本より好きになれるなら

黒狼 リュイ

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第5話

再びのそして新たな誓い

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「そうか、ならこの話は自分達でなんとかしてみる。すまない、突然押しかけてこんな…」
「いえ構いません。それだけバーネット嬢の事が本気だと言う事でしょう?」
「あぁ。私にはバーネット嬢程魅力を感じる人が居なかった。だから諦められない。」
「そうですか。」

 彼は、お茶の無くなったコップを何処か愛しむ様に見つめコップを愛おしそうに両手で包む。
 その姿を見れば分かる。彼はバーネット嬢の事に関しては余裕ではいられない。きっとそれだけの何かがバーネット嬢にはあるのだろう。私には分からない魅力が。
 だからこそ手伝いたいと思う。それだけ愛おしい存在なら例え願われなくても、身内が阻もうともザティス様自身が彼女にバーネット嬢に会いたいと会って話しがしたいと願うのであれば。私は彼の意思を尊重したいとレミーは思った。
 それは、レミー自身がもうあのパーティーの夜出会った約束の彼に会えないと自覚して居るから…
 会える彼は会うべきだと思ったからかも知れない。

 そんな風に感じたからだろう。じゃなきゃこんな事しないだろうね。

 レミーは、ザティスの手にあるコップにお茶を注いだ。さっきまでの安いものではない、一番高級なお茶を注いだ。それに驚いたザティスはコップとレミーを何度も見ながら戸惑っていた。もう飲めないよとでも言おうとしたのだろう。だが、その言葉を発するも早くそして元侯爵家の人間らしく気高くレミーは言った。

「お茶をお飲みください。今から私は、元侯爵家レミー・ロアーは。ザティス・ト・バーン伯爵の為自らの意思で貴方の力になります。その為の誓いをコップに注いだお茶ではありますが此処に交わします。」
「いや、協力関係が…」
「いえ、これは貴方と私の協力関係の話とは別件です。私は貴方のバーネット嬢への気持ちに感銘を受けました。なので、こんな私ですが貴方の恋を応援し出来る限り力になりたいと考えます。…だから、先立って私は逃げず父に立ち向かいバーネット嬢とお会い出来るよう説得をしてみようと思います。」
「だが、それは」

 ザティスは、レミーの申し出を受けたいもののレミー自身の気持ちを考えてやめた。だけれど、バーネット嬢の事を諦めた訳ではなく自らの手で足で動く事を決めた。…本当は今でも挫けそうなはずなのに。じゃなきゃ此処に来ないだろうに。
 だからこそレミーは決めた。

「貴方が私に火をつけました。それほどまでに貴方のバーネット嬢への気持ちが真っ直ぐにあるという事を感じました。だから、私は私の意思で力になろうと思ったのです。」

 ザティスは、真っ赤になった顔を何度も何度も上げレミーの意思の籠もった目を見て何度も口をパクパクとさせた。そして何度目かの後ザティスはレミーから渡されたお茶を飲み干し、レミーに右手を差し出した。
 
「レミー・ロアー嬢。君のレミーの意思に報いる程の男になる為の力にバーネット嬢への気持ちを彼女に伝える為の力になってくれ。」
「えぇ、もちろん。ザティス様。」
「あぁ、ありがとう。レミー嬢。それと私の事はザティスで構わない。」
「ならザティス、私の事もレミーで良いわよ。これからよろしく」

 そうして交わされた誓いと握手を2人は大切に感じた。先程まで互いに権力に溺れたお坊ちゃん、口と態度が時折デカイ元お嬢さんくらいにしか感じて居なかった2人。これを機に互いの印象がガラリと変わりより良い協力者となった。
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