乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

レラン

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謁見

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「まったく!なぜまたここにお前が来たのか、まったくもって理解不能だ!」コソコソ

 私は今城に来ている。
 来ている理由は、この前の指名クエストの件だ。
 ルルンも指名クエストで同じものを貰っていて、一緒に来ているがルルンとは別行動で、後で合流するらしい。
 私が城についたら、リッターが案内役として私に着いてくれるらしく、ただいまリッターと一緒に行動している。
 ルルンはルーエが一緒だ。
 何故か聞いたら、リッターは濁したが、ルーエが教えてくれた。
「ディーオ達が来ること聞いて、自分から立候補したんだ。リッターは。ちなみに、俺も立候補した」
 そう言って、ニコッと笑ったねきた。
 正直言って、背筋に寒気が走ったよ。こいつ何企んでるんでしょうかね~?
 
「だってしょうがないではないですか。クエストなんですから。断れるはずがございません」

 私が「城から」と「指名」の所を強調して言えば、リッターは舌打ちをして不機嫌そうな顔をする。
 私は気付かないふりをして、リッターの3歩後ろをついていく。
 これはお嬢様時代からの習慣で、『女は男の3歩後ろを常にあるけ』と、礼儀作法の先生に欲しえてもらったからだ。だが、夫婦になった女性は、夫となった人の隣を歩く。
 これは、夫が妻を大事にしている証拠で、時折、妻が夫の3歩後ろを歩いているのを見る。これは亭主関白の家がそうだ。

「おい。着いたぞ顔を上げろ!」

 私が考え事をしている間に、目的地についたみたいで、リッターが大きな扉の前で苛立ちの顔をしている。
 私は慌てて身だしなみを整え、顔を上げ、愛想笑いをする。

「‥‥いくぞ」

 リッターが何やら緊張している。どうしてかは分からない。でも、なんかこの扉、見覚えがあるような‥‥‥あ!

「ちょ!リッtーー」
「ーー失礼します!(バタン!)冒険者クラージョを連れてまいりました!」

 私が気づいた時には、時すでに遅しってやつだった。
 リッターが扉を開けると、そこには様々な国の代表者が椅子に座って並んでいた。真ん中には真っ赤なカーペットがひいてあり、その先には玉座に座った王様がいた。

「‥‥‥こちらに来なさい」
「「はい」!」

 私とリッターは前に進む。
 王様の前に着いた時、リッターは騎士だからか、敬礼をしているが、私は胸に手を当てて腰をおるだけにした。
 ここでもし、お嬢様のようにスカートをつまんでお辞儀なんてしたら、私の正体がバレるだろう。ここで習慣が出なかったことを褒めてほしい。
 顔をあげないまま、王様の次の言葉を待つあいだ、私は王様に初めてあった頃のことを思い出していた。

 昔、1度だけ王様にあったことがある。
 アインハイト様と婚約した時だ。
 その時王様は、言葉は発しなかったものの、ずっとにこやかに笑っていた。
 とってもホンワカした雰囲気だったが、今は威厳ある雰囲気だ。

「‥‥‥‥」

 王様が急に黙ってしまい、私はちょっと心配になった。
 でも、王様はそんな私の心配をよそに、何やら決心したように顔を上げ立ち上がった。

「皆の者!アンジェロ侯爵以外は外に出よ!」

 急にそんなことを言い出した。
 案の定、周りの宰相達は、騒ぎ出した。

「何故冒険者などという野蛮人と王を二人っきりにしなければならないのですか!」

 おい。話聞いてたか?アンジェロ侯爵。つまりは私のお父様も残れって言ってたよ?お耳は大丈夫かな~?

「そうです!と一緒はいけません!せめてでも騎士を1人残させてください!」

 おい!さっきも思ったが、ってなんだ!って!!こちとら数日前までやってたんだぞ!しかも国の!
 私は内心で、ずっと周りの奴らの言葉を反論しながら、王様の言葉を待った。

「‥‥黙らんか!王の命令だ!騎士を1人残せというのならば、ヤレガ!」
「は!」
「お前が残れば他の者達も文句は言うまい。この場に残れ」
「は!」

 どこから出てきたのか、王様の横に白がベースのマントに、胸元と左肩にペガサスの模様がある男が出てきた。
 さっきの王様の言葉から分かる通り、あの男の人は『騎士団長』なのだろう。
 ペガサス模様の騎士に心当たりがある。
 確かゲーム内でのだ。
 ヤレガが残ることで渋々了解した人達が、次々に部屋の外へと出ていく。

「‥‥王にけっして変なことするなよ」ボソッ

 リッターが出ていく前に、私にそう忠告して出ていった。
 私は、お父様がいる方向からただならぬ殺気を感じられたが、リッターはそれに気づかずに出ていく。
 ‥‥本当にリッターって騎士なの?疑うわ~。

「‥‥クラージョよ。顔を上げよ」
「はい」

 私はできるだけゆっくり顔を上げる。すると、そこには‥‥。

「今回のことは誠に申し訳なかった!」
「プロテッツィオーネ王!?」

 土下座で王座の前にいる王様がいた。
 慌ててしまった私は、今は『クラージョ』なのを忘れて、『ディーオ』としてお父様のところに走ってしまった。

「お、お父様!!何故私は王に土下座をされているのですか!?これでは私が悪者です!すぐに辞めるように言ってください!!お父様なら可能でしょう!?」

 何故お父様かと言うと、昔お母様から聞いた話だが、お父様は王様と幼なじみで、なんでも言い合える仲なのだとか。
 今でも昔の名残として、お父様の前だけ王様は、昔の悪ガキのようなことをすることがあるそうだ。王様に文句を言えるのも、この国では王家かお父様だけらしい。

 そんなことを思い出した私は、この場で頼れるのはお父様だけど判断して、すがりついた。

「はぁー。おいケーニヒ!あまり私の可愛い娘を困らせるな!‥‥切るぞ?」

 お父様は、私を守るように優しく抱きしめてくれた。
 お父様から本気のトーンで「切るぞ?」と聞いた私は、慌てて先程残されたヤレガの方を向いた。
 でも、私の心配はいらなかったみたいだ。
 ヤレガは、何もせずに王様の横でピシッと立っている。
 あれ?もしかしてこれって、日常的な感じなのかな?
 そんなことを思っていると、王様がゆっくりと笑いながら立ち上がった。

「ワハハハハ!すまんすまん!だが、謝罪の言葉は本心からの気持ちだ。冒険者クラージョ‥‥いや、アンジェロ侯爵家の長女。ディーオ嬢」

 私はそこでやっと、今の姿が冒険者クラージョなのを思い出す。
 あれ?私ってルルンに魔法をかけてもらっていたはずだ。それが、聞いてない?ってことはさっきこの場にいた、宰相達に正体がバレた!?

「あぁ、安心してよい。ディーオ嬢の正体はここにいるものにしか分かっておらん」
「え?」

 私が顔を青くしているのに気づいた王様が、説明をしてくれた。

 ここに残っているお父様と王様。それにヤレガは、『隠蔽魔法遮断』のエンチャントがしてある指輪を付けているらしい。
 これは、王様は常備しており、お父様とヤレガは、今日のために新しく作ったのだとか。

 ここまで聞いて私は思った。



 ‥‥‥王様‥‥これは計画的犯行ですか。




 私が王様に文句をなどを言えるはずもなく、この言葉は喉まできていたが、頑張って飲み込んだ。
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