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平坦な日常にスパイスを④
しおりを挟む「まぁ、確かにアンタは良くも悪くも普通。何の取り柄もないし。容姿に関しては特に特徴もない。正しくヒロインそのもの」
「そうでしょ?そうでしょ?」
凛ちゃんが「ただね……」と続ける。
「ヒロインは、容姿が地味だったり素朴な設定でも、平均より可愛かったりする。アンタはどう甘く評価しても十人並み。お世辞にも可愛いとは言えない」
凛ちゃんは昔からはっきり物を言う。
歯に衣着せぬ容赦ない言葉は時として、私の心に会心の一撃を与える。
確かに凛ちゃんの言う通り、ヒロインは、普通の女の子設定でもそれなりに可愛かったりする。
実写映画じゃ、よく綾瀬はるかなんかが眼鏡掛けてわざと地味っぽくしてヒロインを演じてるけれど、眼鏡を掛けたって綾瀬はるかは綾瀬はるか。
ハリセンボンの箕輪はるかになる訳じゃない。
結局、普通設定でも普通より可愛いから、次々現れるイケメンがヒロインを取り合うのだ。
「名付けるならヒロイン願望症候群?そんなイタイ病気を患う訳の分からない変な女に夢中になる暇な男はこの世に居ない」
真夏の晴天みたいに、はっきりくっきり明快に言い切った凛ちゃん。
「いつまでヒロイン希望してるつもりなのかは知らないけど、いい加減現実を直視しな。彼氏居ない歴=年齢……まだまだ更新するつもり?」
「ひ、酷いー!!凛ちゃんてば、自分の美貌を鼻に掛けて残酷な事ばっか言うー!」
北川景子も真っ青な美人の凛ちゃんの説得力は絶大。
「鼻に掛けてなんかないし」
「掛けてる、絶対掛けてるしー!」
ボロボロに傷付いた心は、一晩寝て起きるまで回復しなそうだ。
ぎゃあぎゃあ喚く私に呆れ果てたように溜め息を吐いた凛ちゃんが、ふと店の入り口の方を見て「あっ……」と小さな声を出した。
不思議に思いながら入り口の方へ視線を送ると、男性が店員と話し込んでいる様子だった。
「高瀬!」
凛ちゃんが男性に向かって手を振る。
彼は凛ちゃんの呼び掛けにゆっくり顔をこちらに向ける。
「あれ、楠木じゃん」
どうやら凛ちゃんの知り合いらしい。
私達の席に駆け寄って来た男性は、私に軽く会釈した。
歳は私等と同じ位だと思う。
ぼさっとした黒髪(もしかしたら無造作ヘアを気取っているのかもしれない)に、開いているのか瞑っているのか判別つきにくい、やたら細い目が特徴の何となく冴えない見た目の男性。
服装は無難な感じの半袖Tシャツに細身の黒の綿パン、そしてサンダルというラフな格好。
モブキャラ的な要素が詰まってるな……というのが彼の第一印象だった。
「どうしたの?一人?」
「いや、友達と二人で飲みに来たんだけど、満席だって言われてさ…」
まぁ、週末だしね……と心の中で呟く。
「さっきも違う店で満席だからって断られたんだよね。どうすっかなー…」
「一緒の友達はどこ行ってんの?」
「別の店に席空いてるか聞きに言って貰ってる」
困り果てた様子の彼に凛ちゃんが「それなら」と突拍子もない事を提案する。
「私等と相席で良ければ、ここで飲めば?」
「えっ?」
「えぇっ?!」
思わず飛び出た嫌悪感を含んだ「えぇっ?!」に、凛ちゃんと男性からの視線が集まる。
「あ、あー……折角の誘いだけど、悪いから遠慮しとく……かな」
私に悪いと思ったらしいモブキャラ兄ちゃん。
凛ちゃんが何故だか鬼の形相で私を睨んでる。
美人が凄むと大迫力だ。
「声掛けてくれてありがとね」
「あ……高瀬…」
彼が去ろうとした時だった。
「あっ、居た居たー!レンー、あっちの店も満席だってよー」
見目麗しい超絶イケメン現る。
「こっちはどうだった?」
親しげにモブキャラ兄ちゃんの肩に手を回す超絶イケメンを前に、鼻血噴出寸前。
誰?誰よ、このイケメンは?!
「ここも満席で駄目」
「マジ~?週末だしな~………で、何してんの?」
イケメン、目鼻立ちくっきりの爽やかイケメン!
良い匂いのしそうなイケメン~!
脳内でリオのサンバカーニバルが開催されている。
同時開催で、青森のねぶた祭り大盛り上がり。
「偶々知り合いに会ったから話し込んでただけ」
「ふぅん…」
「どうする?通りの角の店覗いてみる?」
「ん、そうすっか」
逃すかー!とばかりに、超高速でテーブルの上と席周りを片付け、ずいっと差し出す。
「良かったらここどうぞ。ご一緒しましょう!」
イケメンとだったら、相席全然OK!
寧ろ、大歓迎だ。
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