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柊彩 藍

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殺気の正体

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 しばらく少女と会話して、気づいたことがある。殺気が消えているのだ。少女が現れるまではたとえこの空間のどこにいようと殺されてしまうほどの殺気を感じていたのに少女が志穂の目の前に現れてから全く感じないのだ。
 「さっきの気配は一体?」
 「流石に隠しは出来ぬか。少し待っとれ。すぐに会わせてやる。」
 少女は手のひらを手前へ折り返した。その瞬間、確かに感じることが出来た自らに向けられていた殺意が近づいてくることを。それは、遥か遠くにあったように感じられたのだが数秒もたたないうちにすぐそばに並べられたことが分かった。
 「この唸り声……」
 そこには檻があり、獣がいた。そして、発せられている殺気の元がその獣であることも分かった。志穂は更なることまで気がついてしまった。その唸り声に聞き覚えがあることに。
 「やっぱり主は、こやつが分かるのかの。こやつはまだ、わしを含めて二人しか判別できておらんからの。お前の事を覚えていないことを悲しむでない。」
 志穂には、少女の言う言葉が理解出来なかった。志穂にとってこんな獣に記憶されるのすら願いさげだったからだ。さらに敵対心を抱いたが志穂に交戦する能力はなくただその獣をにらみつけるだけだった。志穂は、自分がいかに愚かだったかを悔やんだ。蒼太の死を目にしてなぜ少しでも生存の可能性を考えたのだろうか。
 「そう睨むでない。わしらは主達を助けたではないか。わしは、反対じゃったが、こやつきっての願いでの仕方なく放してやることにしたのだ。」
 そうその檻に飼われていたのは蒼太を刻んだ黒い狼だったのである。
 「お前は……」
 「だからなぜ睨む。こうなったのは全て蒼太を消そうとした兄弟子とやらの仕業じゃろ。むしろわしには感謝して欲しいくらいじゃ。姿は代えてしまったがの、とどめることは出来たのじゃから。」
 志穂は、ただその少女を睨み付けていた。
 「これだから知識のない凡人の相手は苦労するんじゃ。まあ、わしはそんな目をされることになれとるからの。そのくらいで怒ったりはせん。とりあえず今日は帰れ。それと覚えておけ。ワシはイリス・アーヴィング。何かあったら呼ぶといい。こいつのように何をしてでも助けてやる。」
 
 気が付くと志穂は、ベッドに横になっていた。近くには優衣が寝ていた。
 「起きたか。体調は大丈夫か?」
 一条が、志穂の起床に気がついた。
 「何でこうなってる?」
 一条は志穂に何があったかを説明した。
 「最初は、お前が消えてたんだよ。だから転送されたんだと思ってた。けど、何かに弾き出されるようにしてお前が何もないところから飛び出して来たんだ。そのままお前急に倒れたんだ。慌てて駆けつけたらお前は気を失ってたって訳だ。何があったかを聞きたいのは俺たちだ。」
 「途中から精神を残して肉体を排除したってことか。通りで最初よりもイリスが来てからの方が楽だった訳だ。」
 「で、何かあったのか?」
 「あの狼にあった。それにそれの飼い主みたいなやつにもあった。恐らくその手紙通り私たちの知らない魔法を使えるみたいだ。」
 「だとすると余計に分からん。どれ程守りに自信があったところで敵を招くか?それに手紙の内容的にも少なくとも敵対心むき出しではない。」
 志穂は一条に言われて少し冷静になった。確かに戦力としてあれだけの結界を作れるイリスと、複数人でかかっても倒せなかった相手を羽虫を追い払うかのごとくなぎ払ったあの狼がいても、わざわざ敵に居場所を教えてやる必要などない。更には、志穂に自らの情報まで流したのだ。
 「とりあえず、情報の整理をしよう。」
 志穂は見聞きしたことを皆に話した。志穂はやはりあの場で冷静を保てなかった事を悔やんでいた。誘われていたのが自分ではなく修だと言うことにも気がついた。志穂は自分が未熟なゆえに引き出せた情報が少なかったことに。優衣は、気にするなと志穂を励ましていたが、情報が少なくほとんど分からなかった事には変わりがない。
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