その声は媚薬.2

江上蒼羽

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面会拒否、とな……?②

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島津さんにしつこく説得され、久世さんのお見舞いに行く事にした。

一応事前に行く事を知らせておこうとLINEを送ったら、すぐに返信が来た。



“うつったら悪いから大丈夫”

“お見舞いなんて気を遣わないで”



隣で私服に着替えている島津さんに携帯の画面を見せる。


「だって。お見舞い不要みたいだよ」


島津さんの眉間に皺が寄った。


「…………彼女がお見舞いに来てくれるって分かったら大抵の男は喜ぶと思うんですけど」

「彼は大抵には含まれないタイプなんじゃない?一人でゆっくり体を休めたい人なんだと思う」

「んー……」


風邪を治すのは彼女の存在ではなく、しっかりとした静養と医者の薬だと信じて疑わない私は“分かった、お大事に”のみ返信。

そのまま携帯をバッグに仕舞う。

すると、何やら腑に落ちていない様子の島津さんがポソッと言う。


「…………案外他の女が出入りしてたりして」

「ん?」



まさか久世さんに限ってそれはないだろうと思いつつも、胸がほんの少しざわついた。


「着替えは出来るとして食事は……どうしてんのかな……誰かに用意して貰ってるんですかね…」

「冷蔵庫の残り物をテキトーに……とか?」

「その冷蔵庫が空なら?熱がある状態で買い出し行くの大変ですよ?」

「今は食材の宅配やデリバリー充実してるし……」

「……ま、そうですけどねぇ…」


とか言いつつ、島津さんのいちいち含みを持たせた言い方が私の不安を煽る。


「もし彼氏さんの身近に彼の事が好きな女がいたりしたら、ここが狙い目ですよね」

「あ、はは……何それ」

「人は弱ってる時に優しくされると容易いですから。甲斐甲斐しくお世話され、絆されてそのまま彼のベッドで……みたいな」

「はは、おもしろー……」


とか言いつつ、あんまり面白くなかったりする。

私と付き合い始めて身なりを気にするようになって、以前の冴えない容姿からガラリと垢抜けた印象になった途端、職場の女性から食事に誘われたりするようになったとか。

劇的に格好良くなった訳でないにしろ、元はそこまで悪くなかったし。

そこに清潔感を纏えば、自然と彼に女性は寄ってくるだろう。

元々久世さんとの関係は私の我が儘がキッカケで始まったし、付き合いも浅い。

まだそこまで強固な絆が出来上がっていないと思う。

もし今彼好みの女性が現れて言い寄られたら、彼の理性はそちらに傾くかもしれない。

私なんて、その辺にゴロゴロいるような量産型だから大した魅力ないし、声フェチの変態だし………

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