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6分の1のサバイブ
新たなる能力
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先ほどよりも二回りは大きい上に、2つに分裂したヴァージニア。それでも立ち向かうべき理由が、2人にはある。
せっかく仲直り出来そうだった玲奈を、このまま、ヴァージニアに取り込まれたままには出来ない。コペルも星子も、気合いを入れて巨大な双腕を見据えた。
「待ってて、玲奈……。絶対助けるから」
「うん……」
2手に分かれてそれぞれの腕と戦うことにした。早速、星子はスターを召喚する。
「なんか、コペル……。雰囲気変わったわね」
今までと違い、純白に輝くコペルを見て、星子はそう口にした。
「そうかな? でも、すごく力が湧いてくるよ」
コペルはニヤリと口角を上げてそう答えた。
「行くぞ、星子!」
「スター! 貫けーー!!」
ヴァージニアへと飛びかかる2人を見て、カルマは踵を返して歩いていく。あの大きさの能力を倒せるわけが無い。勝利を確信して、自分はこの場から引こうというのが彼の考えだった。
「おい、どこ行く気だ?」
突然、そんな声がした。周りを見渡しても、誰もいない。
「上だよ、上!」
声の通り、カルマが上を向くとそこには。
「よ、カルマ」
家にいたはずの龍一、彼方、武情の3人がいた。
「げ、お前ら!」
3人はドローンから手を離してシャッター街に降り立った。龍一は彼方に肩を貸して、タイミングピッタリだなって感じにニッタリと自信ありげな顔をした。武情は膝まであるトレンチコートをなびかせて、腕を組んで憮然と立っている。
「テラスの戦力の事もあるし、もう夕暮れも近いしな。やって来たぜ」
一方、コペルは巨大な右腕へと飛びかかり、蹴りを一撃繰り出した。
その凄まじい衝撃に、ヴァージニアはたまらずグンっと後退した。
目の前の敵をキッと見据える。ヴァージニアはすぐに拳を握り、コペルへと殴り掛かる。
「はっ!」
コペルは右腕の掌を差し出す。衝撃波が走って、難なくヴァージニアの拳を相殺してみせた。
「はあっ!」
そのまま右手を握りしめて、強烈な一撃を食らわせる。ヴァージニアは踏ん張りきれずに、ぶっ飛んでいった。
対して、星子は苦戦を強いられていた。
「おりゃあっ!!」
スターを突き刺すが、ダメージが入っていない。振りかざされた拳を堪えきれずに、よろめいた。
「くっ……!」
必殺の一撃を繰り出すべく飛び上がるが、スピードも段違いのヴァージニアに拳で弾かれ、吹き飛んでいった。
「おっと!」
それを龍一と彼方がナイスキャッチ。
「龍一! 皆! なんでいるの!?」
「心配になってな。どうやらカンは当たったらしいな」
左腕のヴァージニアが指で地を這いながらこちらへと向かってくる。そのまま跳ね上がり、空から鉄槌を振りかざす!
「皆、避けろ!」
4人は一斉に横へ飛ぶ。ただ1人余裕でいたカルマだったのだが、異変に気づいたのはその後すぐだった。
「な、俺も攻撃すんのかよ!?」
慌てて飛び退く。間一髪、鉄槌から身をかわした。
「お前、操れてないのかよ!」
龍一はカルマへとしっかり突っ込む。
「さっきは1本だけだったから恐らく、右腕が本体なんだ! 左腕の方は邪念だけで出来上がったんだ! 見境無く襲ってくる!」
龍一は理解したようで、星子の元へ駆け寄る。
「星子、コペルの方を手伝ってくれ。こいつらは俺たちがやる」
星子はうんと頷く。
「分かったわ。そっちは任せた!」
一直線にコペルの元へ向かう星子を見送って、3人は目を合わせる。
「さてどうするか、だな」
彼方がニヤリと笑って答えた。
「まず、俺は戦闘に参加出来ない。だから、とりあえずあのデカいやつの中に入り込んで、動きを抑制する」
龍一はうんと頷いて、武情に目をやる。
「じゃ、戦うのは俺と、武情と」
そしてカルマの肩をぽんと叩く。
「お前もだな」
「俺もかよ!」
驚愕するカルマを、当たり前だろって目で武情が見つめる。
「お前がやったんだろ、これ。手伝えよ。お前も死ぬぞ」
そんなこと言ったって、と言おうとしたカルマだったが、ヴァージニアの攻撃に思わず飛び退く。
「分かったよ! やってやるさ、今回限りな!」
「よし、決まりだな」
カルマを中心に3人が駆け寄る。
「まずはヴァージニアを引き付けて、彼方を植え付けるぞ」
「頼むぜ」
ヴァージニアは直ぐに這いより4人へと鉄槌を振りかざす。ギリギリまで引き付けて、横へ飛び退いた。
「今だ、彼方ーーっ!!」
地面を叩きつけた瞬間に、一気に龍一が彼方を投げる。
「スピリット!」
エメラルドグリーンの腕がヴァージニアを掴む。彼方のスピリットは戦闘をこなせないが、生命の中へと潜り込むという特殊な能力がある。スピリットの特性を活かして、ヴァージニアのその中へと潜り込んでいった。
「ここからだ! 武情、カルマ、やるぞ!」
彼方の抑制が効いているのか、ほんの若干動きが鈍くなった左腕を前に、3人が立ちはだかる。
「サテライト・メビウス!」
龍一の能力は太陽エネルギーの凝縮された弾丸を射撃できる6機のドローンを生み出す。
「クール・ブラスト!」
武情は炎を操る。どんなものでも、ピンポイントで焼き払える灼熱の能力。
「レッド・キャビン!」
カルマは溶解液を生み出す。レッド・キャビンに溶かせないものは無い!
「とにかくあのデカいのが予測出来ない動きだ! いくぞ、皆!」
龍一はドローンに捕まり上昇していく。それを合図に、カルマはタイルを溶かして地中へと姿を消す。
立ちはだかる灼熱の能力。しかしヴァージニアは意にも介せず、思い切り武情を殴りつける。
「悪いが初めっから本気でやる。クール・ダブル・ブースト!」
凄まじい熱量が武情を包み込む。瞬間、両腕が圧倒的なエネルギーで燃え上がる!
「おらあっ!!」
両腕から放たれる最大熱量の火炎がヴァージニアを直撃する。しかし、その勢いは収まらない。
「おらあぁっっ!!」
更に気合いを入れてヴァージニアを受け止める! 歯を食いしばって、精一杯のパワーで叩きつける巨大な拳を押し上げる。
「カルマァ! 今だっ!」
武情が叫ぶと、地面が破裂した。カルマの
溶解液で急激に溶けていく地面を踏み外し、落とし穴へと落ちていく。
12本の腕を器用に使い、直ぐに落とし穴から這い上がろうとする。しかし、
「メビウス! 集中砲火だ!」
5機のドローンからの一斉射撃がヴァージニアを襲う。正確に、精密に、指の部分のみを狙い撃っていく。踏ん張っていたヴァージニアだったが、やがて指が剥がれ、手の甲から落とし穴へと落下した。
しかし、ヴァージニアは怯んだのみでピンピンしている。またしてもガサガサと指で落とし穴から這い上がり、掌の目でたった今降り立った龍一を見つけると殴り掛かる!
その時だった。ヴァージニアの動きが止まった。一瞬、ピクリとも動けなくなってしまう。
「俺も頑張ってますぜー!」
ベストなタイミングを見計らって、彼方がスピリットを駆使してヴァージニアを乗っ取った。ほんの一瞬だったが、その一瞬、龍一は切り札、インパクト・ファイブを組み上げた!
「これで終わりだな! 行くぜー!」
ヴァージニアを囲んで、一気に最大出力の攻撃を叩き込む!
「インパクト・ファイブ!」
「クール・ダブル・ブラスト!」
「レッド・キャビン!」
圧倒的エネルギーのトリプル・インパクト! ヴァージニアは全ての攻撃をモロに受け、灰も残らない程のダメージに霧散した。
「いっちょ上がり、だな」
龍一はニヤリと口角を上げた。
「久しぶりの共闘、なかなか楽しかったぜ」
武情はカルマの肩をがっしり掴んだ。
「今回だけだ」
カルマはふてぶてしく武情を睨みつけた。まんざらでもなさそうにも見える。
「終わったか……」
そばの雑草から彼方が出てきた。攻撃を受ける前に雑草へと移動していたようだ。
「ああ、あとは、あいつらだ」
「はあっ!」
コペルの掌底にヴァージニアが吹き飛ぶ。ズンと音を立てて転がっていく。
「コペル、何かすごい強くなったわね……」
「でも、まだだ……。星子、考えがある」
ヴァージニアの攻撃をがっちり受け止めて、星子に提案する。
「俺が動きを抑えるから、スターでこいつを貫いて、取り込まれた松山さんを引っ張り出すんだ」
星子の決断は早かった。もう悩んでる訳にもいかない。一刻も早く玲奈を助け出さなくては。
「分かったわ、やる」
「よし、いくぞ!」
そう決まると、コペルは思い切りヴァージニアを投げ飛ばした。ズシン! と一際大きな音を立てて地面にめり込むのを、更に両腕で精一杯押さえつける。瞬間、星子の身体を爆発が駆け巡る!
「玲奈ーーーーーっ!!」
一直線にヴァージニアを貫き、体内へと潜り込む。
「斑木、ちゃん……」
「玲奈!?」
取り込まれて身動きの取れない玲奈が必死に苦しみに耐えていた。
「玲奈待ってて……、きゃっ!」
ヴァージニアの肉にもまれて、星子の視界が真っ暗に染まる。それでも手を伸ばして、玲奈を探す。どこ。どこにいるの、玲奈。
「あっ!」
小さな指に指が擦れる。そのまま玲奈の手をギュッと握りしめた。
「斑木ちゃん……。もういいよ、もう……。私のことなんか、忘れて……、これごとやっつけて」
「出来る訳ないでしょばか! 一生忘れてやんないんだから!」
振りほどこうとする手を必死に掴む。掴んでいなくてはならない。かつてないほどの使命感が、全力の星子を埋め尽くす。
「もう、離して……。お願い」
「離さない! そうよ、絶対離さない! これが終わったらもっと握りしめてあげるんだから! もっともっと、もっともっと! 玲奈と仲良くなるって、決めたの!」
「斑木ちゃん……」
思い切り力を込めて、玲奈を引っ張る。もっと! もっと!!
「絶対死なせない。友だちなんだから、裏切らないで、私の事も……!」
瞬間、玲奈の身体が一気に軽くなるのを感じた。精一杯の力を込めて、腕を引き上げる。そして、ヴァージニアの身体から玲奈が飛び出してきた。
「あっ、私が出れない……!」
そのまま飲み込まれていく星子。
「そんな、斑木ちゃんっ!」
しかし、その手を更に掴む。コペルだ。コペルがそのまま星子を引き上げた。
「し、死ぬかと思った……」
グロッキー気味の星子の肩を持つ。
「本当に頑張ったな。あとは任せて、星子は松山さんを」
「分かった。やっちゃって、コペル!」
そう言って玲奈の元に駆け寄り、ギュッと抱きしめる。
「玲奈!」
「斑木ちゃん! ありがとう……!」
星子は首を横に振って、玲奈の頭を撫でた。
「また頑張ろ、玲奈」
「うん、でもね、斑木ちゃん……」
「何?」
「正人くんと1ヶ月で別れたのは許さないから……、私、好きだったのに……」
「え、そ、それは……、ごめんなさい」
2人が抱き合ったのを見届けて、コペルはヴァージニアの方へと振り向く。星子が言っていた通り、いつもよりもすごい力が湧いてくる。それでいて、光がすごく優しくて、気持ちは穏やかになっていく。
静かに腕を前に出し、構えを取る。迎え撃つのは怨念と邪念の権化。
どんなに憎しみがあったって、ほんのひとしずくほどの優しさがあれば、嘘みたいに晴れ渡る。
どんなに悲しく辛い過去があったって、たった1人が連れてくる楽しい未来があれば、それだけで拭い去れる瞬間もある。
「それが仲間の力だ。1人きりでは生きていけないから、手を差し伸べて始まる未来がある!」
掌底にヴァージニアの動きが止まる。コペルは更に1歩、ぐっと踏みしめて前に進む。
「お前はもう必要ない。もう頼らなくても、松山さんは前に進める!」
蹴りあげて、ヴァージニアが宙に舞う。更にもう1歩、大きく踏み出して飛び上がる。
「お前を浄化する。俺の能力で!」
本気の掌底がヴァージニアに撃ち込まれる。眩い光がヴァージニアをたちまち包み込んで、衝撃で全身を波立たせながら巨大な右腕は霧散していった。
戦いの終わりを悟り、星子の元に駆け寄る。
「星子、松山さんは?」
星子はおんぶされて眠っている玲奈の顔を見せた。
「無事よ。あれをやっつけたのと同時に、気を失ったちゃったけど、生きてる」
玲奈は先程とは違う、穏やかな顔でスースーと寝息を立てているようだった。
「憑き物が取れた、って感じでしょ?」
「うん。良かったね、松山さん……」
そう言って笑っていると、2人の元に他の連中も集まってきた。
「これで一件落着か?」
「龍一、皆……。助かったよ」
「結構頑張ったよ、俺たち」
彼方が誇らしげに鼻を擦る。そして一同でワハハと笑い合ってから、
「さてと、カルマよ」
武情がカルマを睨みつける。
「分かってるよ、彼方くんの母さんの居場所だろ? 教えるよ」
彼方の目が真剣味を増す。他の面々も、真剣な面持ちでカルマを見つめる。
「マックスの元に向かうのが1番手っ取り早い。コペルってやつを持ってこいっても言われてるからな。お前ら、傷を治してから俺らの寝所に来いよ」
カルマは不敵に笑い、皆を一瞥してから、
「傷治したらまたここに来い」
とだけ言い残して、その場を去っていった。
その後、松山玲奈は気を取り戻したが、どうやら一連の騒動は忘れていて、星子と仲直りしたことだけぼんやり覚えているのみという事なので、そのまま家へと送り返した。
今日の所はここで解散だな、ということで、各々家路に着いたのであった。
布団に潜ってから、コペルは自分の新たなる能力について考えた。
優しさが力になる能力。そう思った。
でも、何となく、この能力が自分に生まれた理由が分かる気がする。そうだよな、ゼッター……。
夜が更けていき、コペルはすっかり眠り込んだ。この夜が明ければ、また学校に皆がいる。その事を楽しみにして、今宵を過ごしたのであった。
せっかく仲直り出来そうだった玲奈を、このまま、ヴァージニアに取り込まれたままには出来ない。コペルも星子も、気合いを入れて巨大な双腕を見据えた。
「待ってて、玲奈……。絶対助けるから」
「うん……」
2手に分かれてそれぞれの腕と戦うことにした。早速、星子はスターを召喚する。
「なんか、コペル……。雰囲気変わったわね」
今までと違い、純白に輝くコペルを見て、星子はそう口にした。
「そうかな? でも、すごく力が湧いてくるよ」
コペルはニヤリと口角を上げてそう答えた。
「行くぞ、星子!」
「スター! 貫けーー!!」
ヴァージニアへと飛びかかる2人を見て、カルマは踵を返して歩いていく。あの大きさの能力を倒せるわけが無い。勝利を確信して、自分はこの場から引こうというのが彼の考えだった。
「おい、どこ行く気だ?」
突然、そんな声がした。周りを見渡しても、誰もいない。
「上だよ、上!」
声の通り、カルマが上を向くとそこには。
「よ、カルマ」
家にいたはずの龍一、彼方、武情の3人がいた。
「げ、お前ら!」
3人はドローンから手を離してシャッター街に降り立った。龍一は彼方に肩を貸して、タイミングピッタリだなって感じにニッタリと自信ありげな顔をした。武情は膝まであるトレンチコートをなびかせて、腕を組んで憮然と立っている。
「テラスの戦力の事もあるし、もう夕暮れも近いしな。やって来たぜ」
一方、コペルは巨大な右腕へと飛びかかり、蹴りを一撃繰り出した。
その凄まじい衝撃に、ヴァージニアはたまらずグンっと後退した。
目の前の敵をキッと見据える。ヴァージニアはすぐに拳を握り、コペルへと殴り掛かる。
「はっ!」
コペルは右腕の掌を差し出す。衝撃波が走って、難なくヴァージニアの拳を相殺してみせた。
「はあっ!」
そのまま右手を握りしめて、強烈な一撃を食らわせる。ヴァージニアは踏ん張りきれずに、ぶっ飛んでいった。
対して、星子は苦戦を強いられていた。
「おりゃあっ!!」
スターを突き刺すが、ダメージが入っていない。振りかざされた拳を堪えきれずに、よろめいた。
「くっ……!」
必殺の一撃を繰り出すべく飛び上がるが、スピードも段違いのヴァージニアに拳で弾かれ、吹き飛んでいった。
「おっと!」
それを龍一と彼方がナイスキャッチ。
「龍一! 皆! なんでいるの!?」
「心配になってな。どうやらカンは当たったらしいな」
左腕のヴァージニアが指で地を這いながらこちらへと向かってくる。そのまま跳ね上がり、空から鉄槌を振りかざす!
「皆、避けろ!」
4人は一斉に横へ飛ぶ。ただ1人余裕でいたカルマだったのだが、異変に気づいたのはその後すぐだった。
「な、俺も攻撃すんのかよ!?」
慌てて飛び退く。間一髪、鉄槌から身をかわした。
「お前、操れてないのかよ!」
龍一はカルマへとしっかり突っ込む。
「さっきは1本だけだったから恐らく、右腕が本体なんだ! 左腕の方は邪念だけで出来上がったんだ! 見境無く襲ってくる!」
龍一は理解したようで、星子の元へ駆け寄る。
「星子、コペルの方を手伝ってくれ。こいつらは俺たちがやる」
星子はうんと頷く。
「分かったわ。そっちは任せた!」
一直線にコペルの元へ向かう星子を見送って、3人は目を合わせる。
「さてどうするか、だな」
彼方がニヤリと笑って答えた。
「まず、俺は戦闘に参加出来ない。だから、とりあえずあのデカいやつの中に入り込んで、動きを抑制する」
龍一はうんと頷いて、武情に目をやる。
「じゃ、戦うのは俺と、武情と」
そしてカルマの肩をぽんと叩く。
「お前もだな」
「俺もかよ!」
驚愕するカルマを、当たり前だろって目で武情が見つめる。
「お前がやったんだろ、これ。手伝えよ。お前も死ぬぞ」
そんなこと言ったって、と言おうとしたカルマだったが、ヴァージニアの攻撃に思わず飛び退く。
「分かったよ! やってやるさ、今回限りな!」
「よし、決まりだな」
カルマを中心に3人が駆け寄る。
「まずはヴァージニアを引き付けて、彼方を植え付けるぞ」
「頼むぜ」
ヴァージニアは直ぐに這いより4人へと鉄槌を振りかざす。ギリギリまで引き付けて、横へ飛び退いた。
「今だ、彼方ーーっ!!」
地面を叩きつけた瞬間に、一気に龍一が彼方を投げる。
「スピリット!」
エメラルドグリーンの腕がヴァージニアを掴む。彼方のスピリットは戦闘をこなせないが、生命の中へと潜り込むという特殊な能力がある。スピリットの特性を活かして、ヴァージニアのその中へと潜り込んでいった。
「ここからだ! 武情、カルマ、やるぞ!」
彼方の抑制が効いているのか、ほんの若干動きが鈍くなった左腕を前に、3人が立ちはだかる。
「サテライト・メビウス!」
龍一の能力は太陽エネルギーの凝縮された弾丸を射撃できる6機のドローンを生み出す。
「クール・ブラスト!」
武情は炎を操る。どんなものでも、ピンポイントで焼き払える灼熱の能力。
「レッド・キャビン!」
カルマは溶解液を生み出す。レッド・キャビンに溶かせないものは無い!
「とにかくあのデカいのが予測出来ない動きだ! いくぞ、皆!」
龍一はドローンに捕まり上昇していく。それを合図に、カルマはタイルを溶かして地中へと姿を消す。
立ちはだかる灼熱の能力。しかしヴァージニアは意にも介せず、思い切り武情を殴りつける。
「悪いが初めっから本気でやる。クール・ダブル・ブースト!」
凄まじい熱量が武情を包み込む。瞬間、両腕が圧倒的なエネルギーで燃え上がる!
「おらあっ!!」
両腕から放たれる最大熱量の火炎がヴァージニアを直撃する。しかし、その勢いは収まらない。
「おらあぁっっ!!」
更に気合いを入れてヴァージニアを受け止める! 歯を食いしばって、精一杯のパワーで叩きつける巨大な拳を押し上げる。
「カルマァ! 今だっ!」
武情が叫ぶと、地面が破裂した。カルマの
溶解液で急激に溶けていく地面を踏み外し、落とし穴へと落ちていく。
12本の腕を器用に使い、直ぐに落とし穴から這い上がろうとする。しかし、
「メビウス! 集中砲火だ!」
5機のドローンからの一斉射撃がヴァージニアを襲う。正確に、精密に、指の部分のみを狙い撃っていく。踏ん張っていたヴァージニアだったが、やがて指が剥がれ、手の甲から落とし穴へと落下した。
しかし、ヴァージニアは怯んだのみでピンピンしている。またしてもガサガサと指で落とし穴から這い上がり、掌の目でたった今降り立った龍一を見つけると殴り掛かる!
その時だった。ヴァージニアの動きが止まった。一瞬、ピクリとも動けなくなってしまう。
「俺も頑張ってますぜー!」
ベストなタイミングを見計らって、彼方がスピリットを駆使してヴァージニアを乗っ取った。ほんの一瞬だったが、その一瞬、龍一は切り札、インパクト・ファイブを組み上げた!
「これで終わりだな! 行くぜー!」
ヴァージニアを囲んで、一気に最大出力の攻撃を叩き込む!
「インパクト・ファイブ!」
「クール・ダブル・ブラスト!」
「レッド・キャビン!」
圧倒的エネルギーのトリプル・インパクト! ヴァージニアは全ての攻撃をモロに受け、灰も残らない程のダメージに霧散した。
「いっちょ上がり、だな」
龍一はニヤリと口角を上げた。
「久しぶりの共闘、なかなか楽しかったぜ」
武情はカルマの肩をがっしり掴んだ。
「今回だけだ」
カルマはふてぶてしく武情を睨みつけた。まんざらでもなさそうにも見える。
「終わったか……」
そばの雑草から彼方が出てきた。攻撃を受ける前に雑草へと移動していたようだ。
「ああ、あとは、あいつらだ」
「はあっ!」
コペルの掌底にヴァージニアが吹き飛ぶ。ズンと音を立てて転がっていく。
「コペル、何かすごい強くなったわね……」
「でも、まだだ……。星子、考えがある」
ヴァージニアの攻撃をがっちり受け止めて、星子に提案する。
「俺が動きを抑えるから、スターでこいつを貫いて、取り込まれた松山さんを引っ張り出すんだ」
星子の決断は早かった。もう悩んでる訳にもいかない。一刻も早く玲奈を助け出さなくては。
「分かったわ、やる」
「よし、いくぞ!」
そう決まると、コペルは思い切りヴァージニアを投げ飛ばした。ズシン! と一際大きな音を立てて地面にめり込むのを、更に両腕で精一杯押さえつける。瞬間、星子の身体を爆発が駆け巡る!
「玲奈ーーーーーっ!!」
一直線にヴァージニアを貫き、体内へと潜り込む。
「斑木、ちゃん……」
「玲奈!?」
取り込まれて身動きの取れない玲奈が必死に苦しみに耐えていた。
「玲奈待ってて……、きゃっ!」
ヴァージニアの肉にもまれて、星子の視界が真っ暗に染まる。それでも手を伸ばして、玲奈を探す。どこ。どこにいるの、玲奈。
「あっ!」
小さな指に指が擦れる。そのまま玲奈の手をギュッと握りしめた。
「斑木ちゃん……。もういいよ、もう……。私のことなんか、忘れて……、これごとやっつけて」
「出来る訳ないでしょばか! 一生忘れてやんないんだから!」
振りほどこうとする手を必死に掴む。掴んでいなくてはならない。かつてないほどの使命感が、全力の星子を埋め尽くす。
「もう、離して……。お願い」
「離さない! そうよ、絶対離さない! これが終わったらもっと握りしめてあげるんだから! もっともっと、もっともっと! 玲奈と仲良くなるって、決めたの!」
「斑木ちゃん……」
思い切り力を込めて、玲奈を引っ張る。もっと! もっと!!
「絶対死なせない。友だちなんだから、裏切らないで、私の事も……!」
瞬間、玲奈の身体が一気に軽くなるのを感じた。精一杯の力を込めて、腕を引き上げる。そして、ヴァージニアの身体から玲奈が飛び出してきた。
「あっ、私が出れない……!」
そのまま飲み込まれていく星子。
「そんな、斑木ちゃんっ!」
しかし、その手を更に掴む。コペルだ。コペルがそのまま星子を引き上げた。
「し、死ぬかと思った……」
グロッキー気味の星子の肩を持つ。
「本当に頑張ったな。あとは任せて、星子は松山さんを」
「分かった。やっちゃって、コペル!」
そう言って玲奈の元に駆け寄り、ギュッと抱きしめる。
「玲奈!」
「斑木ちゃん! ありがとう……!」
星子は首を横に振って、玲奈の頭を撫でた。
「また頑張ろ、玲奈」
「うん、でもね、斑木ちゃん……」
「何?」
「正人くんと1ヶ月で別れたのは許さないから……、私、好きだったのに……」
「え、そ、それは……、ごめんなさい」
2人が抱き合ったのを見届けて、コペルはヴァージニアの方へと振り向く。星子が言っていた通り、いつもよりもすごい力が湧いてくる。それでいて、光がすごく優しくて、気持ちは穏やかになっていく。
静かに腕を前に出し、構えを取る。迎え撃つのは怨念と邪念の権化。
どんなに憎しみがあったって、ほんのひとしずくほどの優しさがあれば、嘘みたいに晴れ渡る。
どんなに悲しく辛い過去があったって、たった1人が連れてくる楽しい未来があれば、それだけで拭い去れる瞬間もある。
「それが仲間の力だ。1人きりでは生きていけないから、手を差し伸べて始まる未来がある!」
掌底にヴァージニアの動きが止まる。コペルは更に1歩、ぐっと踏みしめて前に進む。
「お前はもう必要ない。もう頼らなくても、松山さんは前に進める!」
蹴りあげて、ヴァージニアが宙に舞う。更にもう1歩、大きく踏み出して飛び上がる。
「お前を浄化する。俺の能力で!」
本気の掌底がヴァージニアに撃ち込まれる。眩い光がヴァージニアをたちまち包み込んで、衝撃で全身を波立たせながら巨大な右腕は霧散していった。
戦いの終わりを悟り、星子の元に駆け寄る。
「星子、松山さんは?」
星子はおんぶされて眠っている玲奈の顔を見せた。
「無事よ。あれをやっつけたのと同時に、気を失ったちゃったけど、生きてる」
玲奈は先程とは違う、穏やかな顔でスースーと寝息を立てているようだった。
「憑き物が取れた、って感じでしょ?」
「うん。良かったね、松山さん……」
そう言って笑っていると、2人の元に他の連中も集まってきた。
「これで一件落着か?」
「龍一、皆……。助かったよ」
「結構頑張ったよ、俺たち」
彼方が誇らしげに鼻を擦る。そして一同でワハハと笑い合ってから、
「さてと、カルマよ」
武情がカルマを睨みつける。
「分かってるよ、彼方くんの母さんの居場所だろ? 教えるよ」
彼方の目が真剣味を増す。他の面々も、真剣な面持ちでカルマを見つめる。
「マックスの元に向かうのが1番手っ取り早い。コペルってやつを持ってこいっても言われてるからな。お前ら、傷を治してから俺らの寝所に来いよ」
カルマは不敵に笑い、皆を一瞥してから、
「傷治したらまたここに来い」
とだけ言い残して、その場を去っていった。
その後、松山玲奈は気を取り戻したが、どうやら一連の騒動は忘れていて、星子と仲直りしたことだけぼんやり覚えているのみという事なので、そのまま家へと送り返した。
今日の所はここで解散だな、ということで、各々家路に着いたのであった。
布団に潜ってから、コペルは自分の新たなる能力について考えた。
優しさが力になる能力。そう思った。
でも、何となく、この能力が自分に生まれた理由が分かる気がする。そうだよな、ゼッター……。
夜が更けていき、コペルはすっかり眠り込んだ。この夜が明ければ、また学校に皆がいる。その事を楽しみにして、今宵を過ごしたのであった。
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