物語の始まりは…

江上蒼羽

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ムカつく

百田に軽くいなされた事でも、アイブロウ先輩から邪魔者扱いされた事でもなく……

理由が分からないのに、何が何だかよく分かってないけど、ただひたすらにムカつく。


「先輩」

「ん?」


アイブロウ先輩は俺が呼んでもこっちを見ない。

返事はしてくれても、顔を上げずに手元のノートと向き合ってる。

百田が呼んだらきっと秒速で顔を上げるんだろうなって思ったら、体が勝手に動いてた。


「ねぇ、アイブロウ先輩」


身を乗り出して、向かい側の先輩に近付く。


「だから何?ってか、その呼び方―――…」


先輩が俺のアイブロウ先輩呼びに苛立ったように顔を上げた瞬間に、彼女の唇を奪ってやった。

柔らかさと先輩の体温が伝わるのと同時に、リップでも塗ってあるのかヌルっと滑る感触がした。

百田の為に塗ったのかと思うと、それを拭ってやりたくなる。

舌先で掬い取ると、無味だけど人工物特有の風味があり、微かにベリー系の匂いがした。

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