異世界転生しました。〜優し過ぎる彼と冷た過ぎる私〜

黒狼 リュイ

文字の大きさ
14 / 42
第2章 異世界編 永遠の雪

異世界に転生した雪乃 4

「…様‼︎…キ様‼︎…どこに…あぁ…」

 雪乃が居た氷の間にそれは居た。
 キラキラ光る氷の生き物。それはガラスの様に精巧に作られた様な生き物。雪乃の世界ではゲームでしか見た事のない四つ足でピンっと先の尖った大きな獣の耳。青白い身体。狼より大きなその姿は偉大さを感じる。

ーーフェンリル?

「君は、誰?」

 雪乃は、その者に問いかけた。
 その者は、大きな顔をこちらに向けた。驚き慌て、破顔した様なその者はその姿からはとても考え難い程の大きな涙を流した。
 流れて流れて止まらない。
 
「君、大丈夫?」

 雪乃は問いかける。だが、涙が邪魔をして話す事すら叶わない。もしくは雪乃の声が届かないだけだろうか?そんな不安さえ感じる。そうして泣き止むまでしばし待ち、ようやく話し出した。

「わたっ、私は…夢を…あぁユキ様‼︎」

「ユキ、様?それは私?」

 その者は、涙を枯れるまで流した後に雪乃を見て笑顔になった。そして雪乃をユキ様と言った。彼女、つまり今の私の事を指しているに違いない。
 
(前世は、普通の人だったけど。どうやら今生では"有名な人"みたいね。)

「ユキ様、良かったです!ようやく私達の野望が果たされます!あの、炎王に、ようやく‼︎」

「炎王?野望?」

 雪乃には、前世よりハードな世界が待っている。さぁ、幕開けだ。

 雪乃は、ようやく自身が何者かのヒントに辿り着いた。


「とりあえず、君は誰?」

「私ですか!?あぁ、はっはい!」

 慌てた様子で居住まいを正し、背を伸ばし器用にも雪乃にお辞儀をして声高らかに答えた。

「私は、氷狼一族の長であります。コーローであります。貴方様の右腕を勤めておりました。」

「氷狼一族、コーロー…君は右腕を勤めていたと言うけど私は君を知らない。」

「な、何故…」

「何故と聞かれても私には分からないから、今君の、コーローの知る事を教えて。」

 獣とはいえどその青白い毛並みに埋もれた表情はまるで、飼い主に見放された子犬の様だ。毛並みとともに見る見るうちに顔は絶望の色を示していく。そんなコーローに雪乃は教えてと言った。
 コーローは、絶望感を抱きながらも吹っ切れた様に話してくれた。

「まず、貴方様は氷の国の女王。氷雪のユキ様であられます。この国は年中冬で毎日雪が降り人間も魔族も易々と立ち寄れません。その代わり、毎年一番雪が多く降る一月の間貴方様が雪を氷の結晶に変え一時的に国へ入る事が出来て居ました。」

「私は、魔法を使えるの?」

「えぇ、ユキ様がお使いになられる魔法は氷と雪の魔法です。今はこの城しか残って居ませんが、100年前までは近隣諸国より平和と繁栄が約束された場所でした。」

 そして、コーローは栄えて居た氷の国の話をした。一年中雪が降ると思うと前世の私には嫌でしょうがないけど、この国の人達には恵だったそうだ。
 雪が降る為に他の国よりも野菜はたくさんの栄養があり、肉は筋肉質がなんとも言えないくらい良いものが取れたらしい。

(そう言えば、お腹空くはずなのに減らないな…)

 子供達は降る雪を丸めて雪合戦したり雪のトンネルを作ったり滑り台を作ったりして遊び、柔らかい雪では大きな怪我をしない為に大人達も安心だったらしい。
 そして何より。

「氷の国に"敵対者"が来ない事が国民達は安心していました。」

「だけど、そんなにいい国なら何故今その人達はいない?それに100年前って。」

「っ…そうです。100年前にこの国は変わってしまいました。これからお話しします…城がこのようになって、ユキ様が眠っておられた理由でもありますので…」
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。