writerS

柊彩 藍

文字の大きさ
57 / 61

手を取り合った悪

しおりを挟む
 「ゥゥゥ……」
 人の入ったカプセルからうめき声が漏れ出す。
 「なんだ悔しかったのか?」
 白衣を着た男は、カプセルに向かって語りかける。しかし、カプセルの中の人間は、反応を示さない。ただうめき声を漏らすのみだった。
 「さて今回の襲撃で分かった事を整理するべきだな。思ったよりも相手もやるようだ。考えて行動しないと足元を掬われかねん。」
 男は、現在の自らの戦力と敵対するであろう組織の戦力を比較した。しかし、その上で問題ないと判断したのだろう。やがて男は企みを含んだような笑みを浮かべ勝ち誇ったかのように高笑いをした。一方で高みの見物で状況を俯瞰しているものがいた。加古である。
 「これは、これは、やはりそう出てくるか。あのときの先手はこの布石だったというわけか。道理で俺よりも決断が早かった訳だ。しかし、やつらは勘違いをしているようだな。魔法なんて一度消したところでどこかのバカがまた打ち立てる。根こそぎ壊したいと願うなら俺の元に来るべきだろう。あちらの世界との繋がりを絶つことこそ近道だと言うのだから。」
 
 紗希は、戦闘でのダメージから志穂に安静を強いられていた。しかし、対魔機機動部隊の破壊活動は止まらない。それどころか勢いをます一方だった。
 「止めに行くのはダメですよ」
 紗希の元に届く情報に、心を痛めながら安静にしているような紗希は今にも飛び出していまいそうだ。
 「ツーツー……新たな情報が入った。そのまま聞いてくれ。対魔機機動部隊のアジトと思われる場所を特定した。今でもあの機械が増え続けているようだ。戦力を集中させてから挑みたい。紗希が回復次第連絡をくれ。」
 通信機越しのボスの声はかなり焦っていた。大分切羽詰まった状況らしい。それもそのはず、紗希でさえあれほど苦戦したものが今なお増え続けているのだ。ことは急を要する。しかし、ここで誰かが気づくべきだったのだ。あれを量産するほどのことがなぜ無し得ているのかを。
 
 「貴様は、対魔機機動部隊の長か。」
 加古のもとへ1人の白衣を着た男が歩み寄る。
 「そうだ、高槻修だ。なるほど、writerSを抜けてきたというよりそれが本来の姿であると捉えた方がいいのか?」
 修は静かに頷いた。そして、加古の目を見て言った。
 「気づいて貰っただろうが俺たちの目的は、魔法の絶滅などではない。魂の解放。それも死によるものではなく。世界を作り替えることで達成させる。」
 加古は、思い違いをしていたのだ。加古の手中にあるworld of fairyの破壊が最終目的なのだと勘違いしていた。修の目的はむしろ逆でそれを利用することにあったのだ。
 「このタイミングで俺に声をかけるということは最終段階に入ったというわけでもないだろう。何が必要だ。」
 修はただ一言「時間」とだけ答えた。加古は、考えうる最高の時間の確保を考えた。周囲との時間の流れを変える方法、協力し敵対勢力を全滅する方法。いくつか案が頭のなかで浮かんでは消えていた。そしてついにローリスクハイリターンな案が思い付いたのだ、それが機械の大量生産。writerSは、精鋭が揃っている分数が少ない。writerSにとっての一番の悪手は多勢に単騎で突っ込む事である。人数の差というものは時に実力の差を上回ることのいい例だろう。加古は早速準備に取りかかった。アジトを結界で多い外からの視覚的感覚を変えてしまう魔法をかけた。それが、writerSの見た機械の大量生産であったのだ。案の定、数に恐れをなしたwriterSは一時待機を選択したのだ。
 「高槻、一つ聞きたいことがある。その計画には俺も含まれているのだよな。」
 「もちろん、骨の随まで利用させてもらいます。」
 修は、writerSにいる頃からたくさんの事を想定し、対策を練ってきていたのだろう。修が動かしはじめた時代の列車は止まることなく勢いをまし走り続けるのであるった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...