毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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固く目を瞑っていると不意に首に掛けた巾着袋が熱を持ち、辺りが黄金色の光に襲われる



──ギュッ
突如現れた少女がスイレンの胸元に抱き付く




彼女の名前はコハクだ
元は妖狐の魔物であるが契約をして以降、主のスイレンに寄せた人型になっている

魔力枯渇で気を失ったスイレンを救うための契約で命の恩人でもある


首に掛けた巾着袋の中の琥珀色の石がコハク自身でもあるため、コハクは石の中で過ごすことも出来る。離れていてもこの石の元へ移動が可能だ

とは言ってもコハクはスイレンの助手であり親友であり大切な家族であるため、村では常に一緒に行動している

そんなスイレンがベッドにコハクを1人置き去りにしたからなのか、主の危険を感じたからなのか、石から飛び出してきた


邪魔になるからと真っ白な前髪を編み込んでからは更に目立つようになった蜂蜜色の双眸が不安に揺れて宝石のようだが後頭部が鳥の巣だ、きっと前者だろう

そしてコハクはくるりと振り返り、ニールを睨みつける
私もコハクの目を覆いつつ、恐る恐るニールへと視線を戻した


ニールは目を点にして、ぼーっとこちらを見ている


左腕に先程抜いた剣の刃先を置き、血をダラダラと流しながら……



「えっ……う……うでえええええ!? 何してんですか!! メンヘラですか?!」


我に返ったニールがヘラりと笑う

「驚かしてしまったようですね。大変失礼致しました。これでも私、竜の端くれでして……力を見せていただけないかと……」

そう言いながら血の拭った剣を仕舞うと、更にヘラりと笑い、今も血の流れる左腕を差し出してくる

その異様な光景に思わず仰け反る



「ヒィッ……」


コハクが容赦なくその腕を叩き落として睨みつける


「ちょちょちょ、コハクだめよ! って返り血がああああああ」


コハクの頬にニールの血が跳ねている


それでもヘラり顔で無言のまま見つめるニールに溜息を零し

「あーもうハイハイ分かりました! 分かりましたよ!! コハクは顔拭いて! ニールさんはそこに座って下さい!」


コハクは返り血をぺろりと舐めている
ニールはニコニコしながら、椅子に腰かけた


「こらっ! コハク! ばっちぃから舐めない!」


2人とも顔をシュンとさせ、こちらを見る
ハンカチを2枚、鞄から取り出し、消毒液を染み込ませてコハクに投げ、もう1枚をニールの傷口に当てて、腕をキツく麻紐で巻き付けた


傷口の周りに小さな鱗が出来ていて、竜族という言葉を実感させられた


「そちらのお嬢さんを存外驚かせてしまったようで……軽い呪術が自己回復を阻害していますね」



ヘラりとした笑顔は不気味だが、居た堪れない気持ちになる

「じっとしていてくださいね」


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