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第10章 初めての討伐 ラルトside

疑う事実と真実 3

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 目が覚めた時初めて目に写ったら幸せなのはきっと自分が心から大切に思う両親?それとも側にいれる事が最も幸せに感じる好きな人?
 そんな問いを一瞬で頭に浮かんでしまう…
 だって目の前にはどちらとも異なる存在が立っているのだから。

「おや?起きられましたか?安心して下さい。ここは魔獣グラピーの住処である場所です。貴方を急遽この場所まで御運び致しました。」

「あ…貴方は?いったい…くっ…」

「まだ動かない方がよろしいですよ。貴方は今大変な状態にありますので。」

「た、いへんっ…な状態とは?」

「いえ、説明には時間がかかります。その為少し横になって下さい。順を追って説明致します。」

「は、はぁ…くっ」

  彼はそう言い残した。そして俺はしばらくまた気を失ったらしい。目が覚めると俺は身体を何かに縛られているかの感じを全身に感じていた。否、実際縛られていた…
 身体には無数のツタが巻かれており身動き一つ出来やしない。そんな状態だったが、先ほどまで居た者は側に居ない。ーーいわゆる今が逃げどきである。
 しかし、俺は身体中のツタが取れたとして一体何処へ逃げる?そんな疑問が頭に浮かぶ。みんなの所へ帰るか?でも帰って来た時みんなはどんな風にラルトを迎える?もし怖がられたら?自分はやってもいない、覚えてすらいない事だ…無視すれば良い。けれどそれは逃げなんじゃないか?グラピーの死からも逃げた事になるんじゃないか?
 
 ーーそれは、嫌だ。

 そんな事をラルトは彼が戻って来るまで延々に考え続けた。
 そして結局ラルトは縛られたまま身動き一つ取らなかった。
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