その声は媚薬

江上蒼羽

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1週間の疲れが押し寄せる木曜日。

欠伸を噛み殺しながら出社し、防塵服に着替える。

毎朝、業務開始前に朝礼とラジオ体操がある。

気怠い体を引き摺りながら列の後ろに並ぶと、同じ派遣会社から派遣されている島津さんという女子が隣についた。


「おはようございます、伊原さん。いつもの事ながら、朝礼怠いですね」


そっと耳打ちしてきた島津さんに「だね」とだけ返し、真っ直ぐ前を見据える。


「朝礼なんて社員だけで良くないですか?課長はいつも同じ内容しか喋らないし。何も私ら派遣まで強制参加とか………はぁ……」

「まぁまぁ……気持ちは分かるけどさ」


不満を顕にする島津さんに苦笑いで同意しつつ、ちょっと黙ってくれないかな……とも思ってみたり。

話を聞くだけの朝礼はともかく、ラジオ体操は正直面倒臭い。

ダラダラやっていると注意されるし。

そもそも工場の製造ラインでラジオ体操って………あまり関係なくないか?

まぁ……不満はあれど、1日の終わりに聞くリュークの声を楽しみに今日も心を無にして踏ん張るだけ。

と、島津さんが「あれ……」と声を挙げた。

周りも少しざわついている。

何事かと思い、島津さんが見ている方へ視線を向けると課長がスーツを着た男性二人を引き連れて現れた所だった。

遠目だからはっきりとは分からないけれど、年の頃は20代半ばから30代前半といった所。

どちらも見覚えのない顔だった。

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