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第22章 破壊と運命

表は光、裏は闇

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 ミーラは、ラルフが守った人間を見守りたかった。それは、母が人間であったから。母が好いた者が魔族の王である父だったから。そして母亡くした独りぼっちのミーラに住む場所と暖かさを与えてくれたのがアーランド夫妻であり人間。そして勇者ラルト。聖剣を持つ彼らはきっと自分を魔族だと知っていただろう。そして、ミーラは知られている事を理解あるいは誤解して彼らを利用した。
 いつか、母の為に魔界へ帰る為に。
 この時のミーラは、母が魔界から追い出された様に感じていた、だから夫妻にもましてやラルトにも何も言わずに去った。
 ただ一つ。アーランド夫妻の暖かさ。勇者ラルトの温もりのある腕や震えた時のあの光景を心に刻み込んで…
 そして、魔界へ戻ったミーラは、全てが誤解だったと知った。
 父は、ただ大切過ぎた為に優しさをどう表せば良いのか知らなかった。分からなかっただけ。愛しい娘と妻を危険に晒す為では無かった。そして、妻を亡くした父は娘を守って亡くなった。娘の前で勇者に敗れた。
 ミーラの思い描いた全ては裏だった。
 表はもっと残酷。
 人は笑顔で優しくなんて無い、いつも笑顔なのは全て裏を欠くため。優しくなのは信頼させる為。いつもいつも、どのタイミングで仕返ししてやろうかと考えている、そんな素振りは決して見せはしない。
 人は表で光に、裏で闇にーー
 ミーラにはそうとしか思えない。
 なにせ、ラルトに裏切られたのだから。
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