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第2章 勇者と魔王

優しさと現実

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私とラルトは、アーランド夫妻が王都に向かった日から3日間を過ごすことになった。
 初日は、いつものように各々に作業をし私はアーリから最近教えてもらっていた”料理”をする。牛肉の丸焼きやトマトのサラダなど簡単な物だがラルトと三食を共にした。
 2日目は、ラルトが初日の礼にと朝食を振舞ってくれた。しかし、見た目はおろか味もダメダメだった。
 お互いに顔を見合わせ笑いあった。
「母さんやミーラには敵わないや」
「これはっ流石にっふふっ」
 ミーラとラルトは徐々にだが仲が良くなって来ていた。ミーラもこの空間が何故か心地よく感じでいた。胸に広がり染み渡るような温もりを心地よく感じて来ていたのだ。

 そして3日目。
 アーランド夫妻は、今夜帰ると文を寄越した。
 昼にラルトは珍しく狩に出掛けずに自宅に居た。不思議に思いながらもミーラは昼食の用意をする。この3日間で慣れたように考えずに身体が動く。
 そして昼食が出来た時ラルトを呼び食卓を囲む。
 食べ終えた後もラルトは、ぼーっとしていた。
 気になって仕方なかったミーラは、やることも無く暇だった為、3日間聞かずに居た事を聞く事にした。
 
「ラルト。少し良いだろうか?」
「うん、なんだいミーラ」
「3日目の今日。何があるんだ?ラルトも少しぼーっとしているようだが?」

 あぁ、と言ってラルトは自室から一つの書物を出して来た。
 題名は”勇者フィラータの伝承”と書いてあった。
 父ガルフと母ラルフから聞いた事がある勇者フィラータ。
 人間達を率いて魔界を滅ぼそうとした1人の勇者の話。後に人間界の王となった人間。
 魔族からは、まだ勇者の血筋がありいつかまた魔界を滅ぼそうとするかも知れないと恐れられた存在。
 何故ラルトがこの本を持っているのか?
 
 するとラルトは、暗い面持ちで話し始めた。

「今日は、勇者フィラータの命日なんだ。」
「命日?亡くなった日という事か?」
「そう。そしてこの日は、亡くなったフィラータを弔う為だけの日では無い。」
「?ラルト?」

 ラルトは、先ほどよりも更に暗い面持ちで居た。膝の上に置かれたラルトの手は血が滲みそうなくらい力強く握られて居た。
 そしてラルトは、深く深呼吸をしミーラを真正面から見据えて言った。

「勇者フィラータの次代の勇者候補から、勇者を選ぶ儀式の日なんだ。」
「次代の勇者…」
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