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しおりを挟むしがみついた背中に顔を埋めてみた。
「私が好きな声でそんな可愛い事を言うの卑怯です」
「伊原さん……?」
「久世さんと付き合ったら、私もっともっと欲出しますよ?」
私は久世さんの声で興奮する変態女だ。
久世さんがうんざりするような要求をしたりするかもしれない。
「声が聞きたいから毎日電話しろとか、こんな台詞を言ってとか…………面倒臭い事言い出したりしますよ?」
久世さんがゆっくりと体を反転させた。
「伊原さんが喜んでくれるなら出来る範囲で応えます」
真っ直ぐに目を見て、そんな風に言われたら答えは一択。
「もっと色んな声聞かせて下さい」
甘えるように久世さんの胸に飛び込んだ。
彼は私の体を優しく包み込み、耳に唇を寄せる。
「……声だけじゃなくて、俺の事も好きになって貰えると嬉しいです」
低く艶気のある声で囁かれれば、その威力で全身の力が抜けそうになる。
膝がガクガクしそうなのを必死に堪えながら、私より顔一つ分上の位置にある久世さんの顔を見上げた。
「久世さんのエロ声にドキドキきゅんきゅんするような痴女ですが、よろしくお願いします」
久世さんは「あははっ」と声を挙げながら屈託のない笑顔を私に向けた。
「痴女って…………俺の声に反応してる伊原さんは凄く可愛かったです」
「そういうの言わなくていいです」
久世さんの少し幼い笑顔につられて、自然と私も笑ってた。
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