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第1章 歓迎! 戦慄の高天原

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 お屋敷の食堂へ移動して昼食。
 香と隣り合ってテーブルについた。
 執事さんが順に持ってきてくれた料理はほぼ彼女が作ったという。
 自動調理機の世界にあって手作り料理。
 まさかの和食だった。

 桜坂中学の寮でずっと食べていたとはいえ、本来手作りは珍しい代物なのだ。
 事前に仕込んでいたので作り置き感はあったけれど本格的なものだった。
 白米に、野菜天ぷら、茄子の煮浸し、鰤の照り焼き、松茸の吸い物。


【美味しい、しかも和食が得意なんだ。すごい】

【ふふん、私が頑張るのは武のためだから】

【ありがと! 彼女の手料理なんて感激だよ!】

【うん♪】


 舌鼓を打ちながら、一品一品、味を確かめていく。
 そりゃ素人料理だろうから料亭の味は期待していない。
 けれど、リアルの家庭料理と比べても上位の部類に入る腕前だ。
 胃袋を掴まれるレベル。


【ごちそうさま! ほんとに美味しかった!】

【あはは、おそまつさまでした】


 満足!
 実は高天原学園の食堂って手作り和食が出ない。
 桜坂時代の寮のおばちゃんで慣れていた反動でちょっと物足りないと思っていたのだ。
 さくらさんは味を変えたパスタ三昧で満足してるようだけど俺はそうじゃない。
 だからこの香の手料理は本当に嬉しかった。
 彼女の知らない一面に感動した。


 ◇


 また香の部屋に戻って。
 ソファに座ろうと思ったらぐいと腕を引かれた。


【こっち】


 彼女が引いた先には整えられたベッド。
 あの、香さん?
 まだお昼過ぎだよ。


【ね、大事な話だから】


 少し落ち着いた声にあれ、と顔を見ると真剣だ。
 俺は頷いてベッドに腰掛けた。
 すぐ隣に香も座った。


【・・・】

【・・・】


 何で間があんの?
 すぐ話じゃないの?
 そう思って隣を見ると、ちょっと緊張した面持ちの香がいた。
 ごめん、焦った。


【・・・あの、ね】

【うん】


 小さく緊張した声。
 俺のほうがどきりとしてしまう。


【私、ずっと我慢してたの】

【我慢?】

【うん。武の邪魔にならないようにって】

【うん、そうだよね。本当にありがと】

【ん。それは私が選んだことだから良いんだけど・・・】

【うん】

【でもね、でもね! 友達が1番と結ばれたんだーって話とか、何度も聞いて・・・】

【うん】

【そのたびに、我慢って思ってたの】


 俺のことを考えてくれたが故に。
 彼女は3年間、そういう気持ちを我慢したということだ。
 単に関係を進める、というだけでなく・・・その、本能的な意味でも。


【だからね、1番にしてくれたときに、我慢しなくて良いって言われて・・・】

【うん】

【すっごく、すっごく、嬉しかったの! 涙が出ちゃった】

【ん・・・】

【もう、我慢しなくて良いんだって、ほんとうに嬉しくて・・・】


 熱の入った言葉。
 徐々に気持ちが高ぶっているのか、彼女から伝わる熱を感じ始める。
 声が震えている。


【私、ね。あの、そんなに・・・お淑やかじゃ、ない】

【・・・】


 消え入りそうな小さな声。
 どのへんがお淑やか? つい突っ込みたくなった言葉を全力で飲み込む。
 今は茶化すタイミングじゃねぇ。


【その、あれからさ。武を考えちゃうと、しちゃうの・・・】

【うぇっ!?】


 どきん、と心臓が跳ねる。
 そういう話題だけどさ・・・赤裸々だよ。
 伝わってくる熱が駆け巡り目眩を呼び始める。
 思わず彼女の顔を見た。
 ずっと正面を向いて独白していた。
 その表情は思い詰めたように硬い。


【日曜日・・・今日まで我慢、だったのに。それなのに、考えただけで、何度も・・・】

【・・・】

【お願い! 私のぜんぶ、受け入れて!】

【!?】


 香は唐突にがばっと俺の首に抱きつき、そのまま体重をかけた。
 俺は抵抗もできず後ろに押し倒された。
 え!?


【ん!!】

【~~~!!】


 考える間もなく唇を塞がれて。
 感じていた熱が密着した肌から全身を駆け巡り。
 びくんと何かが走るたび身体が跳ね、全身から力が抜けてしまう。
 じたばたと暴れても何もできない。
 ああ、それ駄目!
 男からとか女からとか、そういう問題じゃなくて!
 こんなん俺、何もできねぇよ!


【ん・・・ぅん・・・ん・・・】


 ・・・長い口づけだった。
 香の舌が入ってきて、敏感な箇所に触れられて、何度も身体が跳ねた。
 全身に電気が走りそのたびに力が奪われていく。
 でも上から抑えられているから俺が感じていると伝えるだけだった。

 ぼうっとしてきて、何がなんだかわからなくなって。
 完全に脱力して身体が動かせなくなった頃に彼女は唇を離してくれた。
 つうっと細い筋がふたつの唇を結んでいた。


【はぁ・・・武・・・】

【はぁ、はぁ・・・】


 吸い込まれるような潤んだ瞳。艶のある声。
 上気した顔に熱くなった頭が更に沸騰する。
 俺はただ荒い呼吸を繰り返すだけ。
 このまま彼女の思う通りになると、漠然と理解した。


【共鳴してると、駄目、だよね。私に、させて・・・】

【うえ?】

【優しく、するから・・・】


 それは男女逆。
 そんなぼやきを口にできる余裕さえなく。
 ぼうっとした意識の中、服のボタンが外されていき・・・。


【できるところまで、しよ・・・】

【・・・ぅあ・・・】


 顕になった彼女の絹のような肌を目に収めて。
 覆いかぶさる香が唇を重ね、地肌を重ね、這い回る手や双丘の柔らかい感触を全身で感じたあたりで、駆け巡った熱にあっけなく俺の意識は刈り取られた。


 ◇


 それから何度か。
 意識が戻るたびに彼女の想いを全身で受け止めた。
 都度、文字通り頭が真っ白になる。何度も飛ばされた。
 その・・・物理的に最後まで致すところまでは至らなかった。
 俺があまりに飛びすぎるから。

 生まれたままの姿で抱き合って。
 首筋や身体に接吻を繰り返し。
 優しく腕を、脚を愛撫して。
 とにかく我慢してきたぶんを取り戻そうと彼女は繰り返した。
 俺は夢遊病者のように記憶が曖昧だった。
 ただ伝わってくる熱く切ない想いが俺の心を強く揺さぶっていたことだけが記憶に焼き付いた。


【はぁ・・・はぁ・・・】

【ん・・・】

【・・・香を、感じる】


 身体を駆け巡る甘い疼きは、俺の力を奪うたびに迸るような熱い香の気持ちを伝えてくる。


【私、今、とっても幸せ。全身で貴方を感じられる】


 普段は出さないようなか細い声で、俺だけに聞こえるように彼女は囁く。
 まるでこの小さな空間だけが世界のすべてになったかのような錯覚さえ覚える。


【その、ごめん。してもらってばかりで】

【どうして?】

【え、男ってリードするもんだろ】

【ね、前から思ってたんだけど】

【うん?】


 俺の腕枕で密着した状態。
 俺は全身が沸騰して力が入らないまま。
 香は俺の身体を撫で回しながら。
 身体が冷えないようにふたりで布団を被っていた。


【貴方って考え方が旧人類。いつの時代から来たのって思う】

【え?】

【今の時代、性差なんて子作りくらいでしか気にされないよ】

【え?】

【そうやって男が女がって。同世代で言ってる人、いた?】

【・・・】


 どうだっけ。
 体格差、力強さでは耳にしたけれど。
 恋愛においてそんな事を言っていなかった気がする。
 これまで見たバレンタインも男女が相互に渡していたように思う。

 指摘される通りだ。
 ほんとうに今更ながら、俺は感覚がずれていることを自覚した。
 そもそもリアルでさえデスクワークが蔓延ってあまり身体を動かさない世界だ。
 性差なんて一部の力仕事にしか発生しない。
 色々な技術が発達したこの世界なら尚更だろう。


【私が貴方を押し倒したからって。おかしいことじゃないの】

【そう、なんだ】

【うん。だってそうしないと1番になんてなれない】


 そうかも。
 相手に想いを届けないとレゾナンスは生まれない。
 レゾナンスを求め、皆、相手へ近づく。
 単なる快感ならひとりで頑張ればいい。
 それ以上の幸福を求めるからレゾナンスなのだ。
 そしてその頂点がエクシズムだ。

 ああ。
 結局、俺は俺自身の価値観に振り回されてるだけなのか。
 女性だから美しい、男性だから強くあれ。
 男からリードする、女だから守られる。
 ホモやレズは不合理だ、トランスセクシャルは冒涜だ。
 そんなもの、LGBTという言葉が無い時点で放棄するべきだったんだ。


【気持ちを交わすのに、男女なんて関係ないもの】

【うん】

【ほら、私の気持ち。全身で感じるよね。もっと感じて】


 また、彼女が上にのしかかる。
 俺の首筋をつう、と舐め上げる。
 頭から顔から、優しく撫で回される。
 駆け巡る白い何かに頭を蹂躙され、ばちばちと意識が刻まれる。


【うぁ・・・!】


 声が出てる、と思う。
 自分の意思じゃない。
 時折、白い何かに混ざった青い何かが駆けると、彼女の熱い想いが伝わってくる。
 大好き、触りたい、感じたい、気持ちいい、一緒になりたい。
 その流れ込む想いが俺の意識を溶かす。
 紅茶に溶けるミルクのように徐々に彼女と一体になっていく。
 びくびくと痙攣して視界がホワイトアウトした。


【はぁ、はぁ、はぁ・・・】


 荒い呼吸。
 それが自分自身のものだと自覚するのでさえ時間がかかった。


【・・・飛ばなくなってきた】

【・・・んあ?】

【私と深く共鳴して混ざり合ってるから】


 そうなの?
 飛んでるのか一時的なのか、まったくわからん。
 ただ、ぐるぐると渦巻く水色の何かに意識を包まれ弄ばれている。
 濁流に呑まれる木の葉のようだ。


【暖かい、貴方とのレゾナンス。夢みたいに気持ち良い】

【ん、俺も】


 なんだかこのまま溶けて無くなりそうだ。
 まだ身体ではいちばん深くで繋がっていないというのに。
 心は深く繋がっているのを感じる。
 既に普通のでは満足できないであろうという予感がする。


【あのね】

【うん】

【貴方は無防備。さっき言った価値観のせいだと思う】

【ん・・・】

【だって、共鳴のことが頭に無いもの。この間までAR値がゼロだったから仕方ないのかもしれないけれど】


 そっか。そういう見解で理解してくれてたのか。
 だから俺は旧人類の考え方で動いていたと。


【でもね、少しでも共鳴しちゃったら貴方はされるがままになっちゃう】


 無防備。
 いや、誘惑されるとか、そういうのからは逃げてると思うんだが。たぶん。
 ラリクエ攻略という別の理由もあったし。
 でも何かのきっかけで共鳴したら駄目だ。

 アングラ漫画でヤクをキメさせられて回される少女。
 される時は今のこんな感じなのかもしれん。
 ダメ! 絶対!!
 つまり俺、シャブ漬けされる側かよ。
 笑えねぇ。


【貴方は物じゃない】

【うん】

【貴方のことを理解していない、ふざけた協定や身体目的の奴らに貴方を渡したくない】


 嫉妬? いや、違う。
 独占欲? これも違う。
 何だろう、この気持ちは。
 彼女から苛立ちや怒りのような情動が伝わってくる。


【ね、私は貴方が選んでほしいと思うの】

【俺が?】

【うん。貴方が心から一緒にいたいと想う相手】

【心から】

【うん。そう想う人なら私も良い】

【わかった】

【だから流されないで、目先の快楽や状況に。貴方の心で選んで】


 ぎゅうっと、彼女はまた俺を抱きしめてくる。
 また全身に熱い水色が巡る。
 慈しむ心。相手の幸せを願う純粋な想い。
 これは、よく知っている。
 ほんとうに心地良い。包まれるような暖かい想い。
 愛情だ。
 ああ、香・・・。


【約束する。自分で選ぶから】

【心配だなぁ】

【そんなに信用ない?】

【うん】

【ええ・・・】


 言葉とは裏腹に、心地良い。
 ああ、安心する。
 彼女と深いところで一緒になっていた。


【ね、そう想う人ができたら連れてきて】

【ん? 香のとこに?】

【うん。1番として見定めてあげる】


 そもそも複数人を好きになるという状況が想像できない。
 これも価値観の問題か。許容できるのか、俺?

 いや、許容してるな。今は雪子と香、ふたりを愛してるじゃないか。
 でも別世界という認識だし同時じゃない。
 世のハーレムを築いてる奴はいったいどういう神経をしているのか。

 とにかくそういう事態になったら連れていくことは意識しておこう。
 心理的なストッパーの意味でも俺の心の拠り所にできそう。


【ありがと、お願いするよ】

【ん!】


 伝えたいことは終わったのか。
 彼女は口づけで返事をして、俺の胸の上で落ち着いた。


【感じる、貴方のぜんぶ】


 胸に耳を押し付けて。鼓動を聞いているのか。
 ずっと共鳴に晒されていて、途切れること無く身体が熱い。
 目眩はそこまでないけども高熱で魘されるときのような感じだ。
 じんじんと神経が昂り刺激が走れば火薬でも点火したかのように跳ねる。
 要するに動けない。
 されるがままだった。


【2週間分だから。このまま夕食まで、ね♪】

【ん・・・】


 俺に選択肢はない。
 彼女の想いをただ受け止め、身体で、心で理解する。
 そんな彼女のことを愛しいと感じていた。
 幸せな熱病で朦朧とした時間はまだ続いていた。


 ◇


 南極帰りのリハビリを思い出していた。
 膝に力が入らず崩れ落ちるあの屈辱。
 生まれたての子鹿みたいな震え。
 全身をフルリセットしたあの感覚。


【ねぇ、大丈夫?】

【ん、なん、とか】


 終わってシャワーを浴びようという時。
 俺はなかなか立ち上がれなかった。


【ははは、なんだこれ・・・】


 身体に残った熱。
 未だにぱちぱちと身体のあちこちで弾ける。
 その度にびくびくと全身が跳ねる。
 電気刺激みたいだな。
 全身が笑って力が入らねぇ。


【支えるから。ほら】

【ありがとう】


 俺は情けないことに香に支えられてようやく立ち上がった。
 一体どうしたってんだ。
 こんなに身体が言うことを聞かなくなるなんて。

 支えてもらったまま、何とかシャワーを浴びる。
 熱い雫が心身をリセットしていく。
 少しずつ身体が言うことを聞くようになる。
 それでも熱は残り続け弾ける熱はたまにぱちぱちと体を弄んだ。
 レゾナンス効果の残滓なのだろう。


【ちょっと聞いていい?】

【なあに?】

【その、共鳴してるときって、身体が弾けるような刺激ってある?】

【・・・うん。強く響いてるときに、たまにぱちんって。意識を持っていかれそうになる】

【そっか】

【武がびくってしてる時、そうなってるんだよね】

【うん。ちょっと情けないんだよなぁ。されっぱなし】

【ん、良いんじゃない? 気持ちいいんだし!】

【へ?】


 いきなり調子が軽くなった。
 思わず【へ?】って出ちゃったよ。


【だってさ、想いが魔力として共鳴してる結果でしょ。考えるだけで嬉しいじゃない!】

【まぁ、うん】

【それだけ感じられるのも才能だよ! 誇っていい!】

【ええ!?】

【私のこと、私より感じてるんだよ? 羨ましすぎる!】


 シャワーの雨の中、香がぎゅうと抱きついてくる。
 当然に共鳴が強くなり、また身体がびくびくとする。


【ああ、止めて! せっかく立てたのに!】

【あっはっは! ほんと羨ましいぞ! 私ももっと感じさせろ!】

【や、やめやめー!!】


 そのまま散々に悪戯されて。
 熱めのシャワーだからって、まさかのぼせるとは思わなかった。 


 ◇


 時間がなかったので簡単な夕食を口にする。
 緑峰駅へ来た頃には20時前になっていた。


【もう終わっちゃったぁ~・・・】

【はは、また2週間後にね】


 ほんとうに泣きそうで寂し気に呟く香を抱きしめてやる。
 まだ身体に残っていた熱が少し弾け、びくんとしてしまう。
 でも彼女の身体はしっかり腕に埋めてあげる。


【ん、少し、このまま・・・】

【うん】


 香は大人しく俺に抱かれていた。
 ぐいぐいと顔を押しつけてスンスンと匂いをかぎながら。
 たまにわんこ的な一面があるのって、こういうこと?


【ほら、満足した?】

【するわけないじゃん! デザート! あと1時間は要る!】

【長すぎ】


 ポニーテールをわしわしと弄んで気を散らしてやる。
 さすがに鬱陶しくなったのか香は身体を離した。


【次はね、ぜんぶできるように頑張ろ!】

【ここで言わなくても】


 外で話すことじゃない。
 そう思って赤くなった俺を黒い瞳が映していた。
 ちょっと見惚れた俺を隙ありと思ったのか、彼女はキスをしてきた。


【私はいつでも貴方のこと、本気だよ】

【ん、俺もだ】

【だから! 私の気持ち忘れないでね!】

【はは、身体で覚えたよ】

【私も!】


 名残惜しんでいるところに電車が到着するアナウンスが響く。
 このまま惜しんでいると帰れなくなってしまうので俺は乗り口へ急いだ。


【それじゃ。またな】

【うん。貴方ならできるよ、頑張って!】


 歓迎会のことかな。小さな激励に俺は笑顔で応えた。

 日曜日の少し遅い時間だからか、電車はがらがらだ。
 電車に乗り込み、窓からホームに立つ彼女に小さく手を振る。
 彼女もその手を振り返してくれる。
 お互いに見えなくなるまでずっと手を振っていた。


 ◇


 想い人が見えなくなってしばらくしてから席に座った。
 香、名残惜しいのは俺も同じだ。我慢してくれよ。

 今日は良い1日だった。2週間先まで待てばまたこんな1日を過ごせる。
 そう思うと何があっても頑張れる気がした。

 窓の外を街の光が流れている。
 何気ないその流れを見て落ち着いたところで大きな喪失感があることに気付いた。
 何だこれ。不安?
 心の中にぽっかりと穴が開いたような感じ。
 さっきまで当然にあったのにいきなり抜き去ってしまったような・・・。

 ああ、これ。
 香と深く共鳴した名残だ。
 循環した香の魔力が行き先を失って飛んで行ってるんだな。
 「深く共鳴すると離れたときに違和感がある」
 そんな説明を聞いたことがある気がする。
 これがそうなんだ。
 なるほど。不思議な感覚だ。

 ・・・共鳴といえば、これだけ香と繋がったんだから染まったんだろうな。
 初めての病院の時は服越しに数時間。今回は地肌で接触して数時間。
 愛情を数字で測るなんて無粋な気がするんだけども。
 どれだけ愛情を積み重ねられたのかっていう点では知りたい気もする。
 レゾナンスの測定器、本気で探してみよう。

 さぁ、明日からまた具現化の訓練だ。
 朝練もして丹撃もできるように頑張ろう。






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