物語の始まりは…

江上蒼羽

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咄嗟に咳払いで誤魔化す。


「ゴホッ………あーなるほど………変な……いやいや変わった名前ですねー」


すると、俺を囲んでいる先輩方が一斉に笑い出す。


「でしょー?そういう反応になるよね?!」

「私も最初聞いた時笑ったもん」

「マジウケる」

 
つられて俺も笑い出す。


「“まゆずみ”なんて変わった名字なのに、それに敢えて“まゆか”を重ねる親のセンス!」

「ま、本人も少し変わってんもんねー私らとノリが違うって言うか」

「オトナシ系?」


大声でディスる先輩方に女の怖さを感じる。



「で、その“まゆまゆ”って人はどの人ですか?百田センセーから課題出されて、その人を頼るように言われてて」


早いとこ話をつけたい。

文芸部に所属しているってくらいだから、大人しいド陰キャな地味人間だと予想している。

お願いという名の脅しで、そいつに代わりに課題をやらせようって目論みだ。

だって百田は困ったら黛を頼れって言ったんだし?

その通りに頼ろうって訳。
 

「まゆまゆは、どうせいつもの図書室じゃない?」


図書室と聞いても、マンガ以外の読書とは縁遠い俺にはピンと来ない。


「図書室なんてこの学校にあったんだ……」

「あはは、セージ君たらウケるし。ま、私らも行った事ないけど。確か西棟1階端っこだっけか」


現在地は東棟の3階。

図書室とは真逆の位置にいる。

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