叶わぬ願いと望まぬ結末

黒狼 リュイ

文字の大きさ
63 / 138
第12章 魔界への決意 ラルトside

本当の敵の存在 2

しおりを挟む
 村の付近まで近づくと1人村の前に腕を組み頭を下げている人が居た。身長が高く見えるから男の人だろう。その人はラルトをその目に映したようで、顔を勢いよく挙げラルトの方へ走って来た。その姿が徐々にラルトにはっきり見えた。

ーーザル。

 ザルが全速力で走って来た。ザルは、ラルトをギュッと抱きしめ身体をペタペタと触り出す。ラルトがくすぐったいと抗議するがザルは構わず何度も何度も触る。
 
「ザルっ…くすぐったい…」

「ごめんでも、確かめたいから我慢してくれ!」

 ラルトが怪我をしていないだろうか?と心配してくれているとラルトは嬉しくて仕方がない。彼は勇者ラルトとして初めて出会った時から友人ザルとして交わした絆は、日は浅いが大切に思ってくれている。だから何度も確かめてくれる。そう思うと心が暖かくなる。そう感じる。
 
(ミーラにも伝わるかな?俺がゼーラルがラルフさんがザルの様に大切に感じている事が伝わると良いな…)

「ラルト?どうかしたか!?まさかやっぱり怪我を‼︎」

「してない、してない。大丈夫だから。ただ思い出していただけだよ。」

 ザルは頭に「?」を浮かべた様に固まってしまった。彼はこんな風に堅苦しい感じ無く接してくれる。ラルトは改めてザルハルートという人間の明るさと暖かさを実感していた。
 そうして談笑しているとザルの背後からアミラ、ダット、バルンが歩いて来た。いつものメンバーがようやく揃った。長い間離れていた様に感じていたが、実質離れていたのは一日だったらしい。村から飛び出しゼーラルに会ったりしていたのに、案外経っていなかった。
 アミラは俺が居ない間、ザルが「ラルトが居ない」と慌ててダットが冷静に突っ込みバルンは「散歩じゃない?」と軽く返す。そうして一日中ザルが村の前で立って居たらしい。まぁ、そんな感じで一日経ったと聞かせてくれた。
 相変わらずだなとしか俺は返せなかった。

 ーーだって嬉しいから。
 
 勇者としてかもしれないけれど、俺という存在を無視する事なく気にしてくれた。それにザルが待ってくれていた。アミラはザルに「ほらね」と小さく耳打ちしながらも、ダットもしかめっ面しながらも、バルンは相変わらずチャラチャラしてるけど。

 それでも待ってくれた。帰ってくるのを待ってくれていた。それがラルトにはとても嬉しい。

ーーありがとう。みんな

「ほら、村に戻るわよ?村の人心配してたわよ」

「あぁ。」

 アミラ達に続いて村に戻る。ザルは元気が有り余っているのか、ダットに「走って行くぞ!」と言いながらやる気の無いダットを連れて走って戻って行く。その後ろを風魔法で身体を浮上させアミラが追っていく。この光景が懐かしく感じる。まるで独りで長旅にでも出ていたみたいだ。そうしてふと、紙を右手に持った。
 そのタイミングでバルンがラルトに聖剣を手渡してきた。

「忘れ物ですよ?勇者ラルト。今後肌身離さず持ってくださいよ?」

 そう言いバルンもアミラ達に付いて歩き出した。ありがとうも返せず歩き出すバルンを前に受け取った聖剣を両手に抱えた。その時ふとゼーラルから貰った紙が小さなオレンジ色の光を放った。あろう事か聖剣に反応したのか?それともバルンに?
 ラルトは、まさかな…と思いつつ、用心した方が良さそうだと自身に注意した。
 ゼーラルが言った"敵に反応"する紙が聖剣かバルンかどちらに反応したのだとしたらこの旅はミーラにとっても俺にとっても安心は出来ない、波乱を生むかもしれない。

ーーだけど、ミーラもみんなも俺か守る。
ーーそれが勇者ラルトだから!

 こうして新たな謎を抱えながら勇者ラルト一行は、無事魔界への入り口を見つけ魔界へ
 魔王ガルフのミーラの居る魔界へ行くのだった。

 そしてラルトは、グラピーを討伐してからは自身で討伐はせず魔物の群れを発見しても戦い後必ず独りで群れのボスに「魔界へ帰ってほしい」と交渉こそすれ、倒しはしなかった。
 ラルトは、"光の勇者"と噂された。

ーーだが、ラルトが眠る夜に数匹の魔物の主は聖剣により討ち滅ぼされる。
ーー"闇の勇者"が影で噂されラルトが魔界へ行くと噂は国全土に広がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

処理中です...