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特別な存在①side:涼亜
しおりを挟む「………傷口にハバネロどころか、ジョロキアを擦り込んで、口と鼻に目一杯詰め込んだ並の事をしでかしたよ、アンタ…」
「もう少し相手の気持ちを思いやってやんなよ……流石にお兄さん可哀想だわ」
友達二人に責められ、只でさえ小さい体を縮こませた。
「いや私としては、お兄さんを元気付けてあげるつもりで…」
必死に弁解してみたけど、奈々も麻友里も呆れ顔のまま。
「自分が切り替えが早かったからって、相手もそうだとは限んないんだしさ」
「そうそう。男の人って、失恋を引き摺るっていうじゃんか。下手に刺激するより、そっとしといてあげるべきだったと思うよ」
矢継ぎ早に浴びせられるお説教に観念して、机に突っ伏した。
「お兄さんがここんとこ顔見せないのは、やっぱりその所為?怒ってるのかなぁ…」
水族館デートから2週間ちょい。
頻繁にバイト先に買い物に来ていたお兄さんは、あの日から私の前に現れなくなった。
「お元気ですか?………っと…」
お兄さん宛にLINEを送ってみたけど、中々既読が付かない。
やっと付いたかと思えば、一言【元気だよ】のみ。
返信頻度が前より格段に減った。
suα*
【最近店に来ませんね~忙しいんですか?】
然り気無く……じゃなくて、思いっ切り探りを入れてみたけど、返事はなくて。
「それ完全に嫌われてんだわ…」
「だね。もう関わんないであげたら?」
友達二人に咎められ、渋々携帯をバッグに入れた。
バイト中、商品の補充をしながら時計をチラ見。
その後、店内をグルッと一周見回す。
見慣れた姿を捉えられず、そっと溜め息を吐いた。
「……今日はお客さん少ないねぇ」
背後から聞こえてきた店長の声にビクッとする。
「ちょっと涼亜ちゃん?そんなに驚かなくても…」
「あ、いや………ははっ……ビックリしちゃって…」
大袈裟に体を振るわせた私に、逆に店長が驚いたらしく、目を丸くさせていた。
「それより、ここんとこ上の空じゃない?ミスも一段と増えたし」
「…………」
まるで普段からミス連発してるみたいな言い草だ。
その通りではあるけど、内心面白くない。
「さてはテストで赤点取ったなぁ~?あ、それか体重増えたとか?」
にやにやしながらからかってくる店長が鬱陶しくて、ガン無視してレジに逃げた。
店長の“若い子と仲良しの優しいおじさん”気取りが時々メンドイ。
雇って貰っている側だから、文句は言えないけど、まともに相手すると正直疲れる。
テストはともかく、体重とか………年頃の女の子に向かって言うか?普通。
デリカシーがないにも程がある。
プンスカ怒りながらレジ周りを弄くっていると、ふと気が付いた。
私もお兄さん相手に似たような事したじゃん……って。
失恋を引き摺って落ち込んでる相手にズケズケと失礼な事を言った私は最悪だ。
今の店長以下だ……って。
「………はぁ…」
ちゃんと反省してる。
お兄さんに悪い事したって後悔してる。
でも、謝りたくても、当の本人が顔を見せてくれない以上は直接謝る事も出来やしない。
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