本より好きになれるなら

黒狼 リュイ

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第5話

動揺と小さな音 2

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「はぁ。それで?貴方は何しに来たのですか?ザティス様?」
「あ、いや…出来れば…バーネット嬢に…真実を…」

 なよなよしく話すザティスに呆れつつもやはりかとレミーは察する。
(見た目ほどハキハキとした性格では無くて、小さくて脆い人なのかもしれないわね。ザティス・ト・バーンという人は。)

 そう心の中では少々毒を吐きつつ、レミーはザティスという存在がほんの少しだけ近くに感じられた気がした。少なくとも不肖の父よりも権力にものを言わそうなどと考えて居ないのが分かった。だからこそ、ある程度なら手伝ってあげても良いのでは?とレミーは考えた。
 だが…

「すみませんが、バーネット嬢に直接会うことは出来ないと思います。」
「なぜ?バーネット嬢は貴方の父ディラスト殿の…」
「えぇ、"父親"だから"バーネット嬢は私の家族"になりましたね。事実上ではそうです。しかし、私は父から爵位も家も追い出されたのですよ?それに勝手に婚約までさせられて居ます。」
「あぁ、だが!」
「まだ、分かりませんか?私は事実上であって"本当の家族"になった覚えもない人に会いになど行きたくは無いと言っているのです!!」

 私の憤りを隠せていない言葉は、槍の様に尖りザティス様の心に響いただろう。その証拠にザティス様は私の言葉に反論すらしない。そして顔の一部も息すら、ましてや身体の一部すら動かない。

 完璧に固まってしまったのだ。
 私だって分かって居る。いつかは父に会ってバーネット嬢に会って話しをしなくてはいけない事がある。
 でもそれさ今じゃない。ーー少なくとも今は行けない。行きたくない。
 
 数分の静かな空間。固まるザティスを前に唇を噛みしめ両の手を膝の上で力一杯握るレミーだった。
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