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時次郎の語り
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「今晩はーっ、おヒサ姉さんはいるかい?」
オレはおヒサ姉さんの部屋の前で声をかける。
「ハイヨー、時ちゃんだね? 待ってたよ。それから『姉さん』はいらないって言っただろう。おヒサで良いよ!」
おヒサ姉さん、オレを自分の部屋に招いてくれながら答える。
「おっといけない、そうだった。長い間使ってた言葉は、なかなか抜けないなあ。体に染み付いちゃってるんだよなあ。おヒサさんに洗い流してもらうしかないかな?」
大分汗をかいたので風呂にでも入りたい気分だ。
「何言ってんの、馬鹿! アタシと一緒に風呂に入れるのは、アタシの亭主だけだよ。隣町の銭湯にでも行って、三助にでも頼みな」
チョットだけ赤くなりながら、時次郎に返事を返すおヒサ姉さん。
「だから、おヒサさんとオレは、今は夫婦なんでしょ? だったら、そのくらいの事をしないと、怪しまれちゃいますよ」
昼間からのツッコミモードに入って、おヒサ姉さんを茶化す。
「ウルサイーーーッ。夫婦は、八丁堀に行く時だけだよ。そりゃあ……時ちゃんは良い人だから嫌いじゃあないけどさ、まだ心の準備が出来てないのっ!」
おヒサ姉さんは眉を寄せて体をくねらせて、ホントに困っている仕草をする。
「ハイハイ、分かりました。冗談はコレぐらいにして、本題に入りますか」
と言って、オレは懐中から打ち直したばかりの真新しい刀身をおヒサ姉さんの前に置いた。さっきまで、オレの言葉で上気していたおヒサ姉さんの顔が、真顔に戻った。
「ちょいと……語りは待っておくれ。今、暑いお茶を入れるからさ」
そういうと、おヒサ姉さんは、土間に降りてヤカンを火にかけた。その間に急須にお茶っ葉を入れて、慣れた手つきで湯呑みを二つ用意する。
そうこうしていると、お湯が沸いたので、お湯を急須に入れて、急須と湯呑みをお盆に乗せて持ってくる。
お盆を二人の真ん中に置くと、急須からお茶を湯呑みに注ぐ。
湯呑みは、そこら辺の市で買ってきた安物だろうが選んだ人の品の良さが出ていて、味のある模様の入ったお揃いの物だ。
「へー……おヒサさん、良い目をしている」
急須の方は随分と使い込まれているが、丁寧に作られた一品ものだ、結構値打ちものじゃないか。
誰かから譲られたのだろうか? それに、この湯呑みは大量に作られた物だろうが、色合いも落ち着いてて、手触りも素晴らしい。値段の割に出来が良い『当たり』だろう。
さすが、売れっ子髪結いだけあって、物を選ぶ感覚は一流だ。
但し、唯一の欠点は、コレがお揃いの夫婦用の湯呑みである点だな。今まで男を見る目が無かったのか、縁が無かったのか……
何れにしても、持ち主の品の良さを感じさせる物だ。
「さっき飲んだお茶は、冷めていたから、熱いお茶を一杯飲ませてもらおうか」
入れ立ての熱いお茶を飲む。ゴクリ「あー、ウマイ」
「さて、おヒサさん、それでは、刀身がオレに語ってくれた話をしようか」
オレは、おヒサ姉さんがちゃぶ台に着いて腰を下ろすのを待ってから、おもむろに話し始める。
「この刀身は、持ち主に丁寧に扱われていたようだ。最初は感謝の念が伝わってきた」
おヒサ姉さん、オレを見つめながら真剣に聞いている。
オレはおヒサ姉さんの様子を見て続けて話す。
「最後の思いは、怒り? うーん、違うんだなあ……悲しみ? それも入っているが違う、復讐? 微妙かな、仇討ち? やはり、復讐に近い思いが一番強いかもな」
そこで、一呼吸おく。
おヒサ姉さん、さらに真剣に聞き耳を立てている。
「ハッキリしているのは、この刃物が最後に使われた時、二人の人間がこの刃物を握っていた事だ。一人は、この刃物の持ち主。それは確かだ。刃物からは明確にその気持ちが伝わって来た。もう一人に関しては、曖昧だけど、持ち主が心を許している人間らしい」
おヒサ姉さん、じーっとオレを見つめて、次の言葉を待っている。
「刃物がその事を感じるぐらいなのだろうから、よほど親しい間柄なのだろう。親友以上の、そう例えば夫婦とか許婚とか、そのぐらい親しい間柄だ」
おヒサ姉さん、オレの一言一言を頭の中で反芻している様に肯く。
「何れにしても、最後にこの刃物を握っていたであろう、この二人からは、殺意が感じられない……まあ『悪意』はあった様だ。黒い心と言うか、やはり憎しみに近いものだな」
ここでオレは一口お茶をすする。
おヒサ姉さんも釣られる様にお茶を飲む。
「でも、悪人が人を殺す時に芽生える『殺意』と言うやつは感じられない。普通、人が刃物を使う場合は、相手を殺してやりたいと思うわけだ。それが殺意となって刃物に刷り込まれるのだけど、今回はそれがないんだよな……」
段々と核心に近い話をする。
おヒサ姉さんは、質問もせずにじっと聞き役に徹している。
「それよりも、後悔の念? も見えるんだ。どちらかと言うと、怒りが強いんだ。でも、刺してしまった事に対する後悔の念だと思うけど、それも残っているんだ」
刀の思いを言葉にするのは難しい。
特に今回の様に動機がハッキリしていない場合は特にな。
「要するに……怒りに任せて刺したけど、相手が倒れてしまったので、刺した事に対する後悔の念が生まれてきた……そんな感じかな」
おヒサ姉さんは、被害者の気持ちも気になる様だ。
「刺された方か? うーん、やはり想定外というか、びっくりしたというか、見くびっていた、というか? なんか、全然考えていないところから、突然矢が飛んできた、そんな感じかな」
正直、今回の刃物の記憶は言葉にしにくい事だらけだ。
もういっそ、明確な殺意と被害者の無念さ、みたいな物が残っていたら良かったのだが。
「刺された方の思いは、刺さったままのたうち回ったりすれば、その痛みが刃物に残る。だけど、今回は刺してから直ぐに抜いたのだろう、刺された方の痛みが殆ど刃物には残っていない」
ここで、オレは湯呑みに残っているお茶を一気に飲み干した。
「今回刃物からは出て来た記憶は、そんな感じだ」
オレの話がひと段落したので、おヒサ姉さんは自分の気持ちをオレに伝える。
「まあ? じゃあ、やはり上州の暴れん坊と許婚の娘さんが、二人でその行方不明の嫡男さんを刺したという事? 余程結婚するのが嫌だったのかしら?」
「うーん? イヤ、逆じゃあないか」
おヒサ姉さんの仮説をやんわりと否定する。
「え? どういう事」
「嫡男と許婚の娘さんが、二人で上州の暴れん坊を刺した、そちらの様な気がする」
オレの中で浮かんでいるイメージを口にする。
「だって、それならなんで上州の暴れん坊を八丁堀の自宅まで呼んだのかしら?そんな事をしたら、人に見られてしまう危険が増すじゃない。お寺の裏にでも呼びつけて、ブス、と刺せば、誰にも見られないし。それに、そもそも、そんな話では上州の暴れん坊との繋がりが全然出てこないわ?」
おヒサ姉さん、色々と矛盾点をついてくる。
「そうだよなあー。オレも、そこら辺の事情は分からないが……兎に角、八丁堀の旦那の推理は間違ってる、と言うのが、オレがこの刃物から教えてもらった事実だ」
もう一杯お茶を注いでもらいながら、オレなりの結論をおヒサ姉さんに告げる。
「なぜ、許婚の娘さんが、上州の暴れん坊とつるんでいたのか? 八丁堀のお隣の嫡男さんと許婚の娘さんが神隠しにあったのは何故か?それは、八丁堀の旦那に調べてもらうしか無いだろう」
おヒサ姉さんが言うように、正直、分からないことだらけだ。
「そこら辺を調べるのは、調査の専門家である、あちらに任せればいいんじゃないか? 配下の岡っ引きを総動員すれば、真実が見えてくるさ」
でもまあ、オレはオレの仕事をするだけだ。
「ただ言えるのは、多分何処かで死んでるのは、十中八九、上州の暴れん坊の方だ。嫡男と許婚の娘さんは、刺されてないね。『刺した方』だ」
オレはおヒサ姉さんの部屋の前で声をかける。
「ハイヨー、時ちゃんだね? 待ってたよ。それから『姉さん』はいらないって言っただろう。おヒサで良いよ!」
おヒサ姉さん、オレを自分の部屋に招いてくれながら答える。
「おっといけない、そうだった。長い間使ってた言葉は、なかなか抜けないなあ。体に染み付いちゃってるんだよなあ。おヒサさんに洗い流してもらうしかないかな?」
大分汗をかいたので風呂にでも入りたい気分だ。
「何言ってんの、馬鹿! アタシと一緒に風呂に入れるのは、アタシの亭主だけだよ。隣町の銭湯にでも行って、三助にでも頼みな」
チョットだけ赤くなりながら、時次郎に返事を返すおヒサ姉さん。
「だから、おヒサさんとオレは、今は夫婦なんでしょ? だったら、そのくらいの事をしないと、怪しまれちゃいますよ」
昼間からのツッコミモードに入って、おヒサ姉さんを茶化す。
「ウルサイーーーッ。夫婦は、八丁堀に行く時だけだよ。そりゃあ……時ちゃんは良い人だから嫌いじゃあないけどさ、まだ心の準備が出来てないのっ!」
おヒサ姉さんは眉を寄せて体をくねらせて、ホントに困っている仕草をする。
「ハイハイ、分かりました。冗談はコレぐらいにして、本題に入りますか」
と言って、オレは懐中から打ち直したばかりの真新しい刀身をおヒサ姉さんの前に置いた。さっきまで、オレの言葉で上気していたおヒサ姉さんの顔が、真顔に戻った。
「ちょいと……語りは待っておくれ。今、暑いお茶を入れるからさ」
そういうと、おヒサ姉さんは、土間に降りてヤカンを火にかけた。その間に急須にお茶っ葉を入れて、慣れた手つきで湯呑みを二つ用意する。
そうこうしていると、お湯が沸いたので、お湯を急須に入れて、急須と湯呑みをお盆に乗せて持ってくる。
お盆を二人の真ん中に置くと、急須からお茶を湯呑みに注ぐ。
湯呑みは、そこら辺の市で買ってきた安物だろうが選んだ人の品の良さが出ていて、味のある模様の入ったお揃いの物だ。
「へー……おヒサさん、良い目をしている」
急須の方は随分と使い込まれているが、丁寧に作られた一品ものだ、結構値打ちものじゃないか。
誰かから譲られたのだろうか? それに、この湯呑みは大量に作られた物だろうが、色合いも落ち着いてて、手触りも素晴らしい。値段の割に出来が良い『当たり』だろう。
さすが、売れっ子髪結いだけあって、物を選ぶ感覚は一流だ。
但し、唯一の欠点は、コレがお揃いの夫婦用の湯呑みである点だな。今まで男を見る目が無かったのか、縁が無かったのか……
何れにしても、持ち主の品の良さを感じさせる物だ。
「さっき飲んだお茶は、冷めていたから、熱いお茶を一杯飲ませてもらおうか」
入れ立ての熱いお茶を飲む。ゴクリ「あー、ウマイ」
「さて、おヒサさん、それでは、刀身がオレに語ってくれた話をしようか」
オレは、おヒサ姉さんがちゃぶ台に着いて腰を下ろすのを待ってから、おもむろに話し始める。
「この刀身は、持ち主に丁寧に扱われていたようだ。最初は感謝の念が伝わってきた」
おヒサ姉さん、オレを見つめながら真剣に聞いている。
オレはおヒサ姉さんの様子を見て続けて話す。
「最後の思いは、怒り? うーん、違うんだなあ……悲しみ? それも入っているが違う、復讐? 微妙かな、仇討ち? やはり、復讐に近い思いが一番強いかもな」
そこで、一呼吸おく。
おヒサ姉さん、さらに真剣に聞き耳を立てている。
「ハッキリしているのは、この刃物が最後に使われた時、二人の人間がこの刃物を握っていた事だ。一人は、この刃物の持ち主。それは確かだ。刃物からは明確にその気持ちが伝わって来た。もう一人に関しては、曖昧だけど、持ち主が心を許している人間らしい」
おヒサ姉さん、じーっとオレを見つめて、次の言葉を待っている。
「刃物がその事を感じるぐらいなのだろうから、よほど親しい間柄なのだろう。親友以上の、そう例えば夫婦とか許婚とか、そのぐらい親しい間柄だ」
おヒサ姉さん、オレの一言一言を頭の中で反芻している様に肯く。
「何れにしても、最後にこの刃物を握っていたであろう、この二人からは、殺意が感じられない……まあ『悪意』はあった様だ。黒い心と言うか、やはり憎しみに近いものだな」
ここでオレは一口お茶をすする。
おヒサ姉さんも釣られる様にお茶を飲む。
「でも、悪人が人を殺す時に芽生える『殺意』と言うやつは感じられない。普通、人が刃物を使う場合は、相手を殺してやりたいと思うわけだ。それが殺意となって刃物に刷り込まれるのだけど、今回はそれがないんだよな……」
段々と核心に近い話をする。
おヒサ姉さんは、質問もせずにじっと聞き役に徹している。
「それよりも、後悔の念? も見えるんだ。どちらかと言うと、怒りが強いんだ。でも、刺してしまった事に対する後悔の念だと思うけど、それも残っているんだ」
刀の思いを言葉にするのは難しい。
特に今回の様に動機がハッキリしていない場合は特にな。
「要するに……怒りに任せて刺したけど、相手が倒れてしまったので、刺した事に対する後悔の念が生まれてきた……そんな感じかな」
おヒサ姉さんは、被害者の気持ちも気になる様だ。
「刺された方か? うーん、やはり想定外というか、びっくりしたというか、見くびっていた、というか? なんか、全然考えていないところから、突然矢が飛んできた、そんな感じかな」
正直、今回の刃物の記憶は言葉にしにくい事だらけだ。
もういっそ、明確な殺意と被害者の無念さ、みたいな物が残っていたら良かったのだが。
「刺された方の思いは、刺さったままのたうち回ったりすれば、その痛みが刃物に残る。だけど、今回は刺してから直ぐに抜いたのだろう、刺された方の痛みが殆ど刃物には残っていない」
ここで、オレは湯呑みに残っているお茶を一気に飲み干した。
「今回刃物からは出て来た記憶は、そんな感じだ」
オレの話がひと段落したので、おヒサ姉さんは自分の気持ちをオレに伝える。
「まあ? じゃあ、やはり上州の暴れん坊と許婚の娘さんが、二人でその行方不明の嫡男さんを刺したという事? 余程結婚するのが嫌だったのかしら?」
「うーん? イヤ、逆じゃあないか」
おヒサ姉さんの仮説をやんわりと否定する。
「え? どういう事」
「嫡男と許婚の娘さんが、二人で上州の暴れん坊を刺した、そちらの様な気がする」
オレの中で浮かんでいるイメージを口にする。
「だって、それならなんで上州の暴れん坊を八丁堀の自宅まで呼んだのかしら?そんな事をしたら、人に見られてしまう危険が増すじゃない。お寺の裏にでも呼びつけて、ブス、と刺せば、誰にも見られないし。それに、そもそも、そんな話では上州の暴れん坊との繋がりが全然出てこないわ?」
おヒサ姉さん、色々と矛盾点をついてくる。
「そうだよなあー。オレも、そこら辺の事情は分からないが……兎に角、八丁堀の旦那の推理は間違ってる、と言うのが、オレがこの刃物から教えてもらった事実だ」
もう一杯お茶を注いでもらいながら、オレなりの結論をおヒサ姉さんに告げる。
「なぜ、許婚の娘さんが、上州の暴れん坊とつるんでいたのか? 八丁堀のお隣の嫡男さんと許婚の娘さんが神隠しにあったのは何故か?それは、八丁堀の旦那に調べてもらうしか無いだろう」
おヒサ姉さんが言うように、正直、分からないことだらけだ。
「そこら辺を調べるのは、調査の専門家である、あちらに任せればいいんじゃないか? 配下の岡っ引きを総動員すれば、真実が見えてくるさ」
でもまあ、オレはオレの仕事をするだけだ。
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