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本編

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「おーい‥‥‥‥生きてるかー?」ぺちぺち
「んん~」

 気持ちよく寝ていたのに、頬を叩かれている感覚に少しだけ意識が覚醒する。
 誰だよ人が気持ちよく寝てたのに起こすやつは。
 寝る前のことを寝ぼけた頭で思い出すと、私はあの自称神様が私を起こしに来たのかという考えに辿り着いた。
 ‥‥‥よし!無視だ!

「グーグー」

 あのぶりっ子である自称神様ならば、無視をしても『無視しないで~!』と泣きそうな声で言うだけで、誰にも迷惑がからないだろう。
 私は狸寝入りをはじめて、自称神様が去るのを待つことにした。

「おいコラ、起きてるだろ!さっきまでいびきなんてかいてなかっただろ!」べチベチ!

 私の寝息( いびき )を聞いてツッコミを入れてくる声。なかなかのキレだが、まだまだ若葉には敵わないと思った。
 え、私いびきかいてなかったのか。それは失敗失敗…………てか痛い!洒落にならんほどに叩かれてる頬が痛い!!やめろ!やめ、やめろよ!やめ_______________

「いい加減やめろやゴラ!!」
「お、起きた」

 私は起き上がり、頬を叩いてくるやつから急いで距離をとる。
 絶対に赤く腫れていると思われる頬を抑えながら、叩いてきたやつの方を向くと、そこにはヤンキー座りをした男が1人いた。

「おはよ。こんな所で寝てちゃ風邪ひくぜ!」ニカッ

 とってもいい笑顔でこちらを向いている男に、私はその笑顔なら数多くの女を落としたのだろうなと思うが、私はそんな安い女ではない。
 男をジーッと見て警戒する。

「うるせぇ。余計なお世話だ!他人に迷惑かからない場所なんだからいいだろ!」

 私は男に文句を言ってから立ち上がる。
 男はニコニコしながら私を見てくるだけで、何も言い返してこない。それが不気味だったので、私は場所を移動することにした。

「ちょいちょい!お前どこいくんだよ」
「はぁ?お前には関係ないだろ?」

 せっかく移動しようと一歩踏み出したのに、男はすぐに私を呼び止めてくる。無視しても良かったのに、私は呼び止められたことに律儀に振り返り返事をしてしまう。
 でも、私が振り向き際に睨みつけると、男は少しだけビクッと反応していたので、いい気味だとは思った。

「お、お前って行くとこあるのか?」
「‥‥‥」
「ないんだな」

 私の無言を「行くところなし」と受け取った男は、ため息をつきつつ立ち上がった。
 いや、当たってるんだけどさ?こんな、あからさまにため息つかれるとなんか殴りたくなるんだけど?

「‥‥お前ってさ、金持ってる?」

 私はイライラしているのに、男は先程と違って真顔になって私を見てくる。
 何??追い剥ぎかなんか???
 私の格好は転移前と同じ格好なので、学校の制服姿だ。それに比べて男は、小説でよくある中世ヨーロッパ風の服を着ている。
 一瞬追い剥ぎかと思ったが、それならば聞くのではなく無理やり私の服を脱がせると思い返し、私は怪訝に思いながらもポケットに手を突っ込む。
 てか、異世界出身の私よ?異世界のお金なんて持ってるわけないでしょ。この男は私のどこを見て「金持ってるか?」なんて聞い_______________

「‥‥‥あった」チリン

 私が服のポケットを漁ると、そこからは1つの硬貨が現れた。
 そのお金にはライオンが吠えている横顔が彫られていて、色は金色だった。

「‥‥‥‥これでいい?」
「っ!多すぎだバカ!」

 そう言って突き返されるライオンがね
 てか、金があるかって聞かれたから持ってたお金っぽいのを出しただけなのに、なんで怒鳴られなければならないんだ。解せぬぞ。

「‥‥ならこれは?」

 少しだけ怒り気味に次に私が出したのは、ユニコーンの模様が彫られているお金で色は銀。

「‥‥‥お前ってどっかのボンボン?いや、外見でそんな気はしてたけどよ?」

 そう言って、ユニコーン金を受け取る男。
 あぁー。ユニコーンってか、馬が好きだからもう少し見ておきたかったのに!
 男は渡したお金を手で転がし、本物か確認するような動作をする。男に渡ってしまったお金に私が少しガッカリしていると、男が話しかけてきた。

「おい。お前から今貰った金は、俺ん家宿営業してるからそこに泊まるための宿金として貰う。そこまではいいな?」

 私は急に話し始めた男を真正面から見て頷く。
 なるほど。先程のは泊まるためのお金だったのか。

「よし。でだ。お前が行くとこなさそうだから、俺はこれをしているわけで、お前が拒否するなら金は返す。さ、どうするよ」

 男はそう言ってくるが、私にはそのお金の価値がいまいちわかっていない。が、今現在行くあてのない私に行く所を用意してくれているってのは、馬鹿な私でもわかる。
 先程ポケットを漁った感触でわかるのだが、私のポケットにはまだ同じような硬貨が何枚か入っている。そして、私は泊まる場所もなくここら辺の土地勘はない。
 そんな私の選択なんて、既に決まっているに決まっている。

「OK!行くよ!さ、案内してくれ!!」

 私は男に着いていくことにした。

「オ、オーケー?変な言葉使うんだな。ま、お貴族様は俺達平民が知らない言葉を勉強してるって聞くし、お前が使ってるのもそれだろ?」

 警戒を解いて男に近づくと、男は思った以上に身長が大きかった。
 あ、この世界のお金の話聞かなくちゃいけないか。今聞くのは面倒だから、案内途中で聞こう。

「あ、今更だけど、俺の名前はレクターだ。よろしくな!で、お前の名前はなんだ?
「私の名前h‥‥ん?今なんて言った?」

 今私は聞き逃しては行けないものを聞いた気がするので、今なんと言ったか男‥‥その名もレクターに聞く。

「あ?『よろしくな』か?」
「違う。その後だよ」
「ああー『で、お前の名前はなんだ?』か?」
「‥‥‥」

 私は口を開いて固まってしまった。
 どうやらこの容姿は私から見ては中性的な容姿だが、異世界人から見たら‥‥‥


























 男性よりの容姿だったらしい。
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