クロスフューチャー

柊彩 藍

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6章~正義の制裁者~

向ける善意と向けられる憎悪

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 「すまない」
 ミシュリは一人一人気絶させていき、体を部下に運ばせ保護した。しかし、その数を増やしていくうちにその目撃者が増え、ミシュリはあらぬ疑いを掛けられるようになった。
 「女に殺されたやつが何人もいる!その仲間に遺体を運ばせていた。奴が犯人だ。」
 ミシュリは、これまでの事件の犯人にされてしまった。その上、やってもいない殺しまで疑われミシュリの名誉はズタボロだ。しかし、ミシュリは、これも人を守る為と唇を噛みながら自分のするべき事を為した。しかし、時間がたつに連れてそれは困難を増していく。さがしだして捕まえる対象が向こうからやってくる上に攻撃してくるのだから。それが敵であるなら戦闘能力的にも考えてミシュリは、目をつぶってでも殺せるだろう。しかし、向かってくる敵意を持った人間は、ミシュリにとって守るべき人間なのだからなるべく傷つけたくはないのだ。そのうちミシュリは、囲まれてしまった。
 「守るというのは難しいものだ。いっそこのまま私が殺されてしまえば………」
 と、ミシュリが抵抗する事をやめ武器を放し、目を瞑った。
 「今だ殺せぇぇ!」
 ミシュリを囲んだ人々は沸き上がった殺意のままにその刃をミシュリに突き立てた。
 
 「お前今諦めただろ。犯人にされた自分が死ねば、人々は止まるって。何甘えてんだ!その後はどうする。暴動が一時的に止まったところであいつは殺しを止めない。犠牲が増えるだけだ。」
 ミシュリは間一髪、ハルトのテレポートで助けられた。
 「すまなかった。助けてくれてありがとう。」
 「礼は後でして貰うからな。それよりも大半の人間は保護できた。あいつと接触は?」
 「無かった。それどころか殺された人もいない。」
 二人は辺りを見渡した。そこで一つの結論に至る。
 「違う!そうじゃない!待ってたんだ!」
 二人は慌てて保護した先へ向かう。
 
 「リリィ!保護はできたか?」
 「ハルくん遅いです。それになんですか?無理やり詰め込めって」
 「ならいい。ルナ!ここら一体を木で覆って守りを固めろ出来れば根を張って地面まで埋めてくれ。」
 
 ハルトの指示でルナが地面まで保護した直後に大きな地響きがした。
 「攻撃された!アルビオン備えて!」
 しかし、一回の爆撃で不可能を感じたのかそれ以降何も起こらなかった。そして、その爆撃は悪い事ばかりではなかった。無理やり収容され、不満を募らせ、リリィ達が黒幕なのではないかという疑念を和らげたからだ。事実ルナがいなければ建物もろとも木っ端微塵になっていただろう。そのおかげで、少なくとも敵意を見せる人はいなくなった。
 
 「何これ……」
 町でさまざまなことが起こっているころ。チカ達はいつも通りに稽古に励んでいた。しかし、あちらこちらに上がる煙に驚き不安を見せていた。
 「姉ちゃん…」
 一人が不安のあまりチカにしがみついた。
 「大丈夫、お姉ちゃんが絶対守るから。」
 そう言って、頭を撫でたチカの手は震えていた。何せ国全体が荒れているのだ。何が起きているのかも分からず不安にならない訳が無い。
 ザッ……ザッ……
 「誰だ!」
 チカは、足音に気づき叫んだ。
 「良かった……」
 ハルトは、チカが無事かを確認しに来ていたのだ。
 「ハルト?その体は何だ……?」
 チカがハルトの姿を見て怯えている。両手には武器を持っていたのだ。そして、チカは慌てて町を見た。
 「ハルトがやったの?」
 「違う!そうじゃない!俺はチカを守りに来たんだ!」
 しかし、一度パニックに陥ったチカの思考は止まることが無かった。チカは後ろを向き、守るべきものを再確認して拳を強く握った。
 「大事な弟達は触れさせない。」
 ハルトは、チカの本気の目にどうしていいか分からなくなった。ミシュリもこんな気持ちだったのだろうかと思いながらチカを見つめる。
 「分かった。疑ってるなら好きなだけ攻撃しろ。俺は攻撃しない。」
 ハルトはそう言って2本の剣を地面に捨てた。
 チカは、迷い無くハルトに向かって走ってきた。その時ハルトは驚くべき行動に出た。地面に捨てた剣を慌てて拾いチカに向かって走ったのだ。
 「やはりそうだったのか……」
 
 二人の攻撃が互いに届く瞬間ハルトはチカを自分の元に引き付けた。
 ガキン……
 「えっ……」
 チカは戸惑った。ハルトは武器を取ったのにも関わらずチカに対してその刃を向けていなかったのだから。チカは、その拳をハルトの腹に突き立てたのに対しハルトはチカを庇うように抱き締めたのだ。
 「君は本当に勘がいい。よく気付いた。自分を犠牲にしてまでその女を守るなんて大した正義感だ。」
 そうハルトはチカを亡霊の攻撃から守ったのだ。そこでようやくチカは自分の勘違いに気づく。
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