物語の始まりは…

江上蒼羽

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アイブロウ先輩が物凄い勢いで立ち上がった。

その拍子に椅子が倒れる。


「……まさか、よっ……読んだ、の……?」


真っ赤な顔で俺を睨み付けるアイブロウ先輩。

怒りなのか、恥ずかしさからなのか分からないけど、ワナワナ震えている。

そんな姿が小動物っぽくて、怖いというより可愛いという感情を抱く。


「あぁ、この前した後、先輩逃げちゃって一人になった時にさら~っと読ませて貰いました」


ここで敢えてキスを強調したら、アイブロウ先輩の顔が更に赤くなった。


「あっ、あの状況なら誰だって………って違う違う!だからって、勝手に人の物を見るなんて!」

「やぁだ先輩、思い出して照れてんの?顔赤い通り越してヤバい色してますよ?」


アイブロウ先輩の反応がイチイチ可愛いもんだから、ついからかいたくなってしまう。


「可愛いっすねアイブロウ先輩」

「………るさい…」


先輩はほんのりむくれながら倒れた椅子を起こして机下に収納した。

そして、不本意極まりないといった表情で俺からカバンを受け取る。


「読んだ内容、全部記憶から消して!!今すぐに!!」

「え、無理っす」


しれっと言う俺の背中に向かってアイブロウ先輩がタックルしてきたけど、力が貧弱過ぎて思わず


「それで攻撃してるつもりっすか?可愛いっすね」


更におちょくってしまう。

先輩が「ムキー!!」と悔しそうに吠えてる様が俺的に非常にツボった。

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