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ドキドキの中学1年生
007
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5月に入った。
クラスは幾つかの集団が形成され、俺と九条さんだけがふたりだった。
ま、小学生っぽいガキに付き合わなくて済むんだから俺としては願ったり叶ったり。
勉強に打ち込めるしね。
九条さんも同じ様子だからこれで良い。
俺たちは高天原しか見てないからな!
朝の運動と夜の勉強も軌道に乗ってきた。
特に夜の勉強から世界語を外したことが大きい。
飯塚先輩さまさまだ。
お陰様で授業に追いついて追い越せた。
先輩、実はネイティブなんじゃってくらい。
いや人造言語にネイティブってなんだよ。
ディベート大会で優勝するくらいに有能なのだ。
優秀な家庭教師のお陰で何とか持ち直せた。
目下、問題はAR値。
相変わらず進展がない。
部活中、世界語ばかりやってるから進まないのもある。
こっちはどこかで考えないと。
◇
授業が終わり、週に1度のLHR。
自習かなーと思っていたら担任が板書を映した。
「オリエンテーリングがあります」
えー、やったー、と皆が沸く。
校外学習ってテンション上がるからな。気持ちは分かる。
もっとも、勉強とリア研しか興味がない俺からすると時間の無駄だ。
この世界の社会を勉強してもそんなに役に立たねぇし。
そもそも消滅しちまうかもしれねぇからな!
とは言うものの学校行事だから参加しない訳にはいかない。
内容は社会勉強という名のスタンプリレー。
この緑峰市の社会施設のうち、お題に書いてある箇所にチェックポイントがあるそうな。
ふたり一組のペアを組んで回る。
それって先頭のやつについていけば何もせずに終わるんじゃね?
と思っていたら、先生曰く、問題やルートは何パターンかあるから誰かの後ろをついて行って終わりにはならないらしい。
誤った場合や、スタンプ押せなかった場合、課題のペナルティがあるとか。それは嫌だ。
そして、学年合同行事で他クラスの人と顔つなぎの機会を作るため、ペアは知らない人らしい。
相手はランダムで決まるようなので腹をくくるしかない。
九条さんと組めないのか・・・ぼっちな俺にはきつい。
変な奴に当たりませんように!
◇
そしてオリエンテーリング当日。
スタートとゴールは学校の校庭だ。
俺とペアになったのは御子柴 諒君というさわやかイケメン。
まともに九条さん以外の人と会話するのは初めてかもしれない。
「京極ってのか。よろしくな!」
男から見てもイケメンの部類だからきっと彼はリア充路線を走るのだろう。
・・・と言っても、実は九条さんも含め、中学1年は俺にとってはガキ。
まだまだ酸っぱいお年頃だ。
可愛いとか綺麗とは思うけど、少なくとも性的興奮なんて要素は皆無。
息子の剛や娘の楓をこの間までお風呂に入れてたしね!
九条さんにどきりと何度かしたけど、あれは美術鑑賞的なやつだ・・・たぶん。
「おい京極。どうせやるならトップ取ろうぜ」
お、いいね御子柴君。
こんな俺にとって意義のないイベントの全力スルーを協力してくれるなんて!
さっさと終わらせようぜ!
「よしやろうぜ。着いてこいよ!」
社会科の問題なんて大人パワーで楽勝だぜ。
問題とスタンプシートが配られる。
こういったものは紙なんだな。皆が珍しげに触ってるあたりアナログ感が溢れてるんだろう。
ちなみに検索できないよう、テクスタントの持ち出しは禁止だ。
代わりに紙地図が配布されている。
最悪、地図上の主だった施設を回れば何とかなるのかもしれない。
スタート、と声がかかる。
競争ではないので皆、のんびりと歩きだしていた。
オリエンテーリングは昼から放課後までの3時間を使って行われる。
つまり3時間で到達できなければペナルティ確定。
このくらい余裕だろ。
「いくぞ京極。第1問:市条例を定める場所・・・条例って言えば国会だろ!」
「待てそれは違う」
走り出そうとする御子柴の首根っこを掴む。
「離せ! 国会なら東京まで行くんだろ!」
「おい冷静に考えろよ。電車に乗ってまで行くわけ無いだろ」
「え? てことは国会じゃないのか?」
「市条例って言ってんだろ・・・市議会だよ」
「市議会? ああ、市電子議事堂か」
Oh・・・行政機構が変わってらっしゃる。
旧世代の知識だと危ねぇな。
御子柴君、その訂正がすぐ出来るのに間違えたのね。
「そこだ。よし、行こう!」
「走れるか?」
「任せろ!」
ふたりでダッシュする。地図見ないと分からない俺より御子柴君が先頭のが良い。
お、御子柴君、早いね。運動部か?
毎朝ジョグしてる俺と同じくらいの速さだ。さすがイケメン。
「お、あったぜ!」
電子議事堂の入り口にチェックポイントがあった。
まだ誰もいない。ダッシュが良かったな。
息も切れてないあたり、御子柴君はやはり頼りになる。
5箇所あるスタンプのひとつを押して、次の問題を二人で見る。
「第2問:相続するときに協議書を公認するところ」
これはあれか、リアルなら家庭裁判所だが・・・。
「公認ってどこだ? あ、分かった! 市役所だ!」
・・・公認=判子=役所ってか?
そもそも君、小学生の社会科、真面目にやっていたのかね?
「待て、違う」
「え、公認って役所で判子押して貰うんだろ?」
「お前、社会科苦手だったろ」
「ぐ・・・どうしてそれを!」
知らないなら知らないって言ってくれりゃいいのに。
猪突しないでほしい。
「相続の協議書ってのは遺産分割協議書だ。一番下の裁判所で検認されるはず」
「裁判所?てことは・・・下級判事所だな!」
やはり機構が異なっている。危ない。
御子柴君が走り出す。こいつほんと猪突だな。
今度は大丈夫だと思うので後を追いかけると、下級判事所の入り口にチェックポイントがあった。
これでふたつ目だ。
やはり周囲には誰もいない。
迷ってもいないからトップは確実だろう。
「やったぜ京極! お前、頭いいな!」
「任せろ」
「第3問だ。交通標識のうち高低差や幅を制限するものを立てているところ」
「どこだか分かるか?」
「こんなの簡単だろ! 標識なんだから警察署だ!」
・・・中1にこんな引っ掛け問題入れるって、教師も意地が悪いな。
これはリアルなら土木事務所だ。
速度とか信号とか、危険の制限については警察の管轄。
重量とか幅とか、道路の制限については土木事務所の管轄。
知らねぇとハマるやつだ。
そして例により走り出した御子柴君を捕まえる。
「ちょっ、待て待て。お前、ちょっと学習しろよ」
「え? 合ってるだろ?」
「道路とか構造物の規制だから、警察じゃねぇよ。道路とか作ってるところだよ」
「んー、そうすると・・・国土建設復興事務所か」
「そこだな」
うん。御子柴君、有能。
よく俺のヒントだけで正確な答えが分かるね?
社会科が苦手ってわりに、施設名は記憶してるんだね。
あれか、受験で単語だけ覚えたクチだな。
俺の知識じゃ変わってしまった正式名称が分からないから、良いコンビだったのかも。
こんな調子で俺と御子柴君のペアはサクサクとチェックポイントをクリアし、ぶっちぎりで校庭に戻ってきた。
約1時間。仮にダッシュしなかったらもう30分はかかっていただろう。
「お前らどうした? 調子悪くてリタイアか?」
「終わりました!」
「え? 見せてみろ」
得意気にスタンプシートを提出する御子柴君。
いいね、そのやり切った表情。さわやか過ぎて絵になるよ。
「お、本当だ。全問正解! おめでとう、お前らがトップだ、よくやったな」
「いやったー!!」
「おし!」
思わずハイタッチ。いいね、このノリ。やっぱ運動部だろ。
さわやか笑顔で俺の肩を叩いてくれる御子柴君。
お陰様で2時間も時間を確保できたよ、ありがとう!
◇
オリエンテーリングの後、空いた時間で俺はリア研の部室へ来ていた。
いつもなら授業中の時間で、皆が戻ってくるまで校庭で待機しておくのも億劫だからだ。
教室にぽつんと待ってるのもぼっち感があって嫌なので部室というわけ。
先輩から世界語を教わるためにも欠かすわけにはいかない。
暇な時間に課題をやっておこうと思いテクスタントを開く。
あー、科学が結構進んでるんだよな。
重力場の専門用語、覚えねぇと。
数式がないとはいえ、大学みたいなレベルの話を中学からやるのか未来人。
やっぱ魔物との戦いに備えて、人類全体のレベルを底上げする気運があるんだろうか。
いつも1時間かけて終わらせる課題なので、余裕で終了する。
魔力適合の話も少し調べるか、と端末検索をしていたところでがらりと扉が開いた。
「あれ? 京極君、今日は早いね」
気付けば16時を過ぎている。
「オリエンテーリングをさっさと終わらせて勉強してたんだよ」
「ふーん。そういえば1時間くらいでふたりで走ってトップで帰ってきた人がいたけど、あれ、京極君だよね?」
「え、先輩、見てたの?」
「教室から校庭が見えるじゃない? 授業中に眺めてたらね」
「なるほど」
「教室で噂になってたよ? 今までのトップが1時間半くらいだったから、ぶっちぎりの最速到着って」
なんとまぁ。ちょっとやり過ぎたか?
「すごいね。私なんてスタンプは集めたけど時間ぎりぎりで間に合わなかったのに」
それは先輩がゆっくり歩いたからじゃないだろうか。
この人のおっとり具合はかなりのものだからな。
「あ、ちょっと馬鹿にしてる?」
「そんなことない。先輩らしいなーって」
「らしいってどういうこと!?」
ぷう、と頬を膨らませて抗議する先輩の様子が可愛らしい。
小動物の世話をしているみたいだ。
ははは、と笑顔で宥めておく。
「・・・今日も世界語、やるよね」
「もちろん、お願いします! 先生!」
「もう、この真剣さを先輩への敬意に使ってほしいよ」
「尊敬してますよ!」
「世界語だけでしょ?」
「適合値や具現化のことも詳しいじゃん、先輩」
「趣味だし、そのための部活だから」
「そこが先輩のすごいところだよ!」
ちょっと照れ隠しなのか、先輩はそのままテクスタントを開いて俺だけの授業準備をしてくれる。
若いっていいなぁ。煽てにも弱いし見ていて初々しい。
精神がこんなおっさんじゃなきゃ、俺も楽しめるんだけど。
ともあれ、いつも通りに先輩に世界語を教わった。
この調子だと夏前には1年の教科書が終わりそうだ。すんげぇペース早い。
先輩の教え方が上手なのと、俺の理解が追いついてやる気が出ているせいだろう。
ありがとう、俺の救世主だよ先輩。
◇
夜、今日は夕食後の時間に珍しく余裕がある。
課題をしなくて済むのでどうしようかな、と食後に席を立つ前に悩んでいた。
「今日はごゆっくりですね?」
いつも相席の九条さんがそう声をかけてくる。
「うん、昼間に時間があって課題終わらせちゃったから」
「京極さん、とても早かったそうですね。歴代一位だとか。それでお時間があったのですね」
「そうそう。相棒の御子柴君が有能でさ!」
うわ、やっぱりやらかしてたか。
変な噂とか立ってなきゃいいけど。
とりあえず御子柴君のおかげってことにしておこう。
「この後のご予定は?」
「んー、風呂はいつもぎりぎりに入ってるから。しばらく空いてるよ」
「えっと・・・その、少しご相談したいことが」
「え?」
言い辛そうに俯く九条さんの表情はどこか暗い感じがした。
そいえば食事中もちょっと冴えない感じがしたな。
もしかして、いじめ関係か? クラス内も少しキナ臭いしな。
「わかった。どこで話す?」
「あまり他の方の耳に入れたくないので・・・京極さんのお部屋で構いませんか?」
「!?」
待て。それは倫理的にどうなのよ。
・・・と思ったけど、この寮って風呂の終わり21時くらいまではお互いに出入りしてるんだよな。
俺は部屋に籠もっちゃうから関係ないけど、男女問わず行き来している。
ま、中学生だしこんなもんか、と思っておこう。
ちょっと焦った様子を見せちゃったかな・・・。
何でも無い風に装って承諾すると、一度部屋に戻ってから来るとのことだった。
クラスは幾つかの集団が形成され、俺と九条さんだけがふたりだった。
ま、小学生っぽいガキに付き合わなくて済むんだから俺としては願ったり叶ったり。
勉強に打ち込めるしね。
九条さんも同じ様子だからこれで良い。
俺たちは高天原しか見てないからな!
朝の運動と夜の勉強も軌道に乗ってきた。
特に夜の勉強から世界語を外したことが大きい。
飯塚先輩さまさまだ。
お陰様で授業に追いついて追い越せた。
先輩、実はネイティブなんじゃってくらい。
いや人造言語にネイティブってなんだよ。
ディベート大会で優勝するくらいに有能なのだ。
優秀な家庭教師のお陰で何とか持ち直せた。
目下、問題はAR値。
相変わらず進展がない。
部活中、世界語ばかりやってるから進まないのもある。
こっちはどこかで考えないと。
◇
授業が終わり、週に1度のLHR。
自習かなーと思っていたら担任が板書を映した。
「オリエンテーリングがあります」
えー、やったー、と皆が沸く。
校外学習ってテンション上がるからな。気持ちは分かる。
もっとも、勉強とリア研しか興味がない俺からすると時間の無駄だ。
この世界の社会を勉強してもそんなに役に立たねぇし。
そもそも消滅しちまうかもしれねぇからな!
とは言うものの学校行事だから参加しない訳にはいかない。
内容は社会勉強という名のスタンプリレー。
この緑峰市の社会施設のうち、お題に書いてある箇所にチェックポイントがあるそうな。
ふたり一組のペアを組んで回る。
それって先頭のやつについていけば何もせずに終わるんじゃね?
と思っていたら、先生曰く、問題やルートは何パターンかあるから誰かの後ろをついて行って終わりにはならないらしい。
誤った場合や、スタンプ押せなかった場合、課題のペナルティがあるとか。それは嫌だ。
そして、学年合同行事で他クラスの人と顔つなぎの機会を作るため、ペアは知らない人らしい。
相手はランダムで決まるようなので腹をくくるしかない。
九条さんと組めないのか・・・ぼっちな俺にはきつい。
変な奴に当たりませんように!
◇
そしてオリエンテーリング当日。
スタートとゴールは学校の校庭だ。
俺とペアになったのは御子柴 諒君というさわやかイケメン。
まともに九条さん以外の人と会話するのは初めてかもしれない。
「京極ってのか。よろしくな!」
男から見てもイケメンの部類だからきっと彼はリア充路線を走るのだろう。
・・・と言っても、実は九条さんも含め、中学1年は俺にとってはガキ。
まだまだ酸っぱいお年頃だ。
可愛いとか綺麗とは思うけど、少なくとも性的興奮なんて要素は皆無。
息子の剛や娘の楓をこの間までお風呂に入れてたしね!
九条さんにどきりと何度かしたけど、あれは美術鑑賞的なやつだ・・・たぶん。
「おい京極。どうせやるならトップ取ろうぜ」
お、いいね御子柴君。
こんな俺にとって意義のないイベントの全力スルーを協力してくれるなんて!
さっさと終わらせようぜ!
「よしやろうぜ。着いてこいよ!」
社会科の問題なんて大人パワーで楽勝だぜ。
問題とスタンプシートが配られる。
こういったものは紙なんだな。皆が珍しげに触ってるあたりアナログ感が溢れてるんだろう。
ちなみに検索できないよう、テクスタントの持ち出しは禁止だ。
代わりに紙地図が配布されている。
最悪、地図上の主だった施設を回れば何とかなるのかもしれない。
スタート、と声がかかる。
競争ではないので皆、のんびりと歩きだしていた。
オリエンテーリングは昼から放課後までの3時間を使って行われる。
つまり3時間で到達できなければペナルティ確定。
このくらい余裕だろ。
「いくぞ京極。第1問:市条例を定める場所・・・条例って言えば国会だろ!」
「待てそれは違う」
走り出そうとする御子柴の首根っこを掴む。
「離せ! 国会なら東京まで行くんだろ!」
「おい冷静に考えろよ。電車に乗ってまで行くわけ無いだろ」
「え? てことは国会じゃないのか?」
「市条例って言ってんだろ・・・市議会だよ」
「市議会? ああ、市電子議事堂か」
Oh・・・行政機構が変わってらっしゃる。
旧世代の知識だと危ねぇな。
御子柴君、その訂正がすぐ出来るのに間違えたのね。
「そこだ。よし、行こう!」
「走れるか?」
「任せろ!」
ふたりでダッシュする。地図見ないと分からない俺より御子柴君が先頭のが良い。
お、御子柴君、早いね。運動部か?
毎朝ジョグしてる俺と同じくらいの速さだ。さすがイケメン。
「お、あったぜ!」
電子議事堂の入り口にチェックポイントがあった。
まだ誰もいない。ダッシュが良かったな。
息も切れてないあたり、御子柴君はやはり頼りになる。
5箇所あるスタンプのひとつを押して、次の問題を二人で見る。
「第2問:相続するときに協議書を公認するところ」
これはあれか、リアルなら家庭裁判所だが・・・。
「公認ってどこだ? あ、分かった! 市役所だ!」
・・・公認=判子=役所ってか?
そもそも君、小学生の社会科、真面目にやっていたのかね?
「待て、違う」
「え、公認って役所で判子押して貰うんだろ?」
「お前、社会科苦手だったろ」
「ぐ・・・どうしてそれを!」
知らないなら知らないって言ってくれりゃいいのに。
猪突しないでほしい。
「相続の協議書ってのは遺産分割協議書だ。一番下の裁判所で検認されるはず」
「裁判所?てことは・・・下級判事所だな!」
やはり機構が異なっている。危ない。
御子柴君が走り出す。こいつほんと猪突だな。
今度は大丈夫だと思うので後を追いかけると、下級判事所の入り口にチェックポイントがあった。
これでふたつ目だ。
やはり周囲には誰もいない。
迷ってもいないからトップは確実だろう。
「やったぜ京極! お前、頭いいな!」
「任せろ」
「第3問だ。交通標識のうち高低差や幅を制限するものを立てているところ」
「どこだか分かるか?」
「こんなの簡単だろ! 標識なんだから警察署だ!」
・・・中1にこんな引っ掛け問題入れるって、教師も意地が悪いな。
これはリアルなら土木事務所だ。
速度とか信号とか、危険の制限については警察の管轄。
重量とか幅とか、道路の制限については土木事務所の管轄。
知らねぇとハマるやつだ。
そして例により走り出した御子柴君を捕まえる。
「ちょっ、待て待て。お前、ちょっと学習しろよ」
「え? 合ってるだろ?」
「道路とか構造物の規制だから、警察じゃねぇよ。道路とか作ってるところだよ」
「んー、そうすると・・・国土建設復興事務所か」
「そこだな」
うん。御子柴君、有能。
よく俺のヒントだけで正確な答えが分かるね?
社会科が苦手ってわりに、施設名は記憶してるんだね。
あれか、受験で単語だけ覚えたクチだな。
俺の知識じゃ変わってしまった正式名称が分からないから、良いコンビだったのかも。
こんな調子で俺と御子柴君のペアはサクサクとチェックポイントをクリアし、ぶっちぎりで校庭に戻ってきた。
約1時間。仮にダッシュしなかったらもう30分はかかっていただろう。
「お前らどうした? 調子悪くてリタイアか?」
「終わりました!」
「え? 見せてみろ」
得意気にスタンプシートを提出する御子柴君。
いいね、そのやり切った表情。さわやか過ぎて絵になるよ。
「お、本当だ。全問正解! おめでとう、お前らがトップだ、よくやったな」
「いやったー!!」
「おし!」
思わずハイタッチ。いいね、このノリ。やっぱ運動部だろ。
さわやか笑顔で俺の肩を叩いてくれる御子柴君。
お陰様で2時間も時間を確保できたよ、ありがとう!
◇
オリエンテーリングの後、空いた時間で俺はリア研の部室へ来ていた。
いつもなら授業中の時間で、皆が戻ってくるまで校庭で待機しておくのも億劫だからだ。
教室にぽつんと待ってるのもぼっち感があって嫌なので部室というわけ。
先輩から世界語を教わるためにも欠かすわけにはいかない。
暇な時間に課題をやっておこうと思いテクスタントを開く。
あー、科学が結構進んでるんだよな。
重力場の専門用語、覚えねぇと。
数式がないとはいえ、大学みたいなレベルの話を中学からやるのか未来人。
やっぱ魔物との戦いに備えて、人類全体のレベルを底上げする気運があるんだろうか。
いつも1時間かけて終わらせる課題なので、余裕で終了する。
魔力適合の話も少し調べるか、と端末検索をしていたところでがらりと扉が開いた。
「あれ? 京極君、今日は早いね」
気付けば16時を過ぎている。
「オリエンテーリングをさっさと終わらせて勉強してたんだよ」
「ふーん。そういえば1時間くらいでふたりで走ってトップで帰ってきた人がいたけど、あれ、京極君だよね?」
「え、先輩、見てたの?」
「教室から校庭が見えるじゃない? 授業中に眺めてたらね」
「なるほど」
「教室で噂になってたよ? 今までのトップが1時間半くらいだったから、ぶっちぎりの最速到着って」
なんとまぁ。ちょっとやり過ぎたか?
「すごいね。私なんてスタンプは集めたけど時間ぎりぎりで間に合わなかったのに」
それは先輩がゆっくり歩いたからじゃないだろうか。
この人のおっとり具合はかなりのものだからな。
「あ、ちょっと馬鹿にしてる?」
「そんなことない。先輩らしいなーって」
「らしいってどういうこと!?」
ぷう、と頬を膨らませて抗議する先輩の様子が可愛らしい。
小動物の世話をしているみたいだ。
ははは、と笑顔で宥めておく。
「・・・今日も世界語、やるよね」
「もちろん、お願いします! 先生!」
「もう、この真剣さを先輩への敬意に使ってほしいよ」
「尊敬してますよ!」
「世界語だけでしょ?」
「適合値や具現化のことも詳しいじゃん、先輩」
「趣味だし、そのための部活だから」
「そこが先輩のすごいところだよ!」
ちょっと照れ隠しなのか、先輩はそのままテクスタントを開いて俺だけの授業準備をしてくれる。
若いっていいなぁ。煽てにも弱いし見ていて初々しい。
精神がこんなおっさんじゃなきゃ、俺も楽しめるんだけど。
ともあれ、いつも通りに先輩に世界語を教わった。
この調子だと夏前には1年の教科書が終わりそうだ。すんげぇペース早い。
先輩の教え方が上手なのと、俺の理解が追いついてやる気が出ているせいだろう。
ありがとう、俺の救世主だよ先輩。
◇
夜、今日は夕食後の時間に珍しく余裕がある。
課題をしなくて済むのでどうしようかな、と食後に席を立つ前に悩んでいた。
「今日はごゆっくりですね?」
いつも相席の九条さんがそう声をかけてくる。
「うん、昼間に時間があって課題終わらせちゃったから」
「京極さん、とても早かったそうですね。歴代一位だとか。それでお時間があったのですね」
「そうそう。相棒の御子柴君が有能でさ!」
うわ、やっぱりやらかしてたか。
変な噂とか立ってなきゃいいけど。
とりあえず御子柴君のおかげってことにしておこう。
「この後のご予定は?」
「んー、風呂はいつもぎりぎりに入ってるから。しばらく空いてるよ」
「えっと・・・その、少しご相談したいことが」
「え?」
言い辛そうに俯く九条さんの表情はどこか暗い感じがした。
そいえば食事中もちょっと冴えない感じがしたな。
もしかして、いじめ関係か? クラス内も少しキナ臭いしな。
「わかった。どこで話す?」
「あまり他の方の耳に入れたくないので・・・京極さんのお部屋で構いませんか?」
「!?」
待て。それは倫理的にどうなのよ。
・・・と思ったけど、この寮って風呂の終わり21時くらいまではお互いに出入りしてるんだよな。
俺は部屋に籠もっちゃうから関係ないけど、男女問わず行き来している。
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しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
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