クロスフューチャー

柊彩 藍

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5章~エルフVS忍~

終戦

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 大きな爆発音が森に鳴り響いた後、森には静寂が広がった。そのあまりの音の大きさそこに吹き上げられた砂の高さ、地面を伝ってくる振動。そこで感じたすべての事が規格外だったのだ。それが原因となり全てのものは争うことを放棄した。あるものは確実な勝利を、またあるものは絶望的な敗北をその脳裏に描いた。それは直接戦闘に立つことの無かった指揮官でさえ感じるほどだった。
 「見ろこの破壊力を!これなら失いかけていた勝利もすぐ目の前にあるというものだ!ラドクリフⅡよ!立ちふさがる全てを蹂躙せよ!」
 ジキルは、その声を高らかに響かせた。その声を聞いた兵士たちは確実な勝利を手にいれたことに安堵し、握りしめていた鉄の塊達を地面に捨てた。それが例え敵前であろうとも。
 「あれは…もう無くなったはずじゃ……」
 自らの技術を使われたことに気付いたアルビオンは事の絶望さを、戦場に出向く者たちよりも感じていた。それがどれ程の殺戮兵器であるかは理解しているからだ。そして、現段階でラドクリフを処理出来る人物は、ハルトのみなのである。しかし、アルビオンはハルトの行動力を考えて自由に行動をとらせていた為ハルトの現在地が分からない。それゆえハルトに指示を出すことすら出来ないのだ。そして、戦場に立つものたちはその激音を恐れた。彼らの知っている範囲で自分達があれほどの破壊力を持ったものを所持していないからである。そして彼らもまた手に持っていた鉄の塊を地面に捨てた。その絶望的すぎる状況に戦う気力をなくしたのだ。
 そして、勝ち誇ったジキルの元に金属が擦れる音が聞こえてきた。
 ギ…ギギ…ギ………ギギギギ……
 「おい、こんなところに来なくてもいいぞ。はやくあの雑魚を片付けろ。」
 ギギギ…………ギ…………………ガシャン
 何かが落ちた音をきっかけにジキルは振り向いた。そして、腰を抜かした。その目に映る全てに驚愕した。まず一つ視界があまりにも開けていること。そして、音を鳴らしていたのはボディを引き剥がされたラドクリフⅡの核であること。さらに、開けているはずの視界に重く暗くのし掛かる暗いオーラ。ジキルは、状況が全く分からない。目の前で起きていることは理解出来る。しかし、起こるはずのないことが起きているゆえその理由がわからなかった。ジキルは、更に恐怖を植え付けられる。重く暗くのし掛かるような重圧を発していたのは一人の人間であるということである。その人間を覆う黒いオーラのせいで何者かを判断することは出来なかったがかろうじて人影だと認識できるものだった。その者の前には核が転がっている。ラドクリフⅡは、消されたのだ。動力源を残して。ジキルは、緊急用に所持していた。聖帝戒本部へ帰還する魔法書を使用し退散した。
 
 しばらくして、ジキルの率いてきた兵士は撤退をはじめ、半蔵と蓮は秘宝を取り返して帰って来た。なぜ兵士が撤退していったのかというと、ジキルの逃走を確認したクロフトが、手に終えない敵が出現したと判断し兵士を引き上げるように指示を出したのだ。そして、アルビオンはそれを確認し生存確認を行った。
 「ハルトがまだ戻ってない。」
 敵を追ったのか、やられてしまったのか定かではなかったのだが、まだ生きていることを望みとして捜索することを頼んだ。忍もエルフもすぐに承諾してくれ、大人数でハルトの捜索が始まった。しかし、その捜索中にあるものを発見する。
 「これは…」
 その言葉の先を表現することが出来ない程の光景がそこには広がっていた。シルヴァヌスを囲う山のうち一番大きな山の半分が消滅していたのだ。そして、それを発見してから少し立った後にハルトは発見された。気は失なっていたもののその体には傷一つなくきれいなままだった。そしてその体はえぐられた山の際にあった。見つけたものは急いでハルトを担いで帰り、アルビオンの元へ運んだ。
 「ハルトさんは無事です。この通り。しかし、気を失なってるようなので休息が必要かと」
 ハルトはベッドの上に寝かされ、アルビオンたちはその姿を見て少し安心した。しかし、ルナが血相を変えて近づいてきた。
 「これが無事?無傷?何を見ている。早く治療しないとハルトが死ぬ!」
 ルナは、真剣な様子であったがそのハルトの姿から考えてあまり真実だと信じることが出来なかった。
 「いいから早く誰でもいい回復魔法師を呼べ。ハルトの内臓がぐちゃぐちゃになっている。」
 そうハルトの体に外傷はひとつもなかった。しかし、内臓がひどく損傷していたのである。物理的な攻撃ではなく魔力的な攻撃でも食らったのだろう。ハルトは、気を失なっているどころか、瀕死状態だったのだ。
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