【気味の悪い話】調査依頼経過報告書

暦 睡蓮

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録音ファイル

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1. 依頼内容

依頼者:都内在住・男性(20代後半・仮名A氏)
相談日:2022年11月3日

A氏は一人暮らしをしており、スマホに入っている録音アプリが、深夜に“勝手に起動”して音声を保存していることに気づいた。アプリ自体はインストールしていたが、普段使ったことはなく、通知もオフにしていたという。

初めて発見したのは10月下旬。朝スマホを確認すると「新規録音ファイル001」とだけ残されており、再生すると約4分間の環境音が収録されていた。

2. 録音内容の概要

調査のために、A氏から提出された計3つのファイルを確認した。

ファイル001(10/29)

開始から約2分間、完全な無音。

2分15秒頃から、かすかな「衣擦れのような音」が入る。

3分以降、A氏の寝息と思われる呼吸音が確認できる。

しかし、A氏は「当日は眠れず、朝まで起きていた」と証言。

ファイル002(11/2)

録音は午前2時13分に自動開始。

途中で「カツン、カツン」と硬いものを床に落とすような音が、間隔をあけて計7回。

2分40秒頃から、女性の声のような囁きが混じる。
内容は明瞭でなく、「…そこ…いる…?」と聞こえる。

ファイル003(11/3)

本報告時点で最新の録音。

開始直後から低いノイズが走り続ける。

1分22秒、突然はっきりと男性の声で「聞こえるか」と録音。

声は依頼者本人ではない。

3. 検証と現地調査

研究会メンバー3名でA氏のアパートを訪問。
築40年ほどのワンルームで、特に異常な点は見られなかった。
ただし、室内の壁の一部に不自然な“四角い継ぎ目”があり、修繕の跡のように見えた。管理会社に確認したが、詳細は不明とのこと。

調査中、アプリを起動させた状態で録音を試みたが、特に異常は発生せず。
夜間、依頼者を交えて一晩滞在したが、その日は新たな録音は残らなかった。

4. 追加報告

本報告をまとめる過程で、依頼者より再度連絡が入った。
11月9日未明に録音された「ファイル004」である。

ファイル004(11/9)

0秒から、はっきりと“複数の足音”が響く。

足音は部屋の中を回るようにして、A氏の寝息に重なる。

2分30秒頃、録音者のスマホに直接触れたような「ガサッ」という音。

直後に、女性の声で「返して」と囁く。

最後に、録音が途切れる。

依頼者は「その時間、確実に眠っていた」と証言。
さらに不思議なのは、ファイル004がスマホ内に存在しなかった点である。
メール添付で送られてきたデータは確かに再生できたが、依頼者の端末には保存履歴がない。送信記録も残っていない。

「自分は送っていない。むしろ、その音声を聞いたのは研究会から返信を受け取った時が初めてだ」と主張している。

5. 結論

この現象が単なるアプリの不具合なのか、あるいは依頼者の心理的要因によるものなのか、断定はできない。
ただし、ファイル002以降に現れる“声”については、複数人が独立して同様に聞き取っているため、偶然のノイズではない可能性が高い。

なお、A氏はその後11月下旬に引っ越したが、新居でも「同じアプリが勝手に録音を始めた」と連絡があった。
添付されていた新しい音声ファイルは、現在も調査中である。

ここまでが、現時点での記録である。
なお、最後に補足しておくが――。

この報告書をまとめている間、私の手元のスマホにも、未保存の録音ファイルがひとつ増えていた。
再生すると、確かに私の声でこう呟いている。

「返して」
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