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【15】
しおりを挟む久世さんの肩が小刻みに震えている。
「……お……お前みたいなのが……」
絞り出すように声を出す様から、彼の緊張や焦りが犇々と伝わってくる。
「………お前みたいな奴が、どんな顔してあんな音声動画撮ってんだよ……みたいに思ったんじゃないですか?」
「え……?」
ずっと私と目を合わそうとしなかった久世さんが今度は睨み付けるみたいに私を見ながら言う。
「お、お前みたいな冴えない奴が、あんな甘ったるい台詞考えて喋って、それを録音して編集までして……お前みたいな奴が………うーわ、気持ち悪い!とか思ったでしょう?!」
ついさっきまでの萎れかけた久世さんとは別人みたいな強い口調で、しかも早口で捲し立てられ、私は呆気に取られてしまった。
「何格好つけてんだよ!何声優の真似事して演技してんだよ!って、さぞかし滑稽に思った事だろうよ!」
久世さんが逆ギレみたく私に食って掛かってくるけれど、生憎私はリュークの声に心酔している女だ。
どれだけ久世さんにキレられようとちっとも怖くないし、寧ろ………
「久世さん……そんな声でキレられても私、喜ぶだけですよ?」
「は………?」
「貴方のその声、私の好みのど真ん中なので。今すっごいきゅんきゅんしてます」
「なっ……」
ヒートアップしつつあった久世さんが私の言葉に怯んだ。
「な……何なんですか、貴女は………」
照れたように顔を耳まで真っ赤にしながら口元を手で覆う久世さんは何とも可愛らしい。
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