2 / 29
月と太陽のPersona
未完成な理由(秋穂芙弓・談)
しおりを挟む
ある日突然、ロイさんが私にこんな事を訊いてきた。
「ねぇ、芙弓。どうして『ロイド』には生殖器が無いんだい?『人形はリアルであるべき!』な信念で問題の人形達は『あんな事』が出来ちゃうくらいに精巧に作ったのに、『ロイド』にはソレが無いって矛盾してるんじゃないのかい?」
昔、人形の制作資金欲しさに作った挙句『セクシャロイド』にされてしまった人形達の話を持ち出され、腹の底から不快感が湧き上がってくる。でもまぁ納得の疑問でもあるし、誤魔化した所でロイさんが疑問を投げ捨ててくれるとは思えない。なので私は今ここはきちんと対応するべきであると割り切った。
「そりゃ、どんなに検索したってアンタのイチモツの寸法や形状なんかヒットしませんでしたからね」
「……え、検索、したの?」
手先のリハビリも兼ねて人形を作っている最中での問い掛けだった為、私は彼の方を見ずに言葉を続けた。
「『どうせ無駄だろ』って思ってはいても一応はしますよ。医学書とかを漁れば女性器は模倣出来ますけど、男性器は個体差があるから本人のを知らないと意味がありませんからね。んでも当然そんな情報はあるはずがなく。そりゃそうですよね、国有数の大企業グループの跡取りが股間の写真を撮られるなんてミスをするはずがないんですから。となるとどうにも出来ず、あの子だけはずっと未完成のままって訳です」
「んー……。ならもう今は作れるんじゃないのかい?」
「そりゃそれっぽい物を作るってだけならもう出来ますけど、男性器ってのは再現が物凄く難しいんです。通常時と勃起状態で形状や重さ、硬さにも変化があるし。その変化を促す為に必要な物がまず思い付かないし、かといって変化を諦めて最大サイズのままにするのは日常生活に支障が出るサイズじゃないですか。そんなん歩く猥褻物みたいで社会的に死んじゃいます。他にも、液体を内部に仕込むと管理が一層面倒にもなるし良い事なんか一つも無いですよ」
「そっか、僕のは『日常生活に支障が出るサイズ』かぁ」
「他にも、流石に感情や快楽具合と連動させて射精をさせるシステムの構築とかも、所詮は『アンドロイド』じゃなく『人形』なんで全然想像つきませんし、先走りの汁との差を持たせないとだし、あの苦いだけじゃない不可思議な味や脳髄をガツンと殴ってくる様な雄の匂いの再現とか、味覚に自信があるタイプでもなけりゃ調香師でもない私じゃ絶対に作れませんからね。もし作れてもソレが減るたびに液体を補充するとかも滑稽過ぎるし、かといって射精機能を無くすと無尽蔵にずっと動物の交尾みたいな性交渉を強請ってきそうで絶対に嫌です」
「へぇ……脳髄までやられちゃうくらいに、雄っぽい匂いなんだぁ」
「まぁ、御自分じゃわかんないでしょうね」
「んんー。何にもわかっていないのは、芙弓の方じゃないかなぁ?」
何やら唯ならぬ空気を感じ、私は作業の手を止めて彼の方をゆっくり見た。恍惚とした表情を綺麗で白い手でそっと隠し、興奮に満ちた瞳でこちらを見下している。はぁはぁと息は荒れ、股間とか……もう完全にソレ、勃起していませんか?って服の上からでも分かる程に盛り上がっている。
「自分が襲われる前提で語るわ、卑猥な話を真顔でするわ。もうコレって誘ってるのと同義だよね?」
手に持っている道具を取り上げられ、お姫様抱っこの状態で体を持ち上げられる。
「『ロイド』も一緒に来て」
「はいはい。こっちはもう準備OKだよ」
ずっと一階で家事をしてくれていたはずのロイドまで即座に現れ、何故か手には赤い縄と猿轡、手錠にローターと不穏な物ばかりを持っていた。
「仕事中に声を掛けた事は謝る。でもね、いくら脳内もお仕事モードだったからって、あんな淫猥な発言を平然と語ったら駄目だって!」
「い、淫猥?そんな事全然言ってないし!」
「いいや、言ってた。めちゃくちゃ言ってた!興奮するなって方が無理なくらいの話を目の前でされたらもう、もっとちゃんと僕のモノをしっかりと君のナカに叩き込みたくなっても当然だよね?」と言い、仕事部屋の近くにある寝室にロイさんが移動して行く。
「む、無理です!私は今仕事中で——」
「まだリハビリの段階で、依頼品じゃないよね?なら時間に余裕はあるはずだ」
「たっぷりじっくり、君は安易に『僕ら』を興奮させない方がいいって教えてあげるね」
恐ろしき言葉と共にロイドが寝室の扉を後ろ手でバタンと閉めた。地獄の時間の始まりだというのに、体の奥は『この先』を期待しているみたいにキュッと疼く。この体はもうすっかり調教済みなのだと痛感しつつ、私は涙目になりながら「やだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と無駄な叫び声をあげたのだった。
【未完成な理由・完結】
「ねぇ、芙弓。どうして『ロイド』には生殖器が無いんだい?『人形はリアルであるべき!』な信念で問題の人形達は『あんな事』が出来ちゃうくらいに精巧に作ったのに、『ロイド』にはソレが無いって矛盾してるんじゃないのかい?」
昔、人形の制作資金欲しさに作った挙句『セクシャロイド』にされてしまった人形達の話を持ち出され、腹の底から不快感が湧き上がってくる。でもまぁ納得の疑問でもあるし、誤魔化した所でロイさんが疑問を投げ捨ててくれるとは思えない。なので私は今ここはきちんと対応するべきであると割り切った。
「そりゃ、どんなに検索したってアンタのイチモツの寸法や形状なんかヒットしませんでしたからね」
「……え、検索、したの?」
手先のリハビリも兼ねて人形を作っている最中での問い掛けだった為、私は彼の方を見ずに言葉を続けた。
「『どうせ無駄だろ』って思ってはいても一応はしますよ。医学書とかを漁れば女性器は模倣出来ますけど、男性器は個体差があるから本人のを知らないと意味がありませんからね。んでも当然そんな情報はあるはずがなく。そりゃそうですよね、国有数の大企業グループの跡取りが股間の写真を撮られるなんてミスをするはずがないんですから。となるとどうにも出来ず、あの子だけはずっと未完成のままって訳です」
「んー……。ならもう今は作れるんじゃないのかい?」
「そりゃそれっぽい物を作るってだけならもう出来ますけど、男性器ってのは再現が物凄く難しいんです。通常時と勃起状態で形状や重さ、硬さにも変化があるし。その変化を促す為に必要な物がまず思い付かないし、かといって変化を諦めて最大サイズのままにするのは日常生活に支障が出るサイズじゃないですか。そんなん歩く猥褻物みたいで社会的に死んじゃいます。他にも、液体を内部に仕込むと管理が一層面倒にもなるし良い事なんか一つも無いですよ」
「そっか、僕のは『日常生活に支障が出るサイズ』かぁ」
「他にも、流石に感情や快楽具合と連動させて射精をさせるシステムの構築とかも、所詮は『アンドロイド』じゃなく『人形』なんで全然想像つきませんし、先走りの汁との差を持たせないとだし、あの苦いだけじゃない不可思議な味や脳髄をガツンと殴ってくる様な雄の匂いの再現とか、味覚に自信があるタイプでもなけりゃ調香師でもない私じゃ絶対に作れませんからね。もし作れてもソレが減るたびに液体を補充するとかも滑稽過ぎるし、かといって射精機能を無くすと無尽蔵にずっと動物の交尾みたいな性交渉を強請ってきそうで絶対に嫌です」
「へぇ……脳髄までやられちゃうくらいに、雄っぽい匂いなんだぁ」
「まぁ、御自分じゃわかんないでしょうね」
「んんー。何にもわかっていないのは、芙弓の方じゃないかなぁ?」
何やら唯ならぬ空気を感じ、私は作業の手を止めて彼の方をゆっくり見た。恍惚とした表情を綺麗で白い手でそっと隠し、興奮に満ちた瞳でこちらを見下している。はぁはぁと息は荒れ、股間とか……もう完全にソレ、勃起していませんか?って服の上からでも分かる程に盛り上がっている。
「自分が襲われる前提で語るわ、卑猥な話を真顔でするわ。もうコレって誘ってるのと同義だよね?」
手に持っている道具を取り上げられ、お姫様抱っこの状態で体を持ち上げられる。
「『ロイド』も一緒に来て」
「はいはい。こっちはもう準備OKだよ」
ずっと一階で家事をしてくれていたはずのロイドまで即座に現れ、何故か手には赤い縄と猿轡、手錠にローターと不穏な物ばかりを持っていた。
「仕事中に声を掛けた事は謝る。でもね、いくら脳内もお仕事モードだったからって、あんな淫猥な発言を平然と語ったら駄目だって!」
「い、淫猥?そんな事全然言ってないし!」
「いいや、言ってた。めちゃくちゃ言ってた!興奮するなって方が無理なくらいの話を目の前でされたらもう、もっとちゃんと僕のモノをしっかりと君のナカに叩き込みたくなっても当然だよね?」と言い、仕事部屋の近くにある寝室にロイさんが移動して行く。
「む、無理です!私は今仕事中で——」
「まだリハビリの段階で、依頼品じゃないよね?なら時間に余裕はあるはずだ」
「たっぷりじっくり、君は安易に『僕ら』を興奮させない方がいいって教えてあげるね」
恐ろしき言葉と共にロイドが寝室の扉を後ろ手でバタンと閉めた。地獄の時間の始まりだというのに、体の奥は『この先』を期待しているみたいにキュッと疼く。この体はもうすっかり調教済みなのだと痛感しつつ、私は涙目になりながら「やだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と無駄な叫び声をあげたのだった。
【未完成な理由・完結】
1
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる