物語の始まりは…

江上蒼羽

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図書室に一人残された俺は、激しく後悔した。


「何、やってんの俺………」


頭を掻き毟りながら、深く溜め息を吐く。

自分がガキみたいな嫉妬をしていたんだと、今更気付いた。

お気に入りに加えたばかりのコレクションが、大人に取り上げられたような感覚。

それをアイブロウ先輩にぶつけた所で気が晴れる訳じゃないのに。

唇に残ったキスの名残を親指の腹で拭う。

机の上には、拡げられたままの先輩のノート。

先輩はいつもの一生懸命何かを書いていた。

俺が覗こうとすると鉄壁の防御で守る程だから、決して見る事は許されない。

それは頭では分かっているけど好奇心には勝てなくて、つい手を伸ばしてしまった。

何となくパラパラと捲る。

ふと桃瀬という単語が目に入り、そのページで捲るのを止めた。

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