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第8話
ロアー本屋 3
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「母さん⁈」
「あなた何してるのよ?早く入りなさい。」
母さんは、私の怒りを半強制的に何処かへと追いやりながら私の腕を引っ張り人混みを押し除ける。先程あれだけ大変な思いをしながら歩いた道が、母さんの後ろを付いて歩いたら道が出来たように余裕だった。さっきのが嘘みたい…
そんなレミーの後をつられてバーネットもせっせと歩いてくるが、母さんの凄い勢いにバーネットも息も絶え絶えに上がっていた。無理もないだろう、私だって付いて行くのだけでギリギリだ。
そんな中母さんに押されながらも多くの人達の声がちらほら聞こえてきた。その幾つかは、急な母さんの動きに驚きながら道を開ける人達の慌てるような声。それと、何が起こるのかと興味の本意の人達の声。男女問わず、年齢問わず広がる声とこんな珍しい状況に盛り上がる雰囲気。
ーーそれと同時に色々と話される推測の数々。
『次期伯爵がザティス様?』
『あ、でもザティス様なら安心かもー』
『じゃあ、あの兄のハル様は?』
『え?居たっけ?…あーあの人か。』
『じゃあ逃げたんじゃない?』
実は母さんにつれられる前からそれは聞こえていた。だから母さんは言ったのだろう。
ーー何を怒っているの?と
私の怒った表情から"もしかしたら"分かったのかも知れない。好き勝手に言われた言葉の多くに私は腹が立っていた。聞きたくない憶測が噂が飛び交う様を私は見たくなかった。だから母さんは私とバーネットを連れてこの場を離れようとしている。しかも母さんも怒っているのだろう。
何故分かるかって?そりゃ、母さんが怒る顔は誰もが恐れ道を開けるほどだから。
母さんには自覚ないけれど、それはそれは怖い。
そして私が怒る理由も、もしかしたら分かっているのかもしれない。
だからこそ私は、自分の怒りを収める為にも冷静になって考える事にした。家に着くまで怒りを鎮めようと…
ーーハル・ト・バーン。バーン伯爵家長男。
ーー次男、ザティス・ト・バーン。
その生まれだけで判断されて、あたかもその存在が無いかのよう…そして聞こえる野次や批判。
"兄は弟に劣る。有能な弟に不出来な兄。…だから家を捨てたんだ!"
その多くが伯爵家長男ハル・ト・バーンを否定する全てだった。"人は小さな事で盛り上がり事を大きくし盛り上がる。"そう本に書いてあったし実際の所そういう事が無いわけでない。結局事実を確認していないのに全て知った様に振る舞ってしまうようなものだ。…だけど。
ーーだからこそ私は、腹が立つ。
きっと今までのバーン家を小さな噂で、誰かから聞いたり知ったりしていたら本来なら私もそう感じる筈だった内容。
だからこそ私は違う目線で今は思うし、感じる事が出来る。
ーーだって私は、ハル・ト・バーンはそんな人じゃないと今なら言えるから。
確かに彼の全てを知っている訳じゃない。でも、1人の人としての彼を知っているのは私しか居ない…多分。でも正直ちょっと誇って良いんじゃないかな?って思う。…ハルーは、私の初恋の少年だし…うぅ…
結果、この場にいる人が彼の"本当"を知らないはずだ!
なのにこの中で彼がどんな本を注文するか知る人は居るだろうか?何系を喜ぶか知る人は居るだろうか?どんな本を探しているのか知る人は?彼が何故伯爵家を出たかは?
私しか知らない。人間ハルの姿…彼の笑う時の事は?彼の手の大きさは?彼の手の暖かさは?彼の声の優しさは?
ーー誰も知らない。知らないのに全てを語らないで…
彼を知って、彼と知り合って、彼と話して、彼との時間は他の誰より一番だ。
ーーだからこそこれ以上彼を悪く言わないで!
母さんにつられながらレミーの表情は先程とは一変していた。
ーーだめだ、抑えられない…
気づくとレミーの頬にはポロポロと止め処なく涙が流れ続けた。
「あなた何してるのよ?早く入りなさい。」
母さんは、私の怒りを半強制的に何処かへと追いやりながら私の腕を引っ張り人混みを押し除ける。先程あれだけ大変な思いをしながら歩いた道が、母さんの後ろを付いて歩いたら道が出来たように余裕だった。さっきのが嘘みたい…
そんなレミーの後をつられてバーネットもせっせと歩いてくるが、母さんの凄い勢いにバーネットも息も絶え絶えに上がっていた。無理もないだろう、私だって付いて行くのだけでギリギリだ。
そんな中母さんに押されながらも多くの人達の声がちらほら聞こえてきた。その幾つかは、急な母さんの動きに驚きながら道を開ける人達の慌てるような声。それと、何が起こるのかと興味の本意の人達の声。男女問わず、年齢問わず広がる声とこんな珍しい状況に盛り上がる雰囲気。
ーーそれと同時に色々と話される推測の数々。
『次期伯爵がザティス様?』
『あ、でもザティス様なら安心かもー』
『じゃあ、あの兄のハル様は?』
『え?居たっけ?…あーあの人か。』
『じゃあ逃げたんじゃない?』
実は母さんにつれられる前からそれは聞こえていた。だから母さんは言ったのだろう。
ーー何を怒っているの?と
私の怒った表情から"もしかしたら"分かったのかも知れない。好き勝手に言われた言葉の多くに私は腹が立っていた。聞きたくない憶測が噂が飛び交う様を私は見たくなかった。だから母さんは私とバーネットを連れてこの場を離れようとしている。しかも母さんも怒っているのだろう。
何故分かるかって?そりゃ、母さんが怒る顔は誰もが恐れ道を開けるほどだから。
母さんには自覚ないけれど、それはそれは怖い。
そして私が怒る理由も、もしかしたら分かっているのかもしれない。
だからこそ私は、自分の怒りを収める為にも冷静になって考える事にした。家に着くまで怒りを鎮めようと…
ーーハル・ト・バーン。バーン伯爵家長男。
ーー次男、ザティス・ト・バーン。
その生まれだけで判断されて、あたかもその存在が無いかのよう…そして聞こえる野次や批判。
"兄は弟に劣る。有能な弟に不出来な兄。…だから家を捨てたんだ!"
その多くが伯爵家長男ハル・ト・バーンを否定する全てだった。"人は小さな事で盛り上がり事を大きくし盛り上がる。"そう本に書いてあったし実際の所そういう事が無いわけでない。結局事実を確認していないのに全て知った様に振る舞ってしまうようなものだ。…だけど。
ーーだからこそ私は、腹が立つ。
きっと今までのバーン家を小さな噂で、誰かから聞いたり知ったりしていたら本来なら私もそう感じる筈だった内容。
だからこそ私は違う目線で今は思うし、感じる事が出来る。
ーーだって私は、ハル・ト・バーンはそんな人じゃないと今なら言えるから。
確かに彼の全てを知っている訳じゃない。でも、1人の人としての彼を知っているのは私しか居ない…多分。でも正直ちょっと誇って良いんじゃないかな?って思う。…ハルーは、私の初恋の少年だし…うぅ…
結果、この場にいる人が彼の"本当"を知らないはずだ!
なのにこの中で彼がどんな本を注文するか知る人は居るだろうか?何系を喜ぶか知る人は居るだろうか?どんな本を探しているのか知る人は?彼が何故伯爵家を出たかは?
私しか知らない。人間ハルの姿…彼の笑う時の事は?彼の手の大きさは?彼の手の暖かさは?彼の声の優しさは?
ーー誰も知らない。知らないのに全てを語らないで…
彼を知って、彼と知り合って、彼と話して、彼との時間は他の誰より一番だ。
ーーだからこそこれ以上彼を悪く言わないで!
母さんにつられながらレミーの表情は先程とは一変していた。
ーーだめだ、抑えられない…
気づくとレミーの頬にはポロポロと止め処なく涙が流れ続けた。
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