情を浮かべた。
パソコン室に着くと、瑞希がちょうどカメラのお手入れをしているところだった。
「瑞希、ごきげんよう」
「お、やっほー!図書委員おつかれ!」
綿棒で細部を拭いていたようだ。
「で、神崎先輩とはどうだった?」
瑞希は毎週金曜日、こうしてニヤニヤしながら質問してくる。その度に「何もない」と返して「なんだぁー」と言うのがお決まりだったのだが……
瑞希の耳元に寄り、小声で
「実は、お泊まりで海に行くことになった」
と言うと、「はあっ!?」と綿棒を放り投げて私に身を寄せた。目がギラギラしている。
「何それ何それ!!kwsk」
先輩に「待ってて」と言われた件については既に瑞希から根掘り葉掘り聞かれていたので、誕生日プレゼントを貰ったところから話した。
「誕プレの絵、見せてくれない?」
「ええ、いいわよ」
箱を取り出し、開けて瑞希に見せると
「うわぁ~~きれい!なにこれ、百合?」
と概ね予想通りの反応が返ってきた。
「ふふっ、モクレンよ」
「へー!誕生花とか?あ、私からも誕プレあるんだった!」
私の手の上に箱を返却した瑞希は、自身のカバンを探り始めた。
「ほい、誕生日おめでと!!」
「ありがとう!開けても良い?」
「もちろん」
先輩の絵を丁寧にカバンの中に入れ、瑞希から貰った包みを開いた。
中から出てきたのは、以前瑞希と一緒に行ったカフェの店の名前が入ったクッキーの包みと紅茶パックのセットだった。
「いやー、あれから私カフェの常連みたいになっててさ。みーちゃんの誕プレ何にしようってマスターに相談したら、このセット作ろうかって言ってくれてさ!」
これがダージリンで、これがアップルで……と楽しそうに説明する瑞希を見て微笑ましく思っていると、パソコン室の扉がやや荒々しく開いた。
扉を開けたのは神崎先輩だった。
ーーー何故か瑞希を睨んでいる。
瑞希は立ち上がり、ニコニコと先輩に語りかけた。
「こんにちは先輩!そんなに敵対視しないでくださいよ……先輩の可愛い可愛いみーちゃんはもうお返ししますから」
「み、瑞希!?」
「ああ、返してもらう。おい、行くぞ」
慌ててプレゼントをカバンに入れ、「ありがとう!また月曜日」と瑞希に声をかけると、先輩に私の空いている左手を握られた。
(は、初手繋ぎっ!?)
ーーー瑞希がニヤニヤしながら見ていたのに雅は気づいていなかった。
ーーーーー作者よりーーーーー
本当に展開が早いのですが、一応Rつけてるのでさっさとその方向に持っていきたいという魂胆です、すみませんm(_ _)m
公開済みの話もちょいちょい加筆修正しております。
次回先輩の話です
時間飛ばします(ご都合)
そしてまた長いです(話を切るのがへたくそ)
by作者
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5月7日金曜日
今日は待ちに待った誕生日だ!
あの日先輩に「待ってて」と言われ、どう接して良いのか分からなかったが、学園内で偶然会ったときは手を振ってくださるし、金曜日の放課後は普通に離館に来て図書委員の仕事をしていらした。
今日も放課後になると離館へ向かった。
扉を開けようと取手に手をかけて引くが、鍵が開いていないようだ。
いつも神崎先輩の方が早いのに珍しいな、と思いながら中央図書館へ向かった。
離館の鍵を入手して解錠し、しばらくカウンターでボーッとしていたが、一向に先輩は来る気配はないし、今日は離館を利用する人はいないようだ。
「はぁーーーー」
気分は某国民的アニメーションの店番をするシーンだ。
「悠くーーん」
カウンターに突っ伏してふざけて呼んでみると、扉の開く音がすると同時に、あの香りが伝わってきた。
「ごめん、遅くなった」
「こんにちは、大丈夫ですよ。誰も来てませんから」
先程のふざけた呼名が聞こえていないか内心ヒヤヒヤしたが、どうやら聞こえていなかったようだ。
先輩はカウンターの内側に来て椅子に座ると、ハガキより少し大きな箱を取り出した。
「はい、誕生日おめでとう」
一瞬思考が停止した。
覚えていてくださったのですね、とか
プレゼントなんてわざわざ良いのに、とか
言うべきことは色々あったのだろうけど、「ありがとうございます」としか言えなかった。
先輩が、私にプレゼントを贈ってくださった。
それだけで包みの中の物は、世界中のどんな高価なものよりも貴重なものになった。
「開けても良いですか?」
「あぁ」
包みを開くと、中から額縁入りの絵が顔を出した。
「うわ、綺麗…………」
描かれていたのは、白いモクレンだった。記憶が正しければ、花言葉は「自然への愛」「崇高」「忍耐」とか……?
凛と咲く大きな花弁は、よく見ると色が細かく塗り分けられていて、まるで本物のようだ。
「その……市販の物を何か買おうかと思ったけど、お前は何でも持ってそうだから、絶対持ってないやつを選んだ。…………それ、俺のオリジナルだから」
複製もしない、と付け足して微笑んだ。
「誕生日、おめでとう」
先輩の目の奥には静かに熱がある。そのことを気付かない程疎くはない。
「うぅっ……先輩、ありがとうございます……大好きです!!」
嬉し過ぎて涙が溢れたのは不可抗力だから許してほしい。
先輩の指が目尻に触れ、涙を掬った。
「とても急で申し訳ないんだが、その……土日空いてるか?」
「一生空いてます」
「いや、それもどうなんだ……」
先輩は呆れた顔をしているが、どこか許容の色がみえる。
「空いてるなら行こうか、海。ちょっと遠いから1泊する事になるけど」
「行きます!!ホテル代とかは……」
「…………もう予約して、支払いも済んでる」
頬を染めて視線を逸らした先輩を見て、愛しさが込み上げてきた。
「断られたらどうするつもりだったんですか?」
「断られても大丈夫だったが……精神的には大丈夫じゃなかったかもな」
ははっ、と眉を下げて笑った。
「今日、ご両親に挨拶に行っても良いか?大事な娘さんを連れ出すからな」
「は、はい!連絡してみます」
わたわたとスマホを取り出し、お母様とのトーク画面を開いた。
『今日、つがいの相手が挨拶に来たいと仰っているのですが』
数秒後に既読がつき、返事がきた。
『何!?急展開!!』
『彼が毎年絵の材料にしている海に、私も連れて行ってもらうという口約束をしていたのです』
『へー、それで親に挨拶?律儀だね』
OK!とかわいいクマが親指を立てているスタンプが送られてきたので、了承ということだろう。
「大丈夫そうです」
「そうか、ありがとう」
先輩はホッとした表情を浮かべた。
パソコン室に着くと、瑞希がちょうどカメラのお手入れをしているところだった。
「瑞希、ごきげんよう」
「お、やっほー!図書委員おつかれ!」
綿棒で細部を拭いていたようだ。
「で、神崎先輩とはどうだった?」
瑞希は毎週金曜日、こうしてニヤニヤしながら質問してくる。その度に「何もない」と返して「なんだぁー」と言うのがお決まりだったのだが……
瑞希の耳元に寄り、小声で
「実は、お泊まりで海に行くことになった」
と言うと、「はあっ!?」と綿棒を放り投げて私に身を寄せた。目がギラギラしている。
「何それ何それ!!kwsk」
先輩に「待ってて」と言われた件については既に瑞希から根掘り葉掘り聞かれていたので、誕生日プレゼントを貰ったところから話した。
「誕プレの絵、見せてくれない?」
「ええ、いいわよ」
箱を取り出し、開けて瑞希に見せると
「うわぁ~~きれい!なにこれ、百合?」
と概ね予想通りの反応が返ってきた。
「ふふっ、モクレンよ」
「へー!誕生花とか?あ、私からも誕プレあるんだった!」
私の手の上に箱を返却した瑞希は、自身のカバンを探り始めた。
「ほい、誕生日おめでと!!」
「ありがとう!開けても良い?」
「もちろん」
先輩の絵を丁寧にカバンの中に入れ、瑞希から貰った包みを開いた。
中から出てきたのは、以前瑞希と一緒に行ったカフェの店の名前が入ったクッキーの包みと紅茶パックのセットだった。
「いやー、あれから私カフェの常連みたいになっててさ。みーちゃんの誕プレ何にしようってマスターに相談したら、このセット作ろうかって言ってくれてさ!」
これがダージリンで、これがアップルで……と楽しそうに説明する瑞希を見て微笑ましく思っていると、パソコン室の扉がやや荒々しく開いた。
扉を開けたのは神崎先輩だった。
ーーー何故か瑞希を睨んでいる。
瑞希は立ち上がり、ニコニコと先輩に語りかけた。
「こんにちは先輩!そんなに敵対視しないでくださいよ……先輩の可愛い可愛いみーちゃんはもうお返ししますから」
「み、瑞希!?」
「ああ、返してもらう。おい、行くぞ」
慌ててプレゼントをカバンに入れ、「ありがとう!また月曜日」と瑞希に声をかけると、先輩に私の空いている左手を握られた。
(は、初手繋ぎっ!?)
ーーー瑞希がニヤニヤしながら見ていたのに雅は気づいていなかった。
ーーーーー作者よりーーーーー
本当に展開が早いのですが、一応Rつけてるのでさっさとその方向に持っていきたいという魂胆です、すみませんm(_ _)m
公開済みの話もちょいちょい加筆修正しております。
次回先輩の話です
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