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本編
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温泉街に再び降り立った私達は、手を繋いで今日泊まる旅館に入った。
チェックインを済ませて荷物を受け取り(全部先輩が)、階の1番奥の305号室に入った。
2人用にしては広めの和室で、部屋の奥には大きな窓と、フローリングのスペースにテーブルと椅子のセットもある。
「すみません、お手洗い行きますね」
「ん?ああ」
そそそ、と洗面所らしき襖を開けると、簡易シャワー(温泉がメインだからであろう)、洗面台、その奥にさらに扉があってトイレがあった。
ぱたん、とトイレのドアを閉めて、心を落ち着かせる。
(え、待って……?断られても大丈夫って、そういうこと!?)
先輩に海に行こうと誘われた時、私が「断られたらどうするつもりだったんですか」と聞いたら先輩は「断られても大丈夫なようにした」と言っていたはずだ。
(確かに、私が来なくても部屋は1つのままだけど……!?)
最初から、先輩は私と布団を並べて寝るつもりだったのだ……
(きゃあああああ!!)
狭いトイレの中で1人でジタバタする。
(いちおう持ってきたけど……)
ポーチから避妊具の箱を取り出した。
足りるかなと思って10枚入りなのだが……
(足りるかなって何よ、足りるかなって!!私こんなにはしたない子だったのね!?)
遅すぎると先輩が不審に思うかなと思い、急いで用を足して部屋に戻った。
先輩は、ぼーっとテレビを見ていた。
まだ15時過ぎなので、面白い番組は特に無さそうだ。
「なぁ、夕食は17時からだから、その間商店街でもぶらぶらしないか?」
「ええ、もちろん!行きましょう」
よし、と先輩はテレビを消して立ち上がった。
旅館を出た私達は、温泉街からひとつ奥に入った商店街を歩き出した。
土日だからであろうか、人が多い。
書店、ゲームセンター、百貨店、カフェ、カラオケ……色々な建物がずらりと並んでいて、ヒマを潰すのにちょうど良さそうだ。
「先輩、あれって、ゲームセンターというものですか?」
「そうだけど……え、入ったことないのか?いや、なくても不思議ではないか、お嬢様だし……」
「お父様が許してくれなかったのです。入ってみたいです……!」
じっと先輩を見つめてみる。少し身長差があるので、必然的に上目遣いになってしまうのだが。
先輩は険しい顔をして、行くか……とゲームセンターに一緒に入ってくださった。
太鼓を叩いたり、金魚を掬ったり、ゾンビをぶちかましたりして満喫していると、ぱっちりした目の可愛らしい女の子が大きく写った箱を見つけた。
「先輩、あの箱は何ですか?」
「?ーーープリクラか?」
「え?フリフリの戦闘服に変身して戦うあの……!?」
「それはプリ〇ュア」
手刀で軽く頭を小突かれた。
「せっかくデートしてるし、入ってみるか」
「で、デート!?」
「…………は?デートって思ってたの俺だけだったのかよ」
「い、いえ!違います!ただ、先輩は私の引率って感じで、デートって思っているのは私だけだと……」
「ふーん……じゃあ、プリクラやめとく?」
「い、行きます!ぷりくら!!デートしましょう!」
先輩はしてやったり、と言うように笑った。
「もうしてるだろ、デート。ほら、行くぞ」
ーーーー十数分後ーーー
『プリントが終了したよ!忘れ物がないか気を付けて帰ってね!』
可愛らしい声の後、プリクラ機の横にストン、と写真が落ちてきた。
「うわあ……全然顔が違いますね!立派な詐称じゃないですか?」
「えげつない感想を嬉嬉として言うな……」
ピースサインから始まり、互いの頬をつついたり、先輩に後ろから抱きしめてもらったりした。
もちろん、プリクラ機の指示に全て従ったポージングだ。
「本当に私1円も出してないですね」
「いや、ラムネと駄菓子買ってただろ?悔しいけど出させてしまった」
「クスッ……ありがとうございます」
ゲームセンターを出ると16時半だった。
「そろそろ戻るか」
「そうですね」
冷えた風が吹いて頬を撫でたが、繋いだ手は暖かかった。
チェックインを済ませて荷物を受け取り(全部先輩が)、階の1番奥の305号室に入った。
2人用にしては広めの和室で、部屋の奥には大きな窓と、フローリングのスペースにテーブルと椅子のセットもある。
「すみません、お手洗い行きますね」
「ん?ああ」
そそそ、と洗面所らしき襖を開けると、簡易シャワー(温泉がメインだからであろう)、洗面台、その奥にさらに扉があってトイレがあった。
ぱたん、とトイレのドアを閉めて、心を落ち着かせる。
(え、待って……?断られても大丈夫って、そういうこと!?)
先輩に海に行こうと誘われた時、私が「断られたらどうするつもりだったんですか」と聞いたら先輩は「断られても大丈夫なようにした」と言っていたはずだ。
(確かに、私が来なくても部屋は1つのままだけど……!?)
最初から、先輩は私と布団を並べて寝るつもりだったのだ……
(きゃあああああ!!)
狭いトイレの中で1人でジタバタする。
(いちおう持ってきたけど……)
ポーチから避妊具の箱を取り出した。
足りるかなと思って10枚入りなのだが……
(足りるかなって何よ、足りるかなって!!私こんなにはしたない子だったのね!?)
遅すぎると先輩が不審に思うかなと思い、急いで用を足して部屋に戻った。
先輩は、ぼーっとテレビを見ていた。
まだ15時過ぎなので、面白い番組は特に無さそうだ。
「なぁ、夕食は17時からだから、その間商店街でもぶらぶらしないか?」
「ええ、もちろん!行きましょう」
よし、と先輩はテレビを消して立ち上がった。
旅館を出た私達は、温泉街からひとつ奥に入った商店街を歩き出した。
土日だからであろうか、人が多い。
書店、ゲームセンター、百貨店、カフェ、カラオケ……色々な建物がずらりと並んでいて、ヒマを潰すのにちょうど良さそうだ。
「先輩、あれって、ゲームセンターというものですか?」
「そうだけど……え、入ったことないのか?いや、なくても不思議ではないか、お嬢様だし……」
「お父様が許してくれなかったのです。入ってみたいです……!」
じっと先輩を見つめてみる。少し身長差があるので、必然的に上目遣いになってしまうのだが。
先輩は険しい顔をして、行くか……とゲームセンターに一緒に入ってくださった。
太鼓を叩いたり、金魚を掬ったり、ゾンビをぶちかましたりして満喫していると、ぱっちりした目の可愛らしい女の子が大きく写った箱を見つけた。
「先輩、あの箱は何ですか?」
「?ーーープリクラか?」
「え?フリフリの戦闘服に変身して戦うあの……!?」
「それはプリ〇ュア」
手刀で軽く頭を小突かれた。
「せっかくデートしてるし、入ってみるか」
「で、デート!?」
「…………は?デートって思ってたの俺だけだったのかよ」
「い、いえ!違います!ただ、先輩は私の引率って感じで、デートって思っているのは私だけだと……」
「ふーん……じゃあ、プリクラやめとく?」
「い、行きます!ぷりくら!!デートしましょう!」
先輩はしてやったり、と言うように笑った。
「もうしてるだろ、デート。ほら、行くぞ」
ーーーー十数分後ーーー
『プリントが終了したよ!忘れ物がないか気を付けて帰ってね!』
可愛らしい声の後、プリクラ機の横にストン、と写真が落ちてきた。
「うわあ……全然顔が違いますね!立派な詐称じゃないですか?」
「えげつない感想を嬉嬉として言うな……」
ピースサインから始まり、互いの頬をつついたり、先輩に後ろから抱きしめてもらったりした。
もちろん、プリクラ機の指示に全て従ったポージングだ。
「本当に私1円も出してないですね」
「いや、ラムネと駄菓子買ってただろ?悔しいけど出させてしまった」
「クスッ……ありがとうございます」
ゲームセンターを出ると16時半だった。
「そろそろ戻るか」
「そうですね」
冷えた風が吹いて頬を撫でたが、繋いだ手は暖かかった。
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