5 / 62
ドキドキの中学1年生
005
しおりを挟む
改めて攻略ノートに計画したとおりに動くことにした。
まずは身体作り。
朝は5時起床。
すぐにストレッチして軽くジョグで土手を走る。
1時間で帰ってきて、筋トレを30分。
その後シャワーを浴びて7時に食事。
これで運動部をやってる連中と同じくらいは動いてるはずだ。
放課後は18時まで自由時間。
部活はこの時間に当てる。
当面はAR値の調査に費やすことになりそうだ。
夕食後、風呂が混むのでギリギリの20時50分くらいに入る。
そこまでは学校の課題をやる。
実は桜坂中学って難関高校も視野に入る進学校だ。
だから課題の量も多い。毎日1時間はかかる。
成績トップを目指すのだから課題は当たり前にやる。
で、入浴後の時間。
ここは世界語の勉強を中心に追加の勉強だ。
恐らく朝が早いので夜は眠い。
なので遅くても0時と決めて頑張れるだけやる。
語学みたいに記憶するのが中心の勉強は寝る前がよく覚えられるって言うしね。
正直、リアルの学生時代はこんなに頑張れなかった。
とにかく楽しく過ごしていた俺だ。
ただ四十路まで生きてみると学生時代の後悔というか「ああしておけば」というものを抱くようになった。
え、あるよね、皆? ない? リア充爆発しろ!
とにかく、若ければ若いほど、費やした時間的比重による価値が高まり輝くと思うんだ。
こうやってもう1度、機会が与えられたんだ。やろうってもんだろう。
AR値で悩んでも始まらない。出来ることからやる。
動いたほうが結果もついてくる!!
◇
なんて思っていた自分がいた。
眠ぃ、眠すぎるよ・・・。
世界語の授業が頭に入らねぇ・・・。
早起きなんてすんじゃなかった。
考えてみりゃ睡眠時間5時間だよ。
成長期にすることじゃねぇ。
「・・・さん、京極さん」
身体が揺さぶられて目が覚める。
周りには人が少ない。
げ、昼休みじゃん!?
「九条さん、起こしてくれてありがとう!」
「またお疲れなのですね?」
「メンタル弱くてさぁ、寝付けないんだ」
なんで俺は九条さんに起こされてばっかなんだ。
情けねぇ・・・。
「とにかく食堂に行こう。食べ損ねちまう」
「はい、行きましょう」
もういっそ、九条さんに目覚まし役を頼むか?
いやいやいや、九条さん幼馴染ポジションじゃねぇんだから!
俺の身体を慣らしていくしかねぇ。
お昼は俺がハンバーグ定食、九条さんはパスタを選んだ。
九条さん、寮が和食だからパスタなんだよね?
同じので飽きないのかな。
「ところで、九条さんは弓道部で決まり?」
「はい。ここは設備が良いので練習に身も入りそうです」
「なるほど、良かった」
「京極さんは決めたのですか?」
「俺は具現化研究同好会にしたよ」
「え? そんな部活動あるのですね?」
「同好会だしな。部員も先輩ひとりしかいねぇ」
「ふたりきり、なのですね・・・」
ん? なんか含みない?
あの残念先輩だとラブロマンスの破片もねぇぞ?
そもそも男も女とも分からねぇじゃねぇか。
・・・て、自意識過剰だな、俺。
「あー、ほら。ホントは勉強したかったからさ、帰宅部にしたいんだ。でも活動してるとこにすると迷惑かかるから小さいとこにしたんだ」
「そうなのですね。その・・・夜遅いのは勉強されてるのですか?」
「そうそう。落第しないように必死だよ」
げっ! 言ってから、さっき寝付けないからって言い訳したのと矛盾してることに気付いた。
やばい、考えなしすぎるぞ俺。
・・・九条さんは気付かなかったようで、納得したように何も言わない。
まぁ部屋で俺が何をやっていようが彼女には関係がない。
寝不足だけ気をつけるようにしよう。
一昨日、高天原宣言したからな、俺が勉強漬けでも不自然じゃない。
AR値のことが知られないようにしないとな。
◇
AR値。
正式名称、適合値(Adaptation Ratio)。
人類に宿った魔力が、身体にどれだけ適合しているかを示す値だ。
生まれながらに適合している人類を、新人類と呼ぶ。
この呼称は、魔物へ復讐する力のある者たちへの、復讐者としての期待と畏怖を込めて設定された。
現状、2158年の大惨事の後に生まれた世代は皆、新人類とされている。
何せ、誰もが多かれ少なかれ魔力適合しているからだ。
これは世界に魔力が撒き散らされた後に生まれたせいであると考えられていた。
ただし、魔力を実際に使うには相応の適合を要する。
実際に目に見えるかたちで魔力を発現できるのはAR値15前後から。
殺傷能力があるとされるのは30から。
だから新人類の尖兵として魔物と戦う者には、分かりやすく適合値の高さが求められる。
なお新人類の平均値は11.2らしい。
「ーーって、基本的なことだよな」
昨晩、検索で調べた内容を披露した上で俺は確認する。
「うん、そうだね。だから君、京極君がAR値ゼロって何か間違いじゃないかなって思うんだ」
「ゼロってのは今まで居なかったのか?」
「私が知ってる限りはね」
放課後。
俺は部活動の時間に具現化研究同好会に来ていた。
目的はもちろん、AR値を上げる方法を探すためだ。
「そもそも魔力適合って何だろな」
「わたしは気功、チャクラとか、そういった身体の気脈だと考えてるよ」
「でもそれだと誰でも身体の気脈ってありそうだから、AR値が強い弱いって関係なくね?」
「科学的にヒトの細胞レベルで検証したらしいんだ。ほら、このアメリカの論文。具現化の前後や、旧人類・・・2158年以前の生まれの人と比べて、同じだって」
「本当だ。じゃあ、物理的、電磁的な何かじゃないんだな」
「うん。だから気脈説を推してる」
「うーん・・・それだったらもっと昔からありそうなんだよな」
昨日、検索をした限りではそんな事例は無かった。
明らかに大惨事以降に生まれた能力だった。
「魔力が強い人って、オーラみたいに見えるんだよな?」
「そういう話もあるね。本当かどうかは分からないけど」
具現化する前の状態で魔力が見えるかどうか。
人のオーラが見えるかどうかって話だ。
でもそれはAR値の高い人間にしか分からない。
だからAR値が高い人が口を揃えて「見える」って言ってしまえば検証のしようがない。
そういう意味で魔力の存在は研究されてはいるものの、科学的にあるかどうか分からないと言われている。
「ところで京極君。そのテクスタントで検索をできるようにしてあげよう」
「うん? これって勉強以外のことを検索できないんじゃ?」
「ふっふっふ。私を誰だと思っているのかね」
そういうと先輩は俺のテクスタントをあれこれいじりだす。
管理者権限的な何かを動かして設定をしているようだ。
・・・学校配布の端末でどうやってんだ・・・ハッカーなのかこの人。
設定が終わったのか、端末を手渡してきた。
「はい。これでAR値関連の検索ができるようになるよ」
「ありがとう。そういう制限も入ってんだな」
「うん。色々と規制が多いからね。リア研には解除必須だよ~」
なんかこうやって話をしてみると普通に研究してんだよな。
昨日の先輩は一体、何だったのか・・・。
「あ、京極君。これ、食べる?」
「お菓子か、有り難くいただくよ」
透明なパッケージに入ったチョコ菓子だ。
こういう小分けの入れ物が、プラスチックからこのサラサラの謎材質に置き換わってるんだな。
どうして急にお菓子なのか。マイペース過ぎる。
その後、先輩と魔力についての議論をあれこれと重ねた。
俺が知っている限りのファンタジー設定を挙げてみたけれど、どれもしっくりこない。
だって大抵のファンタジー世界って科学発達してないじゃん?
科学と相性が悪いんだよな。
◇
寮に帰るとすぐに夕食だった。
その後、予定通り課題をこなす。
最後にこっそり風呂に入って部屋に戻る。
さてここからなんだが・・・予想通り眠すぎる。
昼間寝たのにどうして眠ぃんだ・・・。
これ、身体が慣れてくれば眠くなくなんのかな?
もし8時間睡眠必須とかだったらヤバいぞ、何もできん。
ともかく寝てしまう前にやろう・・・世界語。
・・・
◇
・・・
ピピピピ・・・
はっ!
うお、まさかの机に突っ伏して朝を迎えるの図。
駄目だ・・・これじゃ勉強にならねぇ。
ベッドで寝てねぇから体力の回復もイマイチだ。
いつになったら身体が慣れるんだ・・・。
くそ、身体が痛い・・・。
5時かぁ・・・二度寝してぇ・・・。
・・・頑張れ俺、生死がかかってるんだ。
走りに行くぞ!
薄暗い朝の冷たい空気が肺に満ちると目が覚める。
昨日走ったコースと同じ土手コースだ。
このあたりは街路樹が綺麗に並んでおり、河川敷も運動場で使われるくらい広い。
良いよなこの場所。俯瞰できて冷静にもなれる。
ぼーっとしたい時はここに来よう。
見渡してみるとこうして朝から走ったり散歩している人は多くない。
日本の人口も相当減ってるからな。
今、1千万くらいだっけ? 少子化もびっくり。
大惨事の爪痕がこういうところに如実に残っているわけだ。
寮に戻ってシャワーを浴びる。
制服に着替えようとして気付いた。
今日、土曜日じゃん・・・学校休みだよ!
ずっと寝てられんじゃん、パラダイスじゃん!
必死過ぎて忘れてた。
よし、食べたら二度寝だ。
食堂に行くと私服で食べてる人が大半。
一部、制服や体操服の人は部活で学校へ行くんだな。
俺は今日、寝るんだ・・・!
「おはようございます、京極さん」
「んあ、おはよう」
眠そうにやる気がない様子の俺に声をかけてくれるのは九条さん。
ほんと礼儀正しいし良い子だよな。
喋る時は軽い会釈までしてくれるから癒されるよ。
「今日はどうされるのですか?」
「えっと・・・午前中はだらだらするよ。眠いんだ・・・」
「ふふ、いつもお疲れですね」
ほんとだよ、意図せずこうなってんだよ。
体力のつけかた教えてくれよ・・・。
「九条さんは?」
「わたしは散歩します。まだ越してきたばかりで街のこと知りませんから」
「そっか。川岸の土手はもう歩いた? あそこからだと学校と桜がよく見えるよ」
「そうなのですね。行ってみます!」
学校との往復だと反対側って行かないからな。
俺の唯一のお気に入りだ、楽しんでもらいたい。
部屋に戻った俺は予定通り二度寝する。
そうだよ、週1でこうやって寝溜めすれば身体も回復する!
当面はこれだ!
てことでおやすみぃ・・・
◇
・・・
コンコン・・・
ん?
・・・この控え目なノックは九条さんかな?
散歩に行ったはずじゃ?
さっき寝たばかりなのになぁ。
・・・外の日が高い。
もしかして結構、時間が経った?
げ、もう12時じゃん!
「はい、起きてます!」
扉を開けるとやはり九条さんだった。
何度目だよこのパターン。やっぱり目覚ましに立候補してもらおうかな・・・。
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」
「いや、起きてゴロゴロしてたとこだよ」
嘘です、今さっきまで寝てました。
「えっと、外食、ご一緒しませんか? 土日はお昼がありませんから」
「うん、行こう行こう。ちょっと待って」
上着を羽織って少しだけ髪を整える。
顔を洗って財布代わりのカードを持って準備OK。
リアルでもカード1枚でいけるけど、ほぼ全ての会計を1種類のカードってところまでは来てない。
そういう意味で未来感が溢れるな。
ふたりで並んで歩くとやたら視線を感じる。
これは九条さんだな・・・。
アルビノって日本じゃインパクトあるからなぁ。
ただでさえ色白美少女だ。
この整った顔つきってだけでも惹かれてしまう。
俺がただの中学生なら告白して玉砕コースだな。
入った店はおしゃれパスタ屋さん。
九条さんが午前中に散歩して見つけたそうだ。
うんうん、ひとり飯はレベル高いしね。中学生なら尚更。
「パスタ、好きなんだね」
「はい、実家ではいつも和食でしたから。外では洋食にしたいのです」
でも毎回パスタじゃない? どして?
「中華料理とかは食べない? 麻婆豆腐とか炒飯とか」
「あんな唐辛子漬けの食べ物なんて邪道です!!」
えええ、何この拒絶反応。なんか地雷踏んだ?
というより辛いもの嫌い?
「もしかして、辛いものが?」
「・・・はい、お恥ずかしながら」
「和食ばかり食べていたから唐辛子が苦手?」
「そうなのです・・・ちょっと子供っぽくて嫌なのですが」
てへっ、と舌を出す姿も絵になる。可愛い。
ゲームなら一枚絵のシーンだろこれ。
・・・なんか苦手って聞くと悪戯したくなる。
今日はしないよ? またいずれ・・・
九条さんの気遣いのお陰で、寝て終わるだけだった休日に彩りができた。
ありがとう、さすがヒロイン!
友達宣言して良かった・・・!
◇
こうして休日をだらけることで、俺は生活リズムを何とか整えていった。
2週間も過ぎる頃には夜まで寝落ちすることはなくなった。
問題は、その間に授業で寝てしまった世界語が出遅れてしまったことなんだが・・・。
まずは身体作り。
朝は5時起床。
すぐにストレッチして軽くジョグで土手を走る。
1時間で帰ってきて、筋トレを30分。
その後シャワーを浴びて7時に食事。
これで運動部をやってる連中と同じくらいは動いてるはずだ。
放課後は18時まで自由時間。
部活はこの時間に当てる。
当面はAR値の調査に費やすことになりそうだ。
夕食後、風呂が混むのでギリギリの20時50分くらいに入る。
そこまでは学校の課題をやる。
実は桜坂中学って難関高校も視野に入る進学校だ。
だから課題の量も多い。毎日1時間はかかる。
成績トップを目指すのだから課題は当たり前にやる。
で、入浴後の時間。
ここは世界語の勉強を中心に追加の勉強だ。
恐らく朝が早いので夜は眠い。
なので遅くても0時と決めて頑張れるだけやる。
語学みたいに記憶するのが中心の勉強は寝る前がよく覚えられるって言うしね。
正直、リアルの学生時代はこんなに頑張れなかった。
とにかく楽しく過ごしていた俺だ。
ただ四十路まで生きてみると学生時代の後悔というか「ああしておけば」というものを抱くようになった。
え、あるよね、皆? ない? リア充爆発しろ!
とにかく、若ければ若いほど、費やした時間的比重による価値が高まり輝くと思うんだ。
こうやってもう1度、機会が与えられたんだ。やろうってもんだろう。
AR値で悩んでも始まらない。出来ることからやる。
動いたほうが結果もついてくる!!
◇
なんて思っていた自分がいた。
眠ぃ、眠すぎるよ・・・。
世界語の授業が頭に入らねぇ・・・。
早起きなんてすんじゃなかった。
考えてみりゃ睡眠時間5時間だよ。
成長期にすることじゃねぇ。
「・・・さん、京極さん」
身体が揺さぶられて目が覚める。
周りには人が少ない。
げ、昼休みじゃん!?
「九条さん、起こしてくれてありがとう!」
「またお疲れなのですね?」
「メンタル弱くてさぁ、寝付けないんだ」
なんで俺は九条さんに起こされてばっかなんだ。
情けねぇ・・・。
「とにかく食堂に行こう。食べ損ねちまう」
「はい、行きましょう」
もういっそ、九条さんに目覚まし役を頼むか?
いやいやいや、九条さん幼馴染ポジションじゃねぇんだから!
俺の身体を慣らしていくしかねぇ。
お昼は俺がハンバーグ定食、九条さんはパスタを選んだ。
九条さん、寮が和食だからパスタなんだよね?
同じので飽きないのかな。
「ところで、九条さんは弓道部で決まり?」
「はい。ここは設備が良いので練習に身も入りそうです」
「なるほど、良かった」
「京極さんは決めたのですか?」
「俺は具現化研究同好会にしたよ」
「え? そんな部活動あるのですね?」
「同好会だしな。部員も先輩ひとりしかいねぇ」
「ふたりきり、なのですね・・・」
ん? なんか含みない?
あの残念先輩だとラブロマンスの破片もねぇぞ?
そもそも男も女とも分からねぇじゃねぇか。
・・・て、自意識過剰だな、俺。
「あー、ほら。ホントは勉強したかったからさ、帰宅部にしたいんだ。でも活動してるとこにすると迷惑かかるから小さいとこにしたんだ」
「そうなのですね。その・・・夜遅いのは勉強されてるのですか?」
「そうそう。落第しないように必死だよ」
げっ! 言ってから、さっき寝付けないからって言い訳したのと矛盾してることに気付いた。
やばい、考えなしすぎるぞ俺。
・・・九条さんは気付かなかったようで、納得したように何も言わない。
まぁ部屋で俺が何をやっていようが彼女には関係がない。
寝不足だけ気をつけるようにしよう。
一昨日、高天原宣言したからな、俺が勉強漬けでも不自然じゃない。
AR値のことが知られないようにしないとな。
◇
AR値。
正式名称、適合値(Adaptation Ratio)。
人類に宿った魔力が、身体にどれだけ適合しているかを示す値だ。
生まれながらに適合している人類を、新人類と呼ぶ。
この呼称は、魔物へ復讐する力のある者たちへの、復讐者としての期待と畏怖を込めて設定された。
現状、2158年の大惨事の後に生まれた世代は皆、新人類とされている。
何せ、誰もが多かれ少なかれ魔力適合しているからだ。
これは世界に魔力が撒き散らされた後に生まれたせいであると考えられていた。
ただし、魔力を実際に使うには相応の適合を要する。
実際に目に見えるかたちで魔力を発現できるのはAR値15前後から。
殺傷能力があるとされるのは30から。
だから新人類の尖兵として魔物と戦う者には、分かりやすく適合値の高さが求められる。
なお新人類の平均値は11.2らしい。
「ーーって、基本的なことだよな」
昨晩、検索で調べた内容を披露した上で俺は確認する。
「うん、そうだね。だから君、京極君がAR値ゼロって何か間違いじゃないかなって思うんだ」
「ゼロってのは今まで居なかったのか?」
「私が知ってる限りはね」
放課後。
俺は部活動の時間に具現化研究同好会に来ていた。
目的はもちろん、AR値を上げる方法を探すためだ。
「そもそも魔力適合って何だろな」
「わたしは気功、チャクラとか、そういった身体の気脈だと考えてるよ」
「でもそれだと誰でも身体の気脈ってありそうだから、AR値が強い弱いって関係なくね?」
「科学的にヒトの細胞レベルで検証したらしいんだ。ほら、このアメリカの論文。具現化の前後や、旧人類・・・2158年以前の生まれの人と比べて、同じだって」
「本当だ。じゃあ、物理的、電磁的な何かじゃないんだな」
「うん。だから気脈説を推してる」
「うーん・・・それだったらもっと昔からありそうなんだよな」
昨日、検索をした限りではそんな事例は無かった。
明らかに大惨事以降に生まれた能力だった。
「魔力が強い人って、オーラみたいに見えるんだよな?」
「そういう話もあるね。本当かどうかは分からないけど」
具現化する前の状態で魔力が見えるかどうか。
人のオーラが見えるかどうかって話だ。
でもそれはAR値の高い人間にしか分からない。
だからAR値が高い人が口を揃えて「見える」って言ってしまえば検証のしようがない。
そういう意味で魔力の存在は研究されてはいるものの、科学的にあるかどうか分からないと言われている。
「ところで京極君。そのテクスタントで検索をできるようにしてあげよう」
「うん? これって勉強以外のことを検索できないんじゃ?」
「ふっふっふ。私を誰だと思っているのかね」
そういうと先輩は俺のテクスタントをあれこれいじりだす。
管理者権限的な何かを動かして設定をしているようだ。
・・・学校配布の端末でどうやってんだ・・・ハッカーなのかこの人。
設定が終わったのか、端末を手渡してきた。
「はい。これでAR値関連の検索ができるようになるよ」
「ありがとう。そういう制限も入ってんだな」
「うん。色々と規制が多いからね。リア研には解除必須だよ~」
なんかこうやって話をしてみると普通に研究してんだよな。
昨日の先輩は一体、何だったのか・・・。
「あ、京極君。これ、食べる?」
「お菓子か、有り難くいただくよ」
透明なパッケージに入ったチョコ菓子だ。
こういう小分けの入れ物が、プラスチックからこのサラサラの謎材質に置き換わってるんだな。
どうして急にお菓子なのか。マイペース過ぎる。
その後、先輩と魔力についての議論をあれこれと重ねた。
俺が知っている限りのファンタジー設定を挙げてみたけれど、どれもしっくりこない。
だって大抵のファンタジー世界って科学発達してないじゃん?
科学と相性が悪いんだよな。
◇
寮に帰るとすぐに夕食だった。
その後、予定通り課題をこなす。
最後にこっそり風呂に入って部屋に戻る。
さてここからなんだが・・・予想通り眠すぎる。
昼間寝たのにどうして眠ぃんだ・・・。
これ、身体が慣れてくれば眠くなくなんのかな?
もし8時間睡眠必須とかだったらヤバいぞ、何もできん。
ともかく寝てしまう前にやろう・・・世界語。
・・・
◇
・・・
ピピピピ・・・
はっ!
うお、まさかの机に突っ伏して朝を迎えるの図。
駄目だ・・・これじゃ勉強にならねぇ。
ベッドで寝てねぇから体力の回復もイマイチだ。
いつになったら身体が慣れるんだ・・・。
くそ、身体が痛い・・・。
5時かぁ・・・二度寝してぇ・・・。
・・・頑張れ俺、生死がかかってるんだ。
走りに行くぞ!
薄暗い朝の冷たい空気が肺に満ちると目が覚める。
昨日走ったコースと同じ土手コースだ。
このあたりは街路樹が綺麗に並んでおり、河川敷も運動場で使われるくらい広い。
良いよなこの場所。俯瞰できて冷静にもなれる。
ぼーっとしたい時はここに来よう。
見渡してみるとこうして朝から走ったり散歩している人は多くない。
日本の人口も相当減ってるからな。
今、1千万くらいだっけ? 少子化もびっくり。
大惨事の爪痕がこういうところに如実に残っているわけだ。
寮に戻ってシャワーを浴びる。
制服に着替えようとして気付いた。
今日、土曜日じゃん・・・学校休みだよ!
ずっと寝てられんじゃん、パラダイスじゃん!
必死過ぎて忘れてた。
よし、食べたら二度寝だ。
食堂に行くと私服で食べてる人が大半。
一部、制服や体操服の人は部活で学校へ行くんだな。
俺は今日、寝るんだ・・・!
「おはようございます、京極さん」
「んあ、おはよう」
眠そうにやる気がない様子の俺に声をかけてくれるのは九条さん。
ほんと礼儀正しいし良い子だよな。
喋る時は軽い会釈までしてくれるから癒されるよ。
「今日はどうされるのですか?」
「えっと・・・午前中はだらだらするよ。眠いんだ・・・」
「ふふ、いつもお疲れですね」
ほんとだよ、意図せずこうなってんだよ。
体力のつけかた教えてくれよ・・・。
「九条さんは?」
「わたしは散歩します。まだ越してきたばかりで街のこと知りませんから」
「そっか。川岸の土手はもう歩いた? あそこからだと学校と桜がよく見えるよ」
「そうなのですね。行ってみます!」
学校との往復だと反対側って行かないからな。
俺の唯一のお気に入りだ、楽しんでもらいたい。
部屋に戻った俺は予定通り二度寝する。
そうだよ、週1でこうやって寝溜めすれば身体も回復する!
当面はこれだ!
てことでおやすみぃ・・・
◇
・・・
コンコン・・・
ん?
・・・この控え目なノックは九条さんかな?
散歩に行ったはずじゃ?
さっき寝たばかりなのになぁ。
・・・外の日が高い。
もしかして結構、時間が経った?
げ、もう12時じゃん!
「はい、起きてます!」
扉を開けるとやはり九条さんだった。
何度目だよこのパターン。やっぱり目覚ましに立候補してもらおうかな・・・。
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」
「いや、起きてゴロゴロしてたとこだよ」
嘘です、今さっきまで寝てました。
「えっと、外食、ご一緒しませんか? 土日はお昼がありませんから」
「うん、行こう行こう。ちょっと待って」
上着を羽織って少しだけ髪を整える。
顔を洗って財布代わりのカードを持って準備OK。
リアルでもカード1枚でいけるけど、ほぼ全ての会計を1種類のカードってところまでは来てない。
そういう意味で未来感が溢れるな。
ふたりで並んで歩くとやたら視線を感じる。
これは九条さんだな・・・。
アルビノって日本じゃインパクトあるからなぁ。
ただでさえ色白美少女だ。
この整った顔つきってだけでも惹かれてしまう。
俺がただの中学生なら告白して玉砕コースだな。
入った店はおしゃれパスタ屋さん。
九条さんが午前中に散歩して見つけたそうだ。
うんうん、ひとり飯はレベル高いしね。中学生なら尚更。
「パスタ、好きなんだね」
「はい、実家ではいつも和食でしたから。外では洋食にしたいのです」
でも毎回パスタじゃない? どして?
「中華料理とかは食べない? 麻婆豆腐とか炒飯とか」
「あんな唐辛子漬けの食べ物なんて邪道です!!」
えええ、何この拒絶反応。なんか地雷踏んだ?
というより辛いもの嫌い?
「もしかして、辛いものが?」
「・・・はい、お恥ずかしながら」
「和食ばかり食べていたから唐辛子が苦手?」
「そうなのです・・・ちょっと子供っぽくて嫌なのですが」
てへっ、と舌を出す姿も絵になる。可愛い。
ゲームなら一枚絵のシーンだろこれ。
・・・なんか苦手って聞くと悪戯したくなる。
今日はしないよ? またいずれ・・・
九条さんの気遣いのお陰で、寝て終わるだけだった休日に彩りができた。
ありがとう、さすがヒロイン!
友達宣言して良かった・・・!
◇
こうして休日をだらけることで、俺は生活リズムを何とか整えていった。
2週間も過ぎる頃には夜まで寝落ちすることはなくなった。
問題は、その間に授業で寝てしまった世界語が出遅れてしまったことなんだが・・・。
0
あなたにおすすめの小説
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる