異世界の管理人

ぬまちゃん

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電車の中を観察

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「やっと着きましたね」
男の子は、少し疲れを感じ始めていた。
やはり、異国の人は文化的な背景が異なるからなのだろうと、自分に言い聞かせていた。

でも、この女の子に対する好意はどんどん高まっているのが自分でも不思議だった。
まるで、生まれた時から二人は巡り合う運命だったのだ、と思えるほどだった。
もう、この子なしで自分の人生は考えられないと思った。

だからこそ、こうやって女の子の知り合いのおじいさんとおばあさんを連れて街中を見せているのだ。
打算的だ、なんだと言われても良い、女の子と少しでも長く一緒にいたいと思わずにはいられなかった。

さっきも、電車の中で色々あった事を考えていた。

「なんだね、この電車の天井からぶら下がっている紙は?」
おじいさんが不思議そうに聞いてきた。

「ハデスさん、あれは広告と言って、色々な会社の製品をみんなに知ってもらいたいために、目立つ場所にああやって製品の内容を書いた紙を吊り下げるのです」

「先ほども申しましたが、電車に乗る人は沢山います。だからその人達がその広告を見ると、広告に書いてある製品を買ってくれるのです」

「なるほど!ここの人間は自分が作った物を世に知らせるために、並々ならぬ努力をしているのだな!」

「そうですね、絶えず何か新しい事を続けてますね。これから見に行く街並みも一年もしたら変わってしまうと思いますよ」
「ただ、変わるスピードが早すぎて、それが嫌な人もいます」

そう言いながら、男の子は女の子を見た。
女の子は男の子の目があってしまい、慌てて視線を逸らした。
どうやら彼がハデスさんに一所懸命説明する横顔をジッと見つめていたようだ。

彼女のうなじが、心なしか上気している気がした。

「あの、神宮司さん、出入口のトビラの上についている光る文字は何ですか?」
今度は、西の魔女が聞いてきた。

「ああ、あれはこの電車の行き先を教えてくれる機械です。小さな光の粒を順番に光らせる事で、文字や数字を表す事が出来るのです。それや、小さなテレビを埋め込んで、そこに同じように電車の行き先や到着した駅の内容を表示したりします」

「到着した駅の表示?」
西の魔女は不思議そうに聞いた。
話の意味が理解できなかったようだ。


「ほら、サリーさん。画面が変わりましたよ」
「画面には、次に止まる駅のホームと、電車の何両目に階段があるか、エレベーターがあるかを示しているのです」

「あらホント。すごい仕掛けね」
「これも魔法なのね」

「そうですね。まあ魔法のような物ですかね」
「機械が命令を受けて表示してるので、機械魔法かなー」
男の子も、だんだんと言葉使いに慣れてきていた。


受付の女の子は、主任さんや魔女さんの質問に丁寧に答えている男の子をじーっと眺めていた。
この殿方、頭も良いし、優しいし、なんて素敵な方なのだろう、と密かに感じていたのだ。

すると、彼が突然こちらを見て来たので、視線が合ってしまい慌てて目を逸らしたのだった。

どうしましょう…
もしかしたら、ずっと殿方を見ていたのに気付かれてしまったかしら。

電車はこの時間帯、乗る人が少なかった。

「皆んな静かにして乗っておるな。おや?でも皆んな小さな箱を見ているが、アレはなんだい?」
主任さんの質問は止まらない。

「あれはスマートフォンという機械です。あの箱にも画面が付いていて、テレビ以上の情報が表示出来るのです。世界中の情報を手に入れる事が出来るのです」
「ほら、これです。僕も持っています」

「あらホント、すごく綺麗なテレビみたい」
「ここに、知りたい言葉を書いて、検索というボタンを押すのね」
西の魔女さんも興味深々で近寄って来た。

女の子は、男の子の持っているスマホの画面に、女の子の絵が写っているのをみて、ちょっとショックを受けてしまった。

彼は、ああいう女の子が好みなのね。
私もあんな子になれたら良いなあ。

女の子がスマホの待ち受け画面をみて暗くなっていることに気がついた男の子は、慌てて釈明した。

「あ、これは僕の好きな女の子では無いんです。これはアニメと言って動くマンガの世界の有名な主人公なんです」
「今日本で一番有名なアニメキャラクターなんですよ」
僕が好きなのは君みたいな女の子です。

男の子は、自分で「好きです」と言った事に気がついて、赤くなってしまった。

女の子も「好きです」の言葉を聞いて赤くなってしまった。

電車の中で、若いカップルが真っ赤になってしまい。

主任と西の魔女は電車の窓から見える外の景色を見る事にした。
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