今日も誰かが掛けてくる

ぬまちゃん

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来月の一番忙しい日はどこ?

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「あ、ごめんね。まだ社員さんにも挨拶してないわよね。この人は社員さんで技術サポートをしてくれる小田切さんよ。小田切さん、この子は新しいオペレーターの岩寺裕子さん。明日にでも顔合わせに伺うわね」
小田さんは、岩寺さんの肩をポンポンと叩いて、小田切さんに紹介します。

「岩寺裕子ちゃんか、よろしくね。僕はこのオペレーションセンターの技術支援をしている小田切です。ヘッドセットが壊れたり、PCの調子が悪かったら直ぐにリーダーさんか僕に声をかけてね」
そう言って、にこやかに手を差し伸べてくれます。

「小田切(?)さん、よろしくお願いします。分からないことだらけですので、色々と教えてくださいね」
岩寺さんは小田切さんに握手しながら答えます。

「ところで、先ほどの『呼量』って何ですか?」
岩寺さんは、二人に質問します。

「ああ、ゴメンね。まだ説明して無かったわね。実際には電話対応の話しとは関係無いから忘れちゃってたわ」
リーダーの小田さん、かなりアバウトな乗りで話し始める。

「実は私も詳しい事は知らないの。呼量とか呼損量とかアーラン分布とか、色々と難しいらしいんだけど、要するに来月の人員配置を決めるために必要なの」
リーダーの小田さん、岩寺さんに丁寧に話し続ける。

「過去数ヶ月データを元にして、来月の電話の着信量数を予測するの」

「えー、来月の着信数を当てちゃうんですか?」

「超能力じゃないから、完全には当たらないわ。あくまで予測なの」

「天気予報みたいなモノですか?」

「まあ大雑把に言うと、そうかしら……でも、過去のデータに基づいて数学的な処理をするので意外に精度は高いのよ」

「へー、数学的処理か―、すごいんですね。そうやって電話の着信量を予想してるから、予めオペレーターさんを必要な人数だけ配置出来るんですね」

「でもね、過去の実績では表せない突発的な事もあるから、少し多めにオペレータさんを用意しているのよ。例えば、地震や銀行のトラブルかな。あ、それと最近は年金の受給日ね。昔はそんなになかったけど今はおじいさんやおばさんも年金の引き出しにコンビニATMを使う事が多いのよね」

「へー、そうなんですか。たしかにコンビニは沢山ありますものね。おじいさんやおばあさんは、遠くに歩いていきたくないから、近所のコンビニで降ろしちゃいますよね」

「後は、学校の行事ですよね」
横から社員の小田切さんが割り込んできます。

「学校行事があると、その前の日にお金をおろす人が多いんです。全国的には分散していても、地域的には集中している場合があるでしょう?例えば運動会とかは、同じ地域の学校は同じ時期にありますものね!」

岩寺裕子さんが住んでいる町も、小学校や中学校は同じ時期に運動会がある事を、思い出していました。

「そうですねー。そうか、ご両親お弁当作りとかに気合入ってますものね」

「そうなの、だから最後は会議を開いて、数学的処理の数字に対して、人間的なさじ加減を行うの。でもその作業が終わったから、来月の人員配置表が作れるわ。来月は裕子ちゃんも戦力になってるだろうし。うふふ」

「えー!たった一か月では戦力になれませんよー」
岩寺裕子さんは、リーダーの小田さんの言葉に、ちょっとドギマギしてしまいました。

「大丈夫よ、裕子ちゃん。私も付いているから、応援しちゃうわよ!」
リーダーの小田さんは、私を見ながらニコヤカニ笑います。

「大丈夫!僕も応援するから」
社員の小田切さんも親切に言ってくれます。

「何言ってんの、小田切ちゃん!裕子ちゃんは夜勤時間帯のオペレーターさんだから小田切ちゃんが帰る頃に出勤なのよ。どうやって応援するのよー!」
リーダーの小田さんは社員の小田切さんの腰の軽さを冗談まじりに指摘します。

「やだなあ、僕だって時々夜勤帯のメンテナンスが有るから、その時には応援しちゃいますよー。さーて、じゃあ戻ろうかなー」
リーダーの小田さんの指摘にチョット旗色が悪そうな社員の小田切さんです。

そうこうしていると、小田切さんと入れ替わるようにグレーヘアのおじさんが入ってきました。

「小田さん、こんにちは。あれ?その子は今度の新人さんなのかな。始めまして、僕はここの所長をやらしてもらっている榊原と言います。これからも宜しくね」
そう言いながらキラリと光る歯を見せてにこやかに挨拶してきます。

リーダの小田さんは、所長さんである榊原さんに対して岩寺裕子さんを紹介します。
「今度、挨拶に伺おうとしていたのですけど、ちょうど良いですわ。この子が新しいバイトの岩寺裕子さんです」


「はい、これ先ほどの会議で決まった来月の呼損表だよ。これを基に来月のバイトさんの日程表の作成お願いしますね。あ、エクセルファイルはさっきメールで送ってあるからね」
所長の榊原さんは、リーダの小田さんに、資料を渡しまながら、そう言います。
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