物語の始まりは…

江上蒼羽

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3年2組の教室に着いてドアから顔を覗かせると、中から黄色い声が飛んできた。


「きゃー!セージ君じゃーん!」

「どしたのー?!」

「誰か呼び出し?それって私とか?!」 

「アンタな訳ないじゃん!トイレで鏡見て来なよ、今日メイク酷いよ」
 

忽ち3年女子に囲まれてまとわりつかれる。

腕を絡めてくる図々しい先輩もいて、鬱陶しく感じながらも悪い気はしない。


「ちょ、先輩方……熱烈歓迎ありがとうございます」


絡められた腕をやんわり解きながら、教室内を見渡した。

放課後とあって空席が多い。 


「あの、黛って人を探してるんですけど……もう帰っちゃいました?」


パッと見た感じ、それっぽい人物は見当たらない。

というか、そもそも男か女かすらも分かっちゃいないけど。


「黛………あー……“まゆまゆ”?」


先輩方は怪訝そうに眉を寄せた。


「まゆまゆ?」


俺が聞き返すと、一人の先輩が半笑いで言う。


黛 麻結花まゆずみ まゆか。略してまゆまゆ」


思わず「ぶっ」と吹き出しそうになった。

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