私は彼の恋愛対象外。

江上蒼羽

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お兄さんの横顔①side:涼亜

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青柳のお兄さんが居なかったら、私はきっといつまでもメソメソしていたと思う。

もし、あの人が冷たい人だったら、私の涙の跡はずっと乾かないまま。

お兄さんは、優しくて温かくて、安心して甘えられる人……




レイくん似の王子様にこっぴどく振られ、ドン底まで落ち込んだものの、回復は早かった。

それは、青柳のお兄さんのお陰。

あの人は、私のとりとめのない話をきちんと最後まで聞いてくれた。

お兄さんは、私の言動に呆れたり、強く否定したりしない。

だから、胸に溜まったままの悲しみだとか、己の馬鹿さ加減への怒りなんかの、ごちゃ混ぜ感情がスッキリと片付いた。



ここ数日、青柳のお兄さんに、頻繁にLINEを送っている。

授業暇~とか、今日もバイトです……なんて、たわいもない内容ばかり。

社会人で忙しいお兄さんは、頻度は低いながらも必ず返信をくれる。

迷惑かな?と思いながらも、お兄さんからの返信が嬉しくて、ついついメッセージを送りつけてしまう。



「そのお兄さんとは、一体どういう関係なの?」


お兄さんからのメッセージを見てニヤつく私に、奈々が不思議そうに聞いてきた。


「えっ………と、どういうって言われても………お友達……?かなぁ…」


はっきり言って、私自身、お兄さんとの関係を説明するのにピッタリな表現が思い浮かんでいない。

確かに、私とお兄さんは、どういう関係なんだろう?


「てかさ、随分と人がいいお兄さんだね。アンタの事いちいち気に掛けてくれたり、我が儘に付き合ってくれたり……暇なの?」


少し馬鹿にしたような麻友里の言葉にムッとした。


「お兄さんは優しい人なんだよ」


「だからってさぁ、ただの行きつけのコンビニのバイト店員だよ?そんな奴の相手を一生懸命するもんかなぁ?しかも見返りなしで」

「ボランティア精神に富んだ人なんだよ」

「ボランティア精神って……今時ぃ?」


言われてみれば、お兄さんが何故私に優しくしてくれるのか……

理由が全然思い付かない。


「もしかして、ロリコンなんじゃない?」

「あー……かも。若くて可愛い女子高生に興奮してるヤバい奴だったり?」


お兄さんの人となりを知らずに好き勝手言う奈々と麻友里にムカついて、つい「違うよ!」と、声を荒げた。

驚いたように目を見開く二人。


「お兄さんはそういう人じゃないっ!!お兄さんはロリコンなんかじゃないから!絶対!!」


私自身、お兄さんの事をよく知らない。

でも、はっきり断言出来る。

お兄さんは、私をそういう対象で見ていない。

多分あの人は、馬鹿で暴走しながちな私を見過ごせないだけなんだと思う。



「ん、まぁ………いずれにせよ、ただの暇潰し程度にされてる感じだろうね」

「かもね。10も歳が上の人がまともに私等みたいな子供の相手なんかしないだろうし」


熱くなる私とは対照的に、冷静な二人。


「そう………だろうけどさ…」


二人の言う通り、私はお兄さんにとって単なる暇潰しに過ぎないと思う。

お兄さんに彼女がいたら、私なんかの為に時間を割いたり、たわいもない内容のLINEに付き合ったりしてくれてないだろうし。

だからこそ、あの人は優しさの塊みたいな人で……

ロリコン扱いは間違ってる。


「日頃お世話になっているお兄さんに何か恩返しをしたいんだよね」

「恩返し?」

「そ、何かいいアイデアない?」


私がアドバイスを求めると、二人は同時に「うーん…」と唸る。
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