本より好きになれるなら

黒狼 リュイ

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第7話

初恋の本の少年 2

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ーーハルーが、ハル?あのハル・ト・バーン伯爵?

 信じ難い事実だった。しかし何処かでその可能性もあるのではないかと思っていた自分が居た。
 だから驚きはしたが"やっぱり"という言葉がしっくりくる感じがした。頭の中のピースが当て嵌まるそんな感覚…
 それと同時に謎も浮かんだ。ハルがあの少年ならなんで言ってくれないのか?もしかして私だけが覚えていて彼は忘れているのではないだろうか?そう考えて思うと悲しみと同時に納得できる気がして来た。
 
 きっと彼は覚えていない。
 彼はたまたま私に会った。
 たまたま昔と同じ様に本が好きで来ただけ。
 
 そう思えば…気楽で居られる。レミーはそう思う事にした。
 この時のレミーはハルーが残した書き置きの存在すら忘れるほどに深い混乱と動揺を包み隠すような論理的思考をしていた。
ーーもう感情的に動かない。
 そう自分に言い聞かせていた。そうすれば気楽にやっていけるから…

「ちょっと貴方?ねぇ??レミー?」

「え?あ、どうかした?ごめんボーッとしてたわ。」

「全く、まだ私の話は終わっていませんわよ?もぅ、ハル様に会えていたからってあな」

「バーネット嬢っ!もぅっ!もういいですから…ハル様の事は。」

「あ、あら、そう?なら話しを続けますわ。」

   もう聞きたくない。聞きたくなかった。だからバーネットの言葉を遮り止めた。余計な事を考えたくはない。それにザティスの件でバーネット嬢にようやく会えたのだ。上手く事を動かす為には自分の事なんかどうでもいいじゃないか…
 そうしてバーネットは、改めて私の顔を見て言った。

「私はハルー様に会って直接あのパーティーの日に何があったのかを聞きたいのです。」

「パーティーの日?ってあの日?」

「そうなのです。あの日貴方のお父様がお母様とお別れなさり私のお母様の元へいらっしゃいました。覚えていらしますよね?」

「は、はい。一応…」

    そう、あの日私は初恋の彼。ハルーと会った。
 それだけならとても良い思い出だ。だが、その日同時に嫌な思い出もある。
 パーティーから帰った時母さんは荷物を作っていた。それも大きな荷物を。そして父は私を屋敷に連れて行った後馬車でどこかへ行ってしまった。母さんの作った荷物と私は祖母の家に、今居る場所とは違う家に移った。そしてその後本屋に住む様になったのだ。
 この間母さんは何も言わなかった。
 だから幼心としては謎だった。何故?何処に?これから何があるの?そんな風に疑問ばかりだったが、決して母さんに祖母に聞こうとは思わなかった。

 そして今バーネットが何故か関係ない筈のハルー様に聞こうとしている。
 そんなバーネットから驚きの事が明かされた…
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